文献情報
文献番号
201314020A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの診療実態・指針の分析による診療体制の整備
課題番号
H23-がん臨床-一般-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
塚崎 邦弘(独立行政法人 国立がんセンター 血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
- 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
- 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
- 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
- 鵜池 直邦(国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
- 石澤 賢一(東北大学病院臨床試験推進センター 血液免疫科)
- 石田 陽治(岩手医科大学 内科学講座血液・腫瘍内科分野)
- 内丸 薫(東京大学医学研究所附属病院 血液腫瘍内科)
- 田中 淳司(東京女子医科大学 血液内科講座)
- 石塚 賢治(福岡大学医学部 腫瘍・血液・感染症内科)
- 石田 高司(公立大学法人名古屋市立大学 腫瘍・免疫内科学)
- 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院がんセンター 血液学)
- 今泉 芳孝(長崎大学病院 血液内科)
- 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部 皮膚科学)
- 河井 一浩(鹿児島大学大学院医歯薬学総合研究科 、皮膚科学分野)
- 天野 正宏(宮崎大学医学部感覚運動医学講座 皮膚科学分野)
- 大島 孝一(久留米大学医学部 病理)
- 岩永 正子(東京慈恵会医科大学 総合健診・予防センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,154,000円
研究者交替、所属機関変更
研究者所属機関変更
分担研究者:岩永正子
旧所属機関:帝京大学大学院 公衆衛生学研究科(~平成25年8月31日)
新所属機関:東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター(平成25年9月1日~)
研究報告書(概要版)
研究目的
ATLはHTLV-1が病因の単一疾患であり、難治性でかつ多様な臨床病態をとる。ATLの予後予測と治療法の選択には、その自然史によって作成された臨床病型分類が有用とされるが、その予後は他の造血器腫瘍よりも不良であり、HTLV-1感染者におけるATL発症予防法は全く開発されていない。本研究では、塚崎ほかが分担研究者をつとめたH21-3次がん-一般-002(渡邉班)の追加課題で明示されたATL診療体制の問題点の改善を目指す。
研究方法
1)全国の医療機関におけるATLの診療実態と治療成績の分析。ATL第11次調査として2010年から2011年の2年間に新規に診断されたATL患者について全国の2500の血液内科/皮膚科施設にアンケートを送付し、回答のあった502施設中の対象患者(総計962例)を有する127施設へ調査票などを送付し、その実態を解析する。2)ATLの発症形態による4病型分類の再検証。本研究参加施設での病型診断が困難、経過が非典型な症例を解析する。臨床病型について皮膚型の提唱の可能性の検討、HTLV-1感染者とくすぶり型ATLの識別のための末梢血ATL細胞の評価、リンパ腫型の病理再評価、慢性型の予後不良因子の再評価を行い、新規臨床・分子病態マーカーの探索的研究も行う。3)ATL診療ガイドライン(GL)の解説の作成。日本血液学会が作成中の造血器腫瘍診療GLと、日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会が改訂した皮膚悪性腫瘍診療GLを検討する。その結果に基づいて、それぞれの専門医の協同での相互観点から、皮膚科と血液内科の学会によるGLについて、一般内科医・皮膚科医とATL専門医を対象として、その解説を取り纏める。4)患者の目線から見たATLに対する診療体制のあり方の確立。1)-3)を踏まえ、がん対策・HTLV-1/ATL対策のグループ、学会、患者団体とも連携し適切な診療体制の構築を目指す。
結果と考察
1)アンケートに回答のあった502施設中の対象患者(総計962例)を有する127施設へ調査票などを送付した。本報告書作成時点における中間解析対象症例数は805例である。その中間解析結果は分担研究者報告書に示すが、患者の著しい高齢化が明らかとなった。今後は今回の対象患者の予後調査を行い, 近年のATL全体の治療結果を明らかにし, 高齢発症ATLに対する治療対策も含めた診療体制の整備に資する必要がある。さらには次調査によるATLの実態推移の評価は重要である。2)1)の多数例での種々の病変などの臨床病態による予後解析の評価と並行して、本研究参加施設における病型診断が困難、あるいは診断後の経過が非典型な症例を検討した。その中で皮膚病変を有するくすぶり型の一部が予後不良、消化管に限局した急性型の一部が予後良好、限局期リンパ腫型ATLが予後良好なことが報告された。しかし施設間での各病変の評価法などにばらつきがある可能性が指摘されたので、症例の臨床・病理情報を持ち寄っての詳細な病態検討会を7月に実施した。結果は分担研究者報告書に示すが病型分類の変更を提言するには至らず、むしろ現行の枠組みは残し、その中で不都合な点について、亜型の提唱や、予後因子解析を検討していく方針となった。皮膚病変に関してはMeeting reportを論文化した(J Dermatol. 2014)。ATLの新規臨床・分子病態マーカーの探索的研究も並行して行った。3)今年度に刊行された造血器腫瘍診療GLと昨年度に改訂された皮膚悪性腫瘍GLでのATLの記載について、それぞれのGL作成に関わっている分担研究者を中心に、一般内科医・皮膚科医を主に対象として、複合的に幅広くその解説を取りまとめた。結果は分担研究者報告書に示すとともにHTLV-1情報サービスHP上に公開したので、患者を併診する両科医の連携によるより適切な標準治療の提供に繋げる。4)これまで1)から3)を進める中で明らかとなった本疾患の診療実態の問題点について、(H23-がん臨床-一般-020)内丸班と合同班会議を行うなど連携して、ATLを含むHTLV-1関連疾患の診療体制を確立するための方策を協議し、HTLV-1情報サービスHPでのATLの臨床試験情報を更新した。
結論
厚生労働省が行っているHTLV-1総合対策の中でも、関連疾患の中で最多であるATLの診療体制の整備に資することを目指して、3年目には1)全国の医療機関におけるATLの診療実態と治療成績の分析、2)ATLの発症形態による4病型分類の再検証、3)ATL診療ガイドラインの解説の作成、4)患者の目線から見たATLに対する診療体制のあり方の確立について研究した結果をそれぞれ取り纏め、本疾患の診療体制の整備に努めた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-03
更新日
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