HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進 

文献情報

文献番号
201314018A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進 
課題番号
H23-がん臨床-一般-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫 (東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学系研究科)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
  • 鵜池 直邦(九州がんセンター 血液内科)
  • 宇都宮 與(今村病院分院 血液内科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 石塚 賢治(福岡大学 医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学 医学部)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 渡邊 清高(帝京大学 医学部)
  • 高 起良(西日本旅客鉄道株式会社大阪鉄道病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,462,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者12の渡邊清高先生は、平成26年4月1日付けで国立がん研究センターから帝京大学に所属変更。

研究報告書(概要版)

研究目的
全国で同レベルのHTLV-1キャリア、ATL患者に対する情報提供、相談対応行うために(1)相談対応を行う医療従事者のサポートのために必要な体制の検討(2)ATL患者、HTLV-1キャリア相談対応のために構築すべき体制の検討(3)ATL患者、HTLV-1キャリア、一般市民などに効率的に情報を提供する体制の検討を行うことを目的とする。
研究方法
1.相談に対応する医療従事者への教育ツールの検討及び開発
全国4施設におけるHTLV-1キャリア外来の実態調査を終了し解析を行った。この結果を踏まえ、母子感染、キャリア指導の各種マニュアルをベースにminimum requirementを抽出しQ&A形式にまとめて全国の保健所を始めとする相談対応施設に配布した。また、このQ&A集をテキストとする研修会を実施し、研修テキストとしての有用性について評価を行った。
2.全国における相談体制の構築の検討
昨年度までの全国保険所、都道府県担当部署、がん診療連携拠点病院相談支援センターの調査結果を受けて、今年度は患者会との連携により意識調査を行った。また、HTLV-1情報サービスウェブサイトによる情報提供とモニター調査を継続しながら今年度もアクセス解析による分析を行った。ウェブサイトを通じて相談対応用の各種パンフレットの配布を継続した。これらパンフレットのうちATL患者家族用パンフレットについては改訂が必要と判断し、改訂第2版を作製して全国のATL診療施設に配布した。
3.HTLV-1キャリア、ATL患者・家族、全国の一般市民に対し、HTLV-1ウイルス関連疾患やその治療に関する正しい情報を提供する
「HTLV-1情報サービス」によりキャリア、ATL患者の求める情報を提供できるウェブサイトの構築をめざし、今年度もモニター調査を行ってウェブサイトの改変を行った。
結果と考察
HTLV-1キャリア外来実態調査の結果、献血により判明したキャリア、妊婦健診で判明したキャリアが全体の3分の2を占めることが改めて明らかになり、これらのキャリアに対する体制を構築することで相談体制の構築が進むと考えられる。また、相談内容は一定の範囲内に収まることを示し、相談の一次対応に必要な知識の範囲を明らかにした。これらに対応するためにQ&A形式のテキストとして「HTLV-1キャリア相談支援(カウンセリング)に役立つQ&A集の形でまとめた。Qに対するA(回答)の記述には、班員による検討によって得られたコンセンサスを記載するとともに、患者会、患者・市民ボードなどによるパブリックコメントを得るなど、今後の標準となるテキストであることに配慮した。これによりキャリア対応のモデルを提示することができ、相談対応の支援となった。相談対応の実務支援とともに教育用も意図された本テキストを用いた研修の有用性の評価のため研修会を開催、北海道から沖縄までの相談支援担当者が集まった。研修会後のアンケート調査により本テキストは非常に高い評価を得、研修会についても88%が今後の継続を希望するなど評価が高く、今後の研修の標準とすることができると考えられた。
 本年度は患者会を対象に保健所、がん拠点病院相談支援センターの実態に関する意識調査を施行した結果、保健所、がん拠点病院相談支援センターとも認知度は低く、相談先として保健所をあげたのはわずかに3%で、相談支援センターについても70%近くは存在すら知らなかった。これらの施設における相談件数の低さの原因の一つと考えられ、昨年度までの研究結果を裏付けるものとなった。HTLV-1情報サービスウェブサイトによる情報提供とその解析を今年度も継続し、大都市圏を中心に情報ニーズが高いことが改めて確認された。ウェブへのアクセスは年々増加し、今年度は5万件を突破した。ATL患者・HTLV-1キャリアのニーズが保健所・がん拠点病院相談支援センターに結びついていないことが問題の一つであることが改めて明らかになり、これらの施設の広報と活動の支援が重要と考えられた。本ウェブを通じて、今年度も患者・キャリア用コンテンツの配布を計3883冊配布した。ATL患者・家族用パンフレットは皮膚科的治療、新規薬剤の記載の追記が必要となったため改訂を行った。
 情報提供の観点からは上記ウェブサイトの運営の継続を行ったが一般市民の啓発には不十分と考えられ、マスコミの利用など他のアプローチが必要と考えられた。
結論
HTLV-1キャリア。ATL患者の相談機能の強化のために保健所、がん診療拠点病院相談支援センターなどの利用を促進、活性化するためには、これらの認知度の向上とそれを支援する体制の構築が重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201314018B
報告書区分
総合
研究課題名
HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進 
課題番号
H23-がん臨床-一般-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫 (東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学系研究科)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
  • 鵜池 直邦(九州がんセンター 血液内科)
  • 宇都宮 與(今村病院分院 血液内科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 石塚 賢治(福岡大学 医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学 医学部)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 渡邊 清高(帝京大学 医学部)
  • 高 起良(西日本旅客鉄道株式会社大阪鉄道病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者12の渡邊清高先生は、平成26年4月1日付けで国立がん研究センターから帝京大学に所属変更。

