ハイリスク糖尿病患者における糖尿病薬、血糖管理と大血管障害発症に関するComparative Effectiveness Research 

文献情報

文献番号
201315033A
報告書区分
総括
研究課題名
ハイリスク糖尿病患者における糖尿病薬、血糖管理と大血管障害発症に関するComparative Effectiveness Research 
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
  • 井上 卓(琉球大学医学部附属病院)
  • 松島 雅人(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター)
  • 大屋 祐輔(琉球大学 医学研究科)
  • 川満 克紀(医療法人沖縄徳州会南部徳州会病院 循環器科)
  • 新崎 修(豊見城中央病院 循環器内科)
  • 仲田 清剛(社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 循環器内科)
  • 佐田 政隆(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 東 幸仁(広島大学 原爆放射線医科学研究所ゲノム障害病理研究センター)
  • 島田 健永(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 石橋 豊(島根大学 医学部)
  • 植田 育子(慶應義塾大学 医学部)
  • 安藤 真一(九州大学 睡眠時無呼吸センター)
  • 今西 政仁(大阪市立総合医療センター 腎センター)
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部)
  • 百村 伸一(自治医科大学 さいたま医療センター)
  • 安 隆則(獨協医科大学 日光医療センター)
  • 田口 晴之(大阪掖済会病院 循環器内科)
  • 門上 俊明(福岡県済生会二日市病院 循環器内科)
  • 森本 剛(兵庫医科大学 内科学総合診療科)
  • 島袋 充生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は糖尿病患者における大血管障害予防に有効な最善の危険因子管理を見いだすことである。心血管ハイリスク糖尿病患者に焦点をあて、大規模コホート研究で、プロペンシティスコアマッチングなどにより探索的にさまざまな治療法(各種糖尿病薬使用、非使用等や達成された血糖、血圧、脂質)の効果の比較を行う。質の高い観察研究からエビデンスを創出し、ハイリスク糖尿病患者の予後の改善を図る。
研究方法
20歳以上の冠動脈疾患合併糖尿病患者。冠動脈疾患の定義は1)冠動脈にAHA分類75%以上の狭窄を一枝以上に有する、2) 急性冠症候群の既往、3) 過去のPCI, CABGの既往)である。無病気間3年未満の悪性新生物に罹患している患者は対象としない。
研究デザインは多施設共同後ろ向き/前向きコホート研究である。主要評価項目は死亡、脳卒中、心筋梗塞である。
HbA1c基礎値および達成値と予後の関連解析、血圧、脂質の目標値達成、非達成を時間依存性変数とした解析、メトフォルミン、ピオグリダゾンそれそれの使用群、非使用群での心血管アウトカムの解析、DPP4阻害薬の使用開始、非使用を時間依存性変数とした解析などを実施する。カプランマイヤー法、ログランク検定によるイベントフリー期間の推定と比較、多変量解析としはCox比例ハザードモデルを用いてハザード比およびその95%信頼区間を算出する。
結果と考察
4248名の患者を中央値で1118日観察し、死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中が631例生じた(15%)。
登録時HbA1c7%以上の群と未満の群における死亡、脳卒中、心筋梗塞の発生に関しては群間に差は認められなかった。HbA1cを時間依存性変数とした解析でも経過中のHbA1c7%以上、以下で予後の差は無かった。
登録時140mmHg以上の群では登録時130mmHg未満の群と比べ、死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクが21%高く130mmHg未満の群と130-140mmHgの群の間には差を認めなかった。血圧を時間依存性変数とした解析でも、経過中130mmHg以上未満予後の差は無かった。
登録時の血清LDLコレステロール値100mg/dl未満と以上の群における死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率は両群間で差は認められなかった。LDLコレステロール値を時間依存性変数とした解析でも予後の差は無かった。
登録時のスタチンの使用、非使用群でのアウトカムを比較すると単変量解析ではハザード比0.53、補正した多変量解析ではハザード比0.72と28%のリスク減少が認められた。登録時のメトフォルミンの使用、非使用群でのアウトカムを比較すると単変量解析ではハザード比0.76と有意なリスクの減少が認められたが、補正後リスク減少はハザード比0.86となり統計学的には有意ではなかった。登録時のピオグリタゾンの使用、非使用群でのアウトカムを比較すると単変量解析ではハザード比0.59、多変量解析による補正後もハザード比0.52と統計学的に有意なリスクの減少が認められた。DPP4阻害薬開始による統計学的に有意なイベント減少は認められなかった。
Hb A1cの目標値について日本糖尿病学会ガイドラインでは7%が提唱されているが、細小血管障害の予防という観点やUKPDS研究のように新たに糖尿病と診断された患者では適切である可能性が高いが、本研究で対象としたすでに動脈硬化性疾患を有し、罹病期間も10年前後の患者においてはHbA1cを7%未満とする妥当性は得られなかった。
最近発表されたガイドラインでは日本高血圧学会のJSH2014をのぞき、より緩やかな基準、すなわち140mmHgとなっている。日本は脳卒中リスクを重視した結果であるが、本研究の結果は積極的降圧を支持するものではない。本研究は観察研究であり、因果の逆転を完全には除去できておらず、積極的降圧と標準的降圧を比較するランダム化比較試験の結果が待たれる。
LDLのレベルと予後は関連しないと結論づけられる。近年の報告ではLDLのレベルよりもむしろスタチン使用の有無が問われており、本研究の結果もそれを裏付けると言える。
結論
日本人ハイリスク糖尿病患者では3.5年間で15%の患者に死亡、心筋梗塞、脳卒中が生じる。ハイリスクであり、早急な介入が望まれる。登録時、観察期間中のHbA1c7%未満、以上と予後は関連しない。登録時の収縮期血圧は、140mmHg以上はイベント発症リスクの増加と関連するが、130mmHg未満でもリスクの減少とは関連しない。登録時、観察期間中LDLの低値はかならずしもアウトカムの改善と関連しないがスタチンの使用,非使用は関連する。結局,積極的な血糖、血圧、脂質の管理は予後に影響しない。ピオグリタゾンやメトフォルミンなどの使用,非使用は予後と関連する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
7,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 354,593円
人件費・謝金 4,806,001円
旅費 589,760円
その他 249,664円
間接経費 1,800,000円
合計 7,800,018円

備考

備考
18円の利息がついたため

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-