文献情報
文献番号
201314042A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病リンパ腫に対するインターフェロンαとジドブジン併用療法の有用性の検証
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
塚崎 邦弘(独立行政法人国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
- 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院、血液腫瘍科)
- 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院、血液腫瘍科)
- 鵜池 直邦(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター、血液内科)
- 石塚 賢治(福岡大学医学部 腫瘍・血液・感染症内科)
- 丸山 大(国立がん研究センター中央病院、血液腫瘍科)
- 福島 卓也(琉球大学医学部保健学科、病態検査学講座、血液免疫検査学分野)
- 今泉 芳孝(長崎大学病院、血液内科)
- 根津 雅彦(国立がん研究センター東病院、血液腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HTLV-1が病因のATLは、多様な病態をとり難治性である。未治療indolent ATLへの有用な治療法を開発するため、先進医療B(旧高度医療)評価制度によって、其々欧米伯と日本で標準治療とされるインターフェロンα(IFN)/ジドブジン(AZT)療法とwatchful waiting(WW)療法との第Ⅲ相比較試験をJCOGリンパ腫班(LSG)で行う。併用療法の有用性が検証されれば、両剤の本疾患に対する薬事法上の適応拡大の承認と保険適用を目指す。
研究方法
1)臨床試験プロトコールの作成:分担研究者、JCOGデータセンター、製薬企業と附随研究の研究協力者と協同で行う。2)先進医療B評価制度による本臨床試験の開始:分担研究者と研究協力者が協議のうえ、厚生労働省の担当者と事前面談を重ねて行う。3)他のHTLV-1関連疾患の研究班との交流:患者登録促進のため、他のHTLV-1関連疾患の研究班・患者会と協同する。
結果と考察
本研究は、医療技術実用化総合研究事業(H20)で立案したプロトコールコンセプトをもとに、平成22年度からの3年間(+繰越)のがん臨床研究事業ではプロトコールを最終化するとともに先進医療B評価制度によって臨床試験を開始する準備を進めたのに引き続いて以下のように研究を行い、患者登録を開始した。1)先進医療B評価制度による本臨床試験の登録開始。2012年10月からの高度医療制度変更後に、LSG基幹施設のIRB承認を経て12月に先進医療Bとして本試験を申請したが、これまで日本で臨床使用実績のない治療法であったので、早期・探索的臨床試験拠点、臨床試験中核病院での少数例での安全性の確認を前提として、翌2013年7月に承認。9月には未治療低悪性度のATL患者に対するより有用な治療法を開発するため、先進医療B評価制度によって、「ATLに対するIFN/AZT併用療法とWW 療法の第III 相ランダム化比較試験(JCOG1111)」の患者登録をJCOG-LSGで開始。現在は、研究代表者と分担研究者が属する早期探索拠点病院の2施設が試験を開始し、2例が登録されたのに引き続いて、臨床試験中核病院が試験を開始した。併用療法群の1例は試験治療を継続している。全LSG参加施設も、IFN/AZT療法群の2例の安全性確認後に、先進医療Bで承認され次第順次登録を開始するため、分担研究者、研究協力者(製薬企業担当者、JCOGデータセンター、各LSG施設研究者・薬剤部担当者・事務部担当者)と準備中。また附随研究を行うため、JCOGに新設されたバイオバンクに血液保存を開始。希少疾患を対象とした本試験への適格患者リクルート促進のため、関連する学会、国立がん研究センター、関連する患者会のHPで本試験を公開。2)他のHTLV-1関連疾患についての研究班との交流。妊婦へのHTLV-1指導に当たる医療者の啓発、ATLなどのHTLV-1関連疾患に対するキャリアの不安への対応、さらには関連疾患の診療の向上のため、HTLV-1関連疾患についての他の研究班との交流を継続し、研究の進捗状況と今後の対応について情報を共有するとともに、HTLV-1情報サービスHPに本試験を他のATLに対する臨床試験と合わせて患者・医療者へ広報。3)海外のATL研究者とのとの交流。研究代表者は海外あるいは国内で開催されたHTLV-1に関連する国際シンポジウムでATL診療についての国際的合意の現状と本疾患に対するJCOG-LSGを主とした日本での継続的な臨床試験結果を紹介するとともに、北中南米、欧州の血液学者たちからは本疾患に対するIFN/AZT療法について情報収集を継続。
結論
本研究(JCOG1111)は、厚生労働省によるHTLV-1総合対策の中でも、関連疾患の中で最多であるATLに対する海外での標準治療の有用性の検証とその日本への導入を目指し先進医療B評価制度により進めている。本試験結果によりATLに対するIFNαとAZTの併用療法の有用性が検証され、診療ガイドラインに掲載されて医学薬学上公知と見なされれば、両薬剤の本疾患に対する薬事承認(効能・効果の追加)が期待できる。また血液試料をJCOGバイオバンクに保存し、分子生物学的な研究を行い、層別化治療法の開発も試みる。その結果を踏まえてHTLV-1関連疾患についての他の研究班とも共同し、HTLV-1関連疾患の総合対策に寄与することを目指す。さらに本試験は恒常的な多施設共同臨床試験グループであるJCOGで初の先進医療B制度下の臨床試験であり、本試験の実施に伴って得られるノウハウは今後他の先進医療B制度下でのJCOG試験やJCOG以外のグループの試験にも活用されることが期待でき、間接的な社会貢献も大きいと見込まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-09-04
更新日
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