文献情報
文献番号
201315016A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性期ハイリスク者、脳卒中および心疾患患者に適切な早期受診を促すための地域啓発研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室)
- 平出 敦(近畿大学 医学部付属病院救急医学講座)
- 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
- 宮松 直美(滋賀医科大学 医学部臨床看護学講座)
- 石見 拓(京都大学 環境安全保健機構付属健康科学センター)
- 朴 孝憲(宗教法人在日南プレステビリアンミッション淀川キリスト教病院)
- 岸本 一郎(国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
- 武呂 誠司(日本赤十字社大阪赤十字病院糖尿病・内分泌内科)
- 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター 予防健診部)
- 渡邉 至(国立循環器病研究センター 予防健診部)
- 西村 邦宏(国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
- 安田 聡(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 宍戸 稔聡(国立循環器病研究センター 研究推進支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,057,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
循環器疾患の克服には市民自らの積極的な行動が不可欠である。市民は正しい知識に基づいて生活習慣の改善や早期受診を行う潜在能力を有しているが、知識の不足や実行に至るきっかけがない。本研究の目的は①糖尿病の早期受診と治療継続、②脳卒中の早期受診、③院外心停止に対する一次救命処置に対する市民の潜在能力を引き出す啓発効果の検討を行なうことである。
研究方法
1. 糖尿病患者の受診率およびアドヒアランスの向上についての検証
病診連携による治療継続についての調査をおこなうため、豊能2次医療圏の約400カ所の調剤薬局に依頼して糖尿病治療薬の処方箋を持参した方に対して行ったアンケート結果を詳細に分析した。
また、健診や保健指導で糖尿病での受診率を向上させるため、企業全体に対して啓発キャンペーンを実施し、その効果評価を行うために介入研究を企業の健康保険組合と協力して実施した。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
脳卒中の多角的啓発を自治体(栃木県庁)および(社)日本脳卒中協会との共同で実施することにより、一般市民の脳卒中に関する知識がどの程度向上するか検証することを目的とした介入研究を企画した。介入地域(栃木県下8市)および対照地域(群馬県高崎市)からRandom Digit Dialing(RDD)で無作為に抽出され、調査への同意が得られた40~74歳の男女計3080名に対して、性・年齢、脳卒中既往、脳卒中症状の認識(ダミー5項目を含む10項目)、脳卒中を疑った時の対処行動等に関する多肢選択式の電話調査が実施された。
3.院外心停止の一次救命処置に関する啓発を進める手法の検討
院外心停止に対する一次救命処置の地域啓発を、京都府舞鶴市(人口9万人)でおこなった。さらに、国民に見えやすい形で示すために感性やイメージに訴える手法にチャレンジした。 “集う蘇生の心”のホームページで、蘇生された方々のインタビューの一部を動画で公開し、ホームページへのアクセス解析を通じて、どのようなアプローチが有効であるかを検証した。
病診連携による治療継続についての調査をおこなうため、豊能2次医療圏の約400カ所の調剤薬局に依頼して糖尿病治療薬の処方箋を持参した方に対して行ったアンケート結果を詳細に分析した。
また、健診や保健指導で糖尿病での受診率を向上させるため、企業全体に対して啓発キャンペーンを実施し、その効果評価を行うために介入研究を企業の健康保険組合と協力して実施した。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
脳卒中の多角的啓発を自治体(栃木県庁)および(社)日本脳卒中協会との共同で実施することにより、一般市民の脳卒中に関する知識がどの程度向上するか検証することを目的とした介入研究を企画した。介入地域(栃木県下8市)および対照地域(群馬県高崎市)からRandom Digit Dialing(RDD)で無作為に抽出され、調査への同意が得られた40~74歳の男女計3080名に対して、性・年齢、脳卒中既往、脳卒中症状の認識(ダミー5項目を含む10項目)、脳卒中を疑った時の対処行動等に関する多肢選択式の電話調査が実施された。
3.院外心停止の一次救命処置に関する啓発を進める手法の検討
院外心停止に対する一次救命処置の地域啓発を、京都府舞鶴市(人口9万人)でおこなった。さらに、国民に見えやすい形で示すために感性やイメージに訴える手法にチャレンジした。 “集う蘇生の心”のホームページで、蘇生された方々のインタビューの一部を動画で公開し、ホームページへのアクセス解析を通じて、どのようなアプローチが有効であるかを検証した。
