文献情報
文献番号
201314041A
報告書区分
総括
研究課題名
未治療原発不明癌に対するDNAチップを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う無作為化第II相試験
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 倉田 宝保(関西医科大学)
- 西尾 和人(近畿大学 医学部 )
- 藤田 至彦(近畿大学 医学部 )
- 坂井 和子(近畿大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
原発不明がん(CUP)を対象とした遺伝子発現解析により原発巣の推定を行う新しい治療戦略の、従来のCUP治療戦略に対する臨床的有用性を問う第III相比較試験の実施妥当性を無作為化臨床第II相試験にて評価する。その際に得られたCUPにおける遺伝子発現プロフィールを用い、より精度の高いCUP診断薬およびCUP特異的分子標的薬の創生を目指す。
研究方法
1.臨床試験を継続、割り付けおよび治療が実施された103例の登録が現在まで得られているが、当初の目標症例120例を完遂する。
2. 最終症例の登録から2年が経過した時点でデータセンターは最終解析を行い、「最終解析報告書」を研究事務局に提出する。
3. 本臨床試験において付随的に得られた遺伝子発現プロフィールを用いた付随研究として、以下のトランスレーショナル研究を実施する。
1)CUPに特徴的な分子の生物学的意義の検討:現在までの解析結果では、個々の原発巣推定に有用な遺伝子セットが選択されている。一方、「CUPに特徴的」な遺伝子群も同定されており、その中には上皮間葉移行(EMT)に関連する遺伝子等が含まれており原発不明癌の転移を主体とする生物学的特徴を反映する結果を得られつつある。その遺伝子群は、未知のCUPの生物学的特徴を反映し、治療戦略への応用が可能となると考えられるため、in vivo転移モデルでの機能解析を含めた基礎研究を行う。
2)CUP診断キットの開発:原発巣推定アルゴリズムは、大量の固形癌の遺伝子発現データを基に多施設共同臨床試験症例のデータを使用して改善・機能向上を続けてきた。残りの60例の原発巣推定能力を検証し、臨床検体の組織の遺伝子発現バックグラウンドを考慮した機能向上を目指す。DEFINEは、現在エクセルベースの自動で原発巣推定結果を示すソフトウェアであるが、原発巣推定アルゴリズムで使用した遺伝子群を絞り込みリアルタイムPCRベースの遺伝子発現値によって原発巣が特定できる診断キットの開発を目指す。
2. 最終症例の登録から2年が経過した時点でデータセンターは最終解析を行い、「最終解析報告書」を研究事務局に提出する。
3. 本臨床試験において付随的に得られた遺伝子発現プロフィールを用いた付随研究として、以下のトランスレーショナル研究を実施する。
1)CUPに特徴的な分子の生物学的意義の検討:現在までの解析結果では、個々の原発巣推定に有用な遺伝子セットが選択されている。一方、「CUPに特徴的」な遺伝子群も同定されており、その中には上皮間葉移行(EMT)に関連する遺伝子等が含まれており原発不明癌の転移を主体とする生物学的特徴を反映する結果を得られつつある。その遺伝子群は、未知のCUPの生物学的特徴を反映し、治療戦略への応用が可能となると考えられるため、in vivo転移モデルでの機能解析を含めた基礎研究を行う。
2)CUP診断キットの開発:原発巣推定アルゴリズムは、大量の固形癌の遺伝子発現データを基に多施設共同臨床試験症例のデータを使用して改善・機能向上を続けてきた。残りの60例の原発巣推定能力を検証し、臨床検体の組織の遺伝子発現バックグラウンドを考慮した機能向上を目指す。DEFINEは、現在エクセルベースの自動で原発巣推定結果を示すソフトウェアであるが、原発巣推定アルゴリズムで使用した遺伝子群を絞り込みリアルタイムPCRベースの遺伝子発現値によって原発巣が特定できる診断キットの開発を目指す。
結果と考察
