成人先天性心疾患の診療体系の確立に関する研究 

文献情報

文献番号
201315030A
報告書区分
総括
研究課題名
成人先天性心疾患の診療体系の確立に関する研究 
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター・小児心臓外科)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター・心臓血管内科)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病研究センター・分子生物学部)
  • 中西 宣文(国立循環器病研究センター・肺高血圧先端医療学研究部)
  • 大内 秀雄(国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 池田 智明(三重大学医学部・産婦人科)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学・循環器小児科)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院・心血管センター・循環器内科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター・器官病態系内科・循環器科)
  • 八尾 厚史(東京大学医学部・保健健康推進本部)
  • 赤木 禎治(岡山大学附属病院・循環器疾患治療部)
  • 市田 蕗子(富山大学医学部付属病院・小児循環器内科)
  • 松井 三枝(富山大学大学院医学薬学研究部(医学) ・心理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本には約40万人の先天性心疾患患者患者が存在し、その数は既に小児患者数を上回っている。これらの患者は、年齢面から小児科施設で受け入れが困難な一方、複雑な血行動態から内科施設でも受け入れが敬遠される傾向にある。また疾患特有の続発症(心不全、不整脈)や生活習慣病(肥満、高血圧)、さらに女性では妊娠出産の問題が加わるため、専門チームによる診療体制が必要である。本研究は全国の多施設共同研究により、成人先天性心疾患患者が安心して診療を受けることのできる体制を1日も早く確立し、その生命予後と生活の質の向上させることを目的とする。
研究方法
平成25年度は、循環器内科からみた集約施設の設立や専門医制度の確立などに主眼を置くとともに、アイゼンメンガー症候群、心疾患合併妊娠出産、フォンタン術後患者など実態調査、成人先天性心疾患患者のQOLの実態調査、研修教育トレーニングシステムの確立、患者の精神心理的問題の調査研究などを押し進めてきた。また地方の患者の遠隔診断を可能にすることや、手術やカテ-テル検査結果などをどの施設からもアクセスできるよう準備中である。
結果と考察
1)「成人先天性心疾患に関する遠隔医療支援システムの構築」(分担研究者:丹羽公一郎)
ACHD分野は遠方からの紹介が多く、数少ない専門施設、専門医師との情報共有と診断、治療方針の決定を行うために、今後、遠隔医療支援システムを有効に用いる必要である。
2)「循環器内科医師による成人先天性心疾患診療の確立へ向けた研究」(分担研究者:八尾厚史)
本邦の成人先天性心疾患診療への十分な循環器内科医師参入を促すため、全国主要施設循環器内科によるネットワークの構築を行い、診療の実態を調査するとともに臨床研究の立ち上げた。
3)「成人先天性心疾患セミナーによる教育体制の実施」(分担研究者:赤木禎治)
若手医師や看護師に対する教育体制の確立を目標とした取り組みを行った。
4)「教育プログラム、研修の具体的なカリキュラムの策定」(分担研究者:市田蕗子)
学会の専門医修錬目標や循環器専門医研修カリキュラムの内容を検討し、欧米ACC/AHA/AAPで推挙されている内容と比較検討した。また日循学術委員会に成人先天性心疾患部会を平成25年度より立ち上げ、学会に大きく働きかけを行うことができた。
5)「成人先天性心疾患患者の社会保障制度利用と医療費負担に関する実態調査」(分担研究者:賀藤均)
将来の社会制度設計に資するため、20歳以上の成人先天性心疾患患者に、社会保障制度利用と医療費負担に関する質問紙調査を実施した。
6)「先天性心臓病を持つ女性の妊娠・出産に関する全国調査」(分担研究者:池田智明)
心臓病を持つ女性の妊娠・出産・流産に関する現状調査を行い、成人先天性心疾患女性の妊娠・出産・流産に関する全国調査の準備を行った。平成26年4月より登録が開始される。
7)「成人先天性心疾患患者の健康関連Quality of lifeに関する研究」(分担研究者:大内秀雄)
ACHD患者の健康関連Quality of life(HRQOL)を調査し、臨床的、社会的指標との関連を検討し、ACHD患者のHRQOLの規定因子を明らかにした。
8)「診断別による成人先天性心疾患患者の心理・行動の特徴と関連要因の検討」(分担:松井三枝)
先天性心疾患の子どもは、外在化問題(攻撃性や反社会的行動など)や内在化問題(不安・抑うつや引きこもりなど)をより多く示し、また知的・認知機能についてもその機能にやや遅れや問題があることが判明した。
9)「小児・成人で種々の全身症状を示す循環器疾患の管理の問題と対応」(分担研究:森崎隆幸)
心血管病変を示す遺伝性結合織疾患について実施している結合織病外来の経験を積み重ね、心血管病変をきたす成人先天性疾患の診療体制の課題を検討した。
結論
本研究の第一の意義は、複数の科により構成される成人先天性心疾患の診療体制が確立することにより、現在受け入れが困難な傾向にある成人先天性心疾患者が、突然の不整脈や心不全の増悪、さらに妊娠出産により急変した際、地域の拠点施設で集中的に対応することを可能にすることである。もう一つの意義は、成人先天性心疾患を専門とする医師を養成するために教育システムの確立を目指すことである。さらには、社会的に自立することが困難な患者の就労や社会活動のバックアップを行う予定である。このように、本研究は単なる患者実態調査や診療体制の確立にとどまらず、社会的支援体制が整っていない成人先天性心疾患患者の生活の質の向上を目指すことも視野に入れている。今後は成人先天性心疾患に対する保険医療制度の見直し、社会保障制度の改善に向けた調査研究も行う。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
分担研究報告書
分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
7,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,790,196円
人件費・謝金 141,205円
旅費 1,609,840円
その他 1,462,695円
間接経費 1,800,000円
合計 7,803,936円

備考

備考
自己資金3,936円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-