文献情報
文献番号
201315019A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこ対策の評価及び推進に関する研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
望月 友美子(国立がん研究センター がん対策情報センターたばこ政策研究部)
研究分担者(所属機関)
- 中村 正和(大阪がん循環器病予防センター予防推進部)
- 細野 助博(中央大学総合政策学部)
- 尾崎 米厚(鳥取大学医学部・環境予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、今後のたばこ対策の推進のため、政策評価の方法を開発し根拠に基づいたたばこ政策の実現のための推進基盤の形成を目的とした。
研究方法
WHOたばこ規制枠組条約(FCTC)においても第20条の調査・研究は、たばこの流行に関するデータ収集のみならず、たばこ規制を推進する政策や推進体制も視野に入れたモニタリングを求めていることから、本研究班では分担研究者により、特に、喫煙と受動喫煙(Exposure)、自治体の対策(Policy)、生産者(Industry)を対象にその動向を客観的に把握する方法を検討した。
結果と考察
日本のように国レベルでのポリシーやビジョンが弱い場合でも、市民団体や学会などによるグラスルーツの取り組みにより、世論形成と地方レベルでの政策実現、さらに政策監視が可能になることから、全国レベルの禁煙推進団体の活動状況を把握した。実際、最近の加速的なローカルイニシアチブの活躍は目を見張るものがあるが、横断的な運動体として強化していくことで、地方行政の信頼しうるパートナーとして期待できる。双方に資するため、国と地方レベルで収集したたばこ対策関連データを提供することにより、地域間の相互比較と診断を可能にし、それぞれのアドボカシー材料とすることができる。
自己点検票方式による自治体のたばこ規制・対策の実態把握については、2つのパイロット調査を通して実用性の確認と調査方法上の問題点を検討し、自己点検票を改訂した。今後、全国調査で「全国自治体におけるたばこ規制・対策の市町村・都道府県マップ」を作成し、実態把握に基づいたたばこ規制・対策の効果的な推進方策を検討し、健康日本 21次期計画の推進に役立てることができる。
たばこ対策推進の阻害要因であった、たばこ耕作者の現状と転作への進捗状況を把握することで、将来的なたばこ政策のビジョンとブループリントの実現可能性を測る上での情報を得た。
また、推進要因であるべき、科学研究の動向とたばこ産業による研究への関与についても分析できるような情報収集とともに、科研費成果物としてのたばこ関連研究課題の把握のためのデータベースから、総研究費と研究領域の動向を分析できるシステムを構築した。同様に、たばこ産業の研究助成の政策への影響について分析できるデータベースを作成した。
自己点検票方式による自治体のたばこ規制・対策の実態把握については、2つのパイロット調査を通して実用性の確認と調査方法上の問題点を検討し、自己点検票を改訂した。今後、全国調査で「全国自治体におけるたばこ規制・対策の市町村・都道府県マップ」を作成し、実態把握に基づいたたばこ規制・対策の効果的な推進方策を検討し、健康日本 21次期計画の推進に役立てることができる。
たばこ対策推進の阻害要因であった、たばこ耕作者の現状と転作への進捗状況を把握することで、将来的なたばこ政策のビジョンとブループリントの実現可能性を測る上での情報を得た。
また、推進要因であるべき、科学研究の動向とたばこ産業による研究への関与についても分析できるような情報収集とともに、科研費成果物としてのたばこ関連研究課題の把握のためのデータベースから、総研究費と研究領域の動向を分析できるシステムを構築した。同様に、たばこ産業の研究助成の政策への影響について分析できるデータベースを作成した。
結論
本研究の位置づけは、WHOが推進するたばこ規制・対策に関する MPOWER政策パッケージにおける Monitor(監視)にあたり、P(受動喫煙防止)、O(禁煙支援の提供)、W(健康警告)、E(広告禁止法の施行)、R(たばこ価格・税の上昇)等に代表される効果のある政策課題を国や地方において推進する際の重要な基盤整備につながる。成人における喫煙と受動喫煙の実態把握、及び諸調査結果を集積して再解析することにより、たばこ流行の諸課題を把握し、たばこ政策の評価を行うことができる。政策の実施主体である国や自治体の進捗状況を評価し、推進方策の検討を行うことができる。さらに、政策の事前・事後評価の手法を開発し、諸規制に適用することで、政策選択に資する材料を提供できる。喫煙率やタバココントロールスケールなど、国際比較が可能な指標を用いることで、国際的な文脈における我が国のたばこ対策の進捗度を明らかにできる。また、地域における禁煙推進団体の連携体制に寄与することで、アドボカシーパワーの増強に役立てることができる。さらに、科学研究とたばこ産業の介入という要因が、政策形成にいかに影響を及ぼすか、についても分析を行い、促進要因を推進し、阻害要因を減弱させるための、戦略形成に役立てることができる。
なお、たばこ規制枠組条約の政府間交渉などの政策形成に、欧州連合(EU)の果たした役割は極めて大きいが、その内実は殆ど知られていない。世界で最もたばこ規制の進んだ地域としての EUが多国間交渉の立役者となった経緯と方法論は、今後の我が国の政策形成に影響を与える陽性要因を探る上で有用と考え、国際関係大学院ミリアム・ファイド教授の論文を翻訳した。
今後は、いわば複雑な連立方程式を解くようなたばこ政策に対して、多角的な監視評価を加え、特に、政策形成過程における、揚力要因の可視化と阻害要因の分析が必要である。たばこ産業は今や、社会のあらゆる層に浸透し、これまでよりもマーケティング力を強めていることから、抑制側はさらにその上をいく政策と戦略を持たなければ、タバココントロールの戦争には勝つことができない。周回遅れの対策の実現ではなく、先制政策として、現在可能な限りの最高水準の政策を実現する、あるいは新たな政策を生み出さない限り、日本のたばこ政策の実現状況は世界でも劣るものとなるだろう。
なお、たばこ規制枠組条約の政府間交渉などの政策形成に、欧州連合(EU)の果たした役割は極めて大きいが、その内実は殆ど知られていない。世界で最もたばこ規制の進んだ地域としての EUが多国間交渉の立役者となった経緯と方法論は、今後の我が国の政策形成に影響を与える陽性要因を探る上で有用と考え、国際関係大学院ミリアム・ファイド教授の論文を翻訳した。
今後は、いわば複雑な連立方程式を解くようなたばこ政策に対して、多角的な監視評価を加え、特に、政策形成過程における、揚力要因の可視化と阻害要因の分析が必要である。たばこ産業は今や、社会のあらゆる層に浸透し、これまでよりもマーケティング力を強めていることから、抑制側はさらにその上をいく政策と戦略を持たなければ、タバココントロールの戦争には勝つことができない。周回遅れの対策の実現ではなく、先制政策として、現在可能な限りの最高水準の政策を実現する、あるいは新たな政策を生み出さない限り、日本のたばこ政策の実現状況は世界でも劣るものとなるだろう。
公開日・更新日
公開日
2016-05-31
更新日
-