結果と考察
1.糖尿病患者の受診率およびアドヒアランスの向上についての検証
調査に同意が得られた882人のうち有効回答は856枚、年齢は34~97歳(平均67.7歳)、男性58%、糖尿病治療期間(中央値)は8年、平均HbA1c (NGSP値または変換値)は7.1 %であった。手帳所持率は30%に増加していた(前回は16%)。さらに、「糖尿病オープン教室」で動脈硬化症アンケートを実施した50名の患者のうち、34名が循環器内科を受診し、6名が経皮的冠動脈ステント留置術、1名が冠動脈バイパス術を受けた。糖尿病知識の啓発により合併症が進行するまでに治療介入可能であることが確認された。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
介入地域での各啓発媒体の曝露状況は、「TVやラジオ」49.0%、「役場や薬局での映像やアニメ」9.7%、「新聞」52.1%、「チラシやパンフレット」42.3%、「市町広報誌」47.7%、スポーツイベントでのキャンペーン」7.6%、「ポスター」44.0%、「中学校での授業(マンガやアニメ)」4.2%、「講演会」4.9%であった。脳卒中発作時5症状それぞれの正答割合および5症状全正答割合は、介入前は両地域で差がなかったが、介入後は啓発地域では対照地域に比して有意に高くなっていた(57.1%vs.53.5%)。性・年齢、近親者や自身の脳卒中既往歴を調整した5症状全正答オッズ比(95%信頼区間)は1.16(1.01-1.34)であり、介入により約16%(介入地域[栃木県8市町]の調査対象年齢人口から計算すると約4万5千人、栃木県全域では約14万7千人に該当)の知識向上が得られたと推測された。
3.院外心停止の一次救命処置に関する啓発を進める手法の検討
研究計画における啓発目標は全人口の16%である14,000人への普及であり、その約半数に学校等での心肺蘇生講習会を提供し、更に、e-learningを作成し、行政の協力によってリーフレット等による周知も大規模に繰り返し行う事ができた。2014年1月に、啓発内容を評価する調査を実施した。
AEDシンポジウムでの一般公開講座やポスティング、新聞報道は、ネット内での働きかけに比較してアクセスの効果が少ないという意外な結果が得られた。アクセスはピークを形成し、そのピークは、主として、新しいインタビューが掲載されたのちに、メーリングリストやフェイスブックで宣伝した際に生じていた。
調査に同意が得られた882人のうち有効回答は856枚、年齢は34~97歳(平均67.7歳)、男性58%、糖尿病治療期間(中央値)は8年、平均HbA1c (NGSP値または変換値)は7.1 %であった。手帳所持率は30%に増加していた(前回は16%)。さらに、「糖尿病オープン教室」で動脈硬化症アンケートを実施した50名の患者のうち、34名が循環器内科を受診し、6名が経皮的冠動脈ステント留置術、1名が冠動脈バイパス術を受けた。糖尿病知識の啓発により合併症が進行するまでに治療介入可能であることが確認された。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
介入地域での各啓発媒体の曝露状況は、「TVやラジオ」49.0%、「役場や薬局での映像やアニメ」9.7%、「新聞」52.1%、「チラシやパンフレット」42.3%、「市町広報誌」47.7%、スポーツイベントでのキャンペーン」7.6%、「ポスター」44.0%、「中学校での授業(マンガやアニメ)」4.2%、「講演会」4.9%であった。脳卒中発作時5症状それぞれの正答割合および5症状全正答割合は、介入前は両地域で差がなかったが、介入後は啓発地域では対照地域に比して有意に高くなっていた(57.1%vs.53.5%)。性・年齢、近親者や自身の脳卒中既往歴を調整した5症状全正答オッズ比(95%信頼区間)は1.16(1.01-1.34)であり、介入により約16%(介入地域[栃木県8市町]の調査対象年齢人口から計算すると約4万5千人、栃木県全域では約14万7千人に該当)の知識向上が得られたと推測された。
3.院外心停止の一次救命処置に関する啓発を進める手法の検討
研究計画における啓発目標は全人口の16%である14,000人への普及であり、その約半数に学校等での心肺蘇生講習会を提供し、更に、e-learningを作成し、行政の協力によってリーフレット等による周知も大規模に繰り返し行う事ができた。2014年1月に、啓発内容を評価する調査を実施した。
AEDシンポジウムでの一般公開講座やポスティング、新聞報道は、ネット内での働きかけに比較してアクセスの効果が少ないという意外な結果が得られた。アクセスはピークを形成し、そのピークは、主として、新しいインタビューが掲載されたのちに、メーリングリストやフェイスブックで宣伝した際に生じていた。
結論
本研究では啓発内容に応じて、受診患者、医療者、市民、自治体、企業、Webなどを対象に様々な啓発手段の効果を検証し、今後の応用発展に重要なツールやエビデンスを得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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