CUP60症例の発現プロファイルをもとに、正常リンパよりもCUPで発現が大きく亢進している44遺伝子のなかから、CUPの特徴である”転移能”を付与するような遺伝子の探索を試みた。1)特定のがん種だけに高発現が見られない遺伝子、2)CUPの全症例のうち半数以上に高発現が起こっている遺伝子、3)CUPのモデル細胞として使った、転移能の優れた非小細胞肺癌株であるA549細胞に高発現する遺伝子、という3つの判定基準をもとに候補遺伝子を23個に絞り、さらに多孔性フィルターを使ってmigration assayを行った。A549細胞は24時間で多孔性フィルターの反対側に遊走するが、siRNAによるノックダウン法で、細胞増殖能は変わらず、遊走能のみが大きく損なわれる遺伝子をスクリーニングしたところ、PRG1、MIF, S1004A, SERF2, OAZ1, TIMP1の6個の候補遺伝子が得られた。
次に、このうちPRG1とMIFのshRNAを発現し、これらの遺伝子の発現を恒常的に抑制するA549細胞株を樹立し、vivoの実験を行った。shRNAの発現用のベクターは同時にGFPの遺伝子も搭載しており、これらの細胞株のマウスにおける増殖を蛍光でモニターすることが可能である。20日後、実際にがんで膨れた足底に励起光を当てると、原発巣に強い蛍光が生じた。また、膝窩リンパ節に相当する部分も弱いながら蛍光を発しており、原発巣からの転移が示唆された。コントロール、PRGおよびMIFのshRNAを発現するA549を各群10匹ずつ注射したマウスから摘出した膝窩リンパ節は、注射をしていない右足側のリンパ節と比べて肥大していた。
原発巣からリンパ節転移を起こす細胞の割合は、リンパ節における転移がん細胞が発する蛍光量をimageJを用いて求め、原発巣である足底の蛍光量との比より評価した。その結果、コントロールに比べて、PRGやMIFのノックアウト(shRNA)がリンパ節転移を有意に阻害していることがわかった。
転移したがん細胞のリンパ節に占める割合は一様ではないことから、肥大したリンパ節の大きさを同時期に測定するだけでは、各細胞株の転移能を比較することはできない。個々の遺伝子がどれほど転移に関与するかを評価するには、本実験のようなin vivoの系を用い、原発巣およびリンパ節の相対蛍光量を測定する方法により可能となると考えられる。
次に、このうちPRG1とMIFのshRNAを発現し、これらの遺伝子の発現を恒常的に抑制するA549細胞株を樹立し、vivoの実験を行った。shRNAの発現用のベクターは同時にGFPの遺伝子も搭載しており、これらの細胞株のマウスにおける増殖を蛍光でモニターすることが可能である。20日後、実際にがんで膨れた足底に励起光を当てると、原発巣に強い蛍光が生じた。また、膝窩リンパ節に相当する部分も弱いながら蛍光を発しており、原発巣からの転移が示唆された。コントロール、PRGおよびMIFのshRNAを発現するA549を各群10匹ずつ注射したマウスから摘出した膝窩リンパ節は、注射をしていない右足側のリンパ節と比べて肥大していた。
原発巣からリンパ節転移を起こす細胞の割合は、リンパ節における転移がん細胞が発する蛍光量をimageJを用いて求め、原発巣である足底の蛍光量との比より評価した。その結果、コントロールに比べて、PRGやMIFのノックアウト(shRNA)がリンパ節転移を有意に阻害していることがわかった。
転移したがん細胞のリンパ節に占める割合は一様ではないことから、肥大したリンパ節の大きさを同時期に測定するだけでは、各細胞株の転移能を比較することはできない。個々の遺伝子がどれほど転移に関与するかを評価するには、本実験のようなin vivoの系を用い、原発巣およびリンパ節の相対蛍光量を測定する方法により可能となると考えられる。
結論
PRGやMIFのノックアウト(shRNA)がリンパ節転移を有意に阻害することから、これらはCUPの特徴といえる“転移能”を付与する遺伝子としてCUPの病態に関連していることが示唆された。現在、同様の方法で残りの候補遺伝子の解析を進めている。
公開日・更新日
公開日
2015-09-04
更新日
-