研究報告書(概要版)

研究目的
全国で同レベルのHTLV-1キャリア、ATL患者に対する情報提供、相談対応行うために(1)相談対応を行う医療従事者のサポートのために必要な体制の検討(2)ATL患者、HTLV-1キャリア相談対応のために構築すべき体制の検討(3)ATL患者、HTLV-1キャリア、一般市民などに効率的に情報を提供する体制の検討を行うことを目的とする。
研究方法
1.全国における相談体制の構築の検討
全国495ケ所の保健所のHTLV-1キャリア相談対応状況の実態調査を行った。endemic、non-endemic、semi-endemic地域それぞれ代表的と考えられる都道府県につき各分担研究者による相談支援体制の実態調査を行った。キャリア、患者側から見た相談体制の評価のために患者会との連携によるアンケート調査を行った。医療機関におけるキャリア対応の内容の検討のため、全国のキャリア対応可としている施設の実態調査を行うとともに、HTLV-1キャリア専門外来を開設している施設の対応内容についての調査を行った。医療施設におけるHTLV-1キャリア対応のモデルの提示のために、全国のHTLV-1キャリアに対する相談対応を行っているキャリア専門外来の実態調査を行った。ATL患者相談対応の実態調査を目的に全国397ケ所のがん拠点病院相談支援センターを対象に調査票による調査を実施した。
2.相談に対応する医療従事者への教育ツールの検討及び開発
保健所をはじめとするキャリア相談対応実施施設に対する支援と教育を目的にQ&A集を作成した。分担研究者斎藤が作成していた妊婦キャリア対応用Q&Aをベースに、上記全国HTLV-1キャリア専門外来の実態調査も参考に妊婦以外のキャリアにも対応できるようカバーすべきminimum requirementを抽出してQ&A形式にまとめた。テキストとしての使用を考慮して通読できる形に整理してQ&A集として作成、全国の保健所を始めとする相談対応施設に配布した。また、このQ&A集をテキストとする研修会を実施し、研修テキストとしての有用性について評価を行った。
3.HTLV-1キャリア、ATL患者・家族、全国の一般市民に対し、HTLV-1ウイルス関連疾患やその治療に関する正しい情報を提供する
先行研究班により作成された「HTLV-1情報サービス」ウェブサイトの運営を引き継ぎ、再開した。患者、キャリアをはじめ、患者会、一般市民まで含むモニター調査を3回にわたって施行して結果を反映する改変を行うとともに、望まれるウェブを検討した。本ウェブのアクセス解析を年1回、3回に当たって施行して、ウェブの利用状況などについて評価・検討した。同様に発行済みの各種パンフレットの管理を引き継ぎ、上記ウェブを通じた配布の継続、患者向けパンフレットの改訂を行った。一般市民を含めて、キャリア・患者への情報提供、啓発を目的に全国6ケ所で公開医療講演会・シンポジウムを開催した。
結果と考察
保健所で全体の70%がキャリアへの対応経験がなく、がん拠点病院相談支援センターでも59%が一度も対応経験がなく、約90%はほとんど対応がなかった。患者会への調査でもHTLV-1キャリアのうち保健所への相談を考える人はわずかに3%で、一方相談支援センターについては、75%はその存在すら知らなかった。これらの施設における認知度の低さが利用が低調な理由の一つと考えられた。保健所、相談支援センター側の問題点として、対応のための知識の習得と、連携できる医療機関がないことがあげられており、これらを整備して支援することが必要である。一方HTLV-1情報サービスウェブサイトのアクセス解析では5万件を突破するアクセスがあり、居住地では東京、大阪など非流行地とされてきた大都市圏が多かった。情報、相談ニーズが相談体制に結びつけられていないと考えられた。キャリア専門外来調査からキャリアの相談内容を明らかにし、相談対応の標準を示すとともにQ&A形式の冊子を作成し、全国の保健所、相談支援センターに配布した。本冊子を用いた研修は高い評価を得て、今後の標準になり得ると考えられた。公開医療懇談会・シンポジウムは行政と共同で開催することによりキャリア、患者との情報交換には有用であったが一般の関心は低く、マスコミの利用など別途方策が必要と考えられた。
