脳卒中や心筋梗塞に関する医療連携構築に関する研究

文献情報

文献番号
201315004A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中や心筋梗塞に関する医療連携構築に関する研究
課題番号
H25-心筋-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 織田 順(東京医科大学)
  • 行岡 哲男(東京医科大学)
  • 高橋 眞冬(青梅市立総合病院)
  • 小池 城司(福岡市医師会成人病センター)
  • 嶋津 岳士(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 石見 拓(京都大学 環境安全保健機構附属健康科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 研究の目的
地域の救急医療システムを有効に運用するために救急現場から急性期、回復期、維持期の医療機関、介護施設、そして在宅医療への医療連携パスの推進が必要である。しかし、実際は様々なパス脱落要因が存在し、一律的な運用は困難である。そこで、現状の救急医療における医療連携の問題点を把握し、新たな体制を提言する。
(2) 必要性
連携パス等を活用した医療連携が施行されているが、成果は十分ではない。その要因を検討することで、連携パスの円滑な運用に資するために本研究を行う。
(3) 明らかにする点
連携パス上のバリアンス分析や連携の阻害要因を抽出する。病院前から急性期病院への医療連携に先進的な地域の調査、心筋梗塞や脳卒中等を例にモデル地域のパス運用の実態調査を行い、重症例、多疾患例など連携から脱落する可能性のある事例解析からパス運用の有効的な対策を考察する。また、救急現場から維持期に至るまでの円滑なパス運用、それに関わるICT活用等の視点から効果的・効率的な連携を構築し、その効果を検証する。
(4) 特色・独創的な点
 救急疾患の医療連携パスの脱落症例、急性期医療機関に長く入院せざるを得ない症例に対する要因と課題を検討する。また、急性期医療機関だけではなく、維持期・回復期の医療機関までも含めた情報共有体制を構築を目的とした研究は独創的であると考えている。
研究方法
(1) 研究実施体制
研究代表者は研究分担者と協議し研究計画、スケジュールを作成し、研究の進行管理を行う。全体会議並びに以下の分科会を設置して研究を進める。
(2) 研究計画・方法
1.救命救急センター・救急医療連携評価分科会:織田、行岡、横田
 先進的なシステムを導入している地域での実態調査、代表的な救命救急センターでの課題を抽出し検討する。
2.心筋梗塞連携分析分科会:小池、福岡市医師会、織田
 モデル的な地区である福岡市での急性心筋梗塞の医療連携の現状と課題の抽出、パスから脱落した症例の検討や導入の阻害要因について検討する。
3.脳卒中連携分析分科会:高橋、西多摩地区医師会、織田
 以前から脳卒中地域連携パスを導入してきた東京都西多摩地区の現状を調査、検討し、パス脱落例の要因をアンケートで調査する。
4.プレホスピタル連携分科会:石見、嶋津、行岡
 病院前における、現病歴・神経学的観察評価・心電図等の傷病者情報の有益な共有のあり方について、病院前の救急活動記録と病院到着後情報を突合することで病院前後での情報連携の効果を科学的に検討する。
5.医療連携ICT分科会:嶋津、石見、織田
 高解像度ビデオ会議システムの導入が病院前、急性期医療機関、さらに急性期高次医療機関との連携に際しての意義と有用性、今後の方向性について検討する。
結果と考察
地域の救急医療システムを有効に運用するために救急現場から救急医療機関、回復期、維持期の医療機関、介護施設、そして在宅医療への医療連携パスの推進が必要である。しかし、救急疾患には様々な医療連携パス脱落要因(バリアンス)が存在し、一律的な運用は困難である。救急患者のバリアンスは出口問題と密接に関連し、長期入院の原因ともなっている。バリアンスの減少にはバイタルサインの安定化や、感染・栄養・リハビリ等のほか、様々な背景の家族対応の解決が課題であることが明らかとなった。また、急性期医療機関から在宅へ向けて家族への負担程度を具体的に提示することも転院調整に向けて大きな意味があることも今回の研究から結論することができた。
 ICTに関しては、埼玉県北部加須市や大阪府の調査から、医療連携に大きな貢献が期待されるが、病院前情報と病院後情報の連結によって、地域でのリアルタイムの救急医療の現状が把握可能となり、全国的に統一したシステムの導入が期待される。
結論
 医療連携パスから脱落する長期入院は、いわゆる出口問題の誘因となるが、患者自体の病態だけではなく、家族対応の解決が課題であることが明らかとなった。救急医療機関からの転院には、家族の負担程度を提示することに意義があることが判明した。
 救急現場から救急医療機関への搬送、その後の回復期、維持期の医療機関、介護施設、そして在宅へと円滑に連携することは地域の救急医療システムを運用するためは重要で、その際ICTは有力なツールである。埼玉県北部に位置する加須市を中心に9市町で組織している「とねっと」は圏内の約100医療機関を一つの病院として考え、救急現場からの情報はもちろん、その後の医療連携や在宅医療、普段の健康管理にまで応用できる現在最も進化した有用なシステムと考えられた。このような体制は地域だけではなく、本来は全国で共通した体制であることが重要であり、医療資源の有効活用にも大きく寄与するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-09-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,968,349円
人件費・謝金 1,552,468円
旅費 756,080円
その他 1,425,514円
間接経費 2,307,000円
合計 10,009,411円

備考

備考
利息75円、自己負担9,336円

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-