文献情報
文献番号
201314043A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性造血器腫瘍に対する造血幹細胞移植の治療成績向上を目指した未承認・適応外薬のエビデンス確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 修一(国家公務員共済組合 虎の門病院 血液内科)
- 片山 義雄(神戸大学医学部附属病院 血液内科)
- 高見 昭良(金沢大学附属病院 輸血部)
- 神田 善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター 血液科)
- 鈴木 律朗(名古屋大学医学部 造血細胞移植情報管理学・生物統計学)
- 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院 医学研究科 血液内科学)
- 中前 博久(大阪市立大学 血液内科)
- 池亀 和博(兵庫医科大学 血液内科)
- 山口 拓洋(東北大学大学院 医学系研究科 医学統計学分野)
- 森 毅彦(慶應義塾大学医学部 血液内科)
- 緒方 正男(大分大学医学部附属病院 輸血部・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
移植片対宿主病(GVHD)や感染症に対する治療薬の、造血幹細胞移植領域における適応外使用の現状を全国調査により明らかにし、効能追加に直結する多施設共同臨床試験を行い、我が国独自の薬剤のエビデンスを確立することにより適応拡大を目指す。
研究方法
抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(ATG)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ホスカルネットナトリウム水和物(FCN)、抗真菌薬(ボリコナゾール:VRCZ、イトラコナゾール: ITCZ)の適応拡大を目指した前方視的臨床試験を行った。
結果と考察
【結果】
1)FCN
「前方視的HHV6モニタリング試験」を論文化した。登録した230例中86例(37%)で高レベルのHHV6再活性化(>1万コピー/mL)を認めた。HHV6脳炎のリスクが高い臍帯血移植患者を対象に、FCNの投与量・投与期間を増やした「HHV6脳炎予防のための中等量FCN投与試験(FCN 90 mg/kg, 21日間)」を作成し、倫理審査が完了した。
2)MMF
薬物動態検査も含めた「MMFを用いたGVHD予防試験」を行い、血縁者間移植20例と非血縁骨髄移植31例の解析結果を報告した。主要評価項目のGrade II-IV急性GVHD発症率は、血縁群が45.0%、非血縁群が25.8%で、1年非再発死亡率はそれぞれ10%、7%であった。
3)ATG-F
「非血縁骨髄ミニ移植ATG試験」の解析結果を報告した。登録した27例の主要評価項目である移植後100日時点での生着生存割合は83.3%、急性GVHD発症率はGrade II 37.0%、Grade III-IVは1例も認めなかった。
4)真菌感染予防薬
「GVHD患者における抗真菌予防ランダム化比較試験」の解析結果を報告した。各群33例、計66例が登録され、主要評価項目である60日後の真菌感染予防成功率は両群とも非常に高かった(VRCZ群88%、ITCZ群94%)。
【考察】
造血幹細胞移植後のGVHDは人種による差があることが知られており、日本人における有効性、安全性のエビデンスを確立することは重要である。また本研究の過程で、オーファン領域における他の薬剤の適応拡大承認を促進する新たなモデルシステムを構築することは極めて重要である。
1)FCN
「前方視的HHV6モニタリング試験」を論文化した。登録した230例中86例(37%)で高レベルのHHV6再活性化(>1万コピー/mL)を認めた。HHV6脳炎のリスクが高い臍帯血移植患者を対象に、FCNの投与量・投与期間を増やした「HHV6脳炎予防のための中等量FCN投与試験(FCN 90 mg/kg, 21日間)」を作成し、倫理審査が完了した。
2)MMF
薬物動態検査も含めた「MMFを用いたGVHD予防試験」を行い、血縁者間移植20例と非血縁骨髄移植31例の解析結果を報告した。主要評価項目のGrade II-IV急性GVHD発症率は、血縁群が45.0%、非血縁群が25.8%で、1年非再発死亡率はそれぞれ10%、7%であった。
3)ATG-F
「非血縁骨髄ミニ移植ATG試験」の解析結果を報告した。登録した27例の主要評価項目である移植後100日時点での生着生存割合は83.3%、急性GVHD発症率はGrade II 37.0%、Grade III-IVは1例も認めなかった。
4)真菌感染予防薬
「GVHD患者における抗真菌予防ランダム化比較試験」の解析結果を報告した。各群33例、計66例が登録され、主要評価項目である60日後の真菌感染予防成功率は両群とも非常に高かった(VRCZ群88%、ITCZ群94%)。
【考察】
造血幹細胞移植後のGVHDは人種による差があることが知られており、日本人における有効性、安全性のエビデンスを確立することは重要である。また本研究の過程で、オーファン領域における他の薬剤の適応拡大承認を促進する新たなモデルシステムを構築することは極めて重要である。
結論
海外で標準的に用いられているMMF、ATG などの薬剤の日本人における有効性・安全性を多施設共同前方視的臨床試験により明らかにした。本研究班では、同種造血幹細胞移植後のGVHDや感染症に関する我が国独自の薬剤のエビデンスを確立することにより、臨床上、重要な薬剤の適応拡大を行い、造血幹細胞移植の有効性と安全性向上を目指す。
公開日・更新日
公開日
2015-09-04
更新日
-