結論
HTLV-1キャリア。ATL患者の相談機能の強化のために保健所、がん診療拠点病院相談支援センターなどの利用を促進、活性化するためには、これらの認知度の向上を向上してキャリア・患者のニーズにマッチさせることが必要である。そのためには、今回作成した冊子をテキストにした研修などの教育と、これら施設を支援する2次対応施設との連携体制の構築が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は政策的な研究課題であるため、専門的・学術的な成果をねらった研究ではない。
そのため、専門的・学術的観点からの成果は乏しい。
臨床的観点からの成果
本研究によりHTLV-1キャリア相談機能として「HTLV-1キャリア対応」という概念が定着し、本研究の後継研究である厚生労働科学研究費補助金「HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究」により、保健所の相談機能に加え、血液内科における相談機能が重要であり、かつ拠点化の必要性が明らかになったのを受けて、日本HTLV-1 学会登録施設制度が開始され、平成30年度から先行6施設が選定された。
ガイドライン等の開発
本研究班で作成した保健所などの相談における標準的な対応をまとめた「HTLV-1キャリア相談支援(カウンセリング)に役立つQ&A集」は、その後も各地での保健師、助産師などの講習テキストとして用いられている。本Q&A集は上記の拠点としての登録施設におけるHTLV-1キャリアに対する相談対応の基本として位置付けられ、登録機関要件案にも相談と支援は本Q&A集に準拠すること、本Q&A集の記載内容までは最低限相談対応の範囲とすることなどが記載されている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果をもとに構築、運営されているHTLV-1キャリア登録ウェブサイト「キャリねっと」は、本邦におけるHTLV-1キャリアの実態についての貴重な情報を提供し続けており、本ウェブサイトの登録データからHTLV-1キャリアの相談ニーズの高さ、および血液内科にける対応の必要性、その中でも特に拠点を選定することの必要性が明らかになりHTLV-1 キャリア対策を拠点化の方向に進める力となった。
その他のインパクト
本研究の成果は、その発展的継続として行われた厚生労働科学研究「「HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談体制の整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究」と合わせ、HTLV-1キャリアの実態を具体的な数字で示すことになり、政策検討の根拠を与えることになった。また、「キャリねっと」登録者集団は、追加アンケートなどあらたな調査を行う際の母集団となり、HTLV-1領域の他研究班に有用な調査ツールを提供することになった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-06-08

収支報告書

文献番号
201314018Z