文献情報
文献番号
201314017A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における子宮頸癌予防HPVワクチンの医療経済的評価のための大規模臨床研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 隆之(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
- 大道正英(大阪医科大学大学院 医学研究科)
- 神崎秀陽(関西医科大学大学院医学研究科)
- 祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科)
- 木村 正(大阪大学大学院医学系研究科)
- 角 俊幸(大阪市立大学大学院医学研究科)
- 万代昌紀(近畿大学大学院医学研究科)
- 村田紘未(関西医科大学大学院医学研究科)
- 藤田征巳(大阪大学大学院医学系研究科)
- 吉野 潔(大阪大学大学院医学系研究科)
- 中井英勝(近畿大学大学院医学研究科)
- 寺井義人(大阪医科大学大学院 医学研究科 )
- 市村友季(大阪市立大学大学院医学研究科)
- 上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科)
- 木村敏啓(大阪大学医学部附属病院)
- 西川伸道(新潟大学医歯学総合病院)
- 森本晶子(大阪大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,539,000円
研究者交替、所属機関変更
(旧研究者)斉藤淳子 関西医科大学大学院医学研究科
(新研究者)村田紘未 関西医科大学大学院医学研究科
交替理由:斉藤淳子医師の退職に伴う交替
研究報告書(概要版)
研究目的
若年健常女性における HPV の感染状況(HPV-16型・18型の割合)を大規模に解析すること、および日本における学童期女子に対する HPV ワクチンの中・長期予防効果を検証することを目的とする。
また、若年者の子宮がん検診受診率はこれまでの自治体の取り組みに関わらず著しく低いままであり、当研究では若年者の子宮がん検診受診率の向上にも取り組む。
また、若年者の子宮がん検診受診率はこれまでの自治体の取り組みに関わらず著しく低いままであり、当研究では若年者の子宮がん検診受診率の向上にも取り組む。
研究方法
大阪産婦人科医会に所属する施設において、公費でHPVワクチンを接種した12-18歳を同意を得た上で登録、20歳および25歳になった時点で子宮頸部細胞診およびHPV検査(陽性時は型判定も施行)を施行し、子宮頸部細胞診異常の発現頻度とHPV感染を解析する。子宮頸部細胞診が異常であった場合はコルポスコープ下の生検等の精査を行う。これらをHPVワクチン非接種者の20歳および25歳の子宮頸部細胞診の検診を受けた群と比較し、HPVワクチンの効果を検証する。登録は2011年4月より3年間を予定。目標症正常例数は、推定されるHPV感染率・細胞診異常の割合を元に、ワクチンの効果の有意な統計学的解析が可能と考えられる症例数、すなわち20歳および25歳時でそれぞれ少なくとも4000人程度・1500人程度とし、これを目標にワクチン接種者の登録は10000人を目安とした。
結果と考察
12歳から18歳までのHPV ワクチン接種症例の登録は平成23年4月から開始し、平成24年12月末までに2782症例の登録を得た。しかし平成26年3月末の登録数は2795症例で、これはHPVワクチンの中・長期的効果について検討している他の先行研究の5-6倍の人数であるが、3年間で10000症例登録という当初の目標数を下回るペースであった。これについては研究開始後に度重なる想定外の事象の影響を受けたことによる。まず、研究(接種者登録)を開始した直後、HPVワクチン(サーバリックス)の市場への供給がストップしてしまう事態に襲われた。登録を担当する大阪産婦人科医会の会員の先生方に説明会などを行い、研究の機運が高まった矢先であり、正に出鼻をくじかれた恰好であった。
その後、ワクチンの供給は再開されたが、次に訪れた誤算は、HPVワクチンの接種の多くが内科あるいは小児科で行われたことである。HPVワクチン接種は6割が内科で行われ、産婦人科では1割ほどしか摂取されていない。そこで大阪府内科医会に協力を依頼し、平成24年3月からは内科機関からの登録も可能とした。
次に起こったのは平成25年3月の副反応報道であった。HPVワクチン接種後に発生した不随意運動を伴う事象等がマスメディアで反復して放映された。そして平成25年6月に厚生労働省から、HPVワクチン接種の積極的勧奨の一時中止の声明が出された。それ以降ワクチン接種がほぼ止まり、その結果研究への登録はストップした。以上の理由でワクチン接種者の登録数が目標に達していない。そこでその対策として、登録期間を平成26年度までの1年間延長し、大阪府内科医会の協力を仰ぎ、市町村と連携して登録者を確実に検診受診に誘導することに取り組み、また、ワクチン接種の積極的勧奨再開後の接種推進へ向けた取り組みを画策している。自治体とも連携し、登録者を確実に検診受診に誘導する方法を図るために、ワクチン接種者(当研究への登録者)に対してインタビュー調査・アンケート調査を行ったところ、現在の若年者の子宮がん検診受診率は著しく低いが、検診についての正確な情報提供を行えば若年者でも十分検診に向かわせることが可能であることが示唆された。一方、現在ほぼ止まっているワクチン接種については、接種の積極的勧奨が再開された際に備える必要があるが、上述のインタビュー調査・アンケート調査から、ワクチンの効能や副反応について正確な情報提供があれば今後接種が進むことが示唆された。
その後、ワクチンの供給は再開されたが、次に訪れた誤算は、HPVワクチンの接種の多くが内科あるいは小児科で行われたことである。HPVワクチン接種は6割が内科で行われ、産婦人科では1割ほどしか摂取されていない。そこで大阪府内科医会に協力を依頼し、平成24年3月からは内科機関からの登録も可能とした。
次に起こったのは平成25年3月の副反応報道であった。HPVワクチン接種後に発生した不随意運動を伴う事象等がマスメディアで反復して放映された。そして平成25年6月に厚生労働省から、HPVワクチン接種の積極的勧奨の一時中止の声明が出された。それ以降ワクチン接種がほぼ止まり、その結果研究への登録はストップした。以上の理由でワクチン接種者の登録数が目標に達していない。そこでその対策として、登録期間を平成26年度までの1年間延長し、大阪府内科医会の協力を仰ぎ、市町村と連携して登録者を確実に検診受診に誘導することに取り組み、また、ワクチン接種の積極的勧奨再開後の接種推進へ向けた取り組みを画策している。自治体とも連携し、登録者を確実に検診受診に誘導する方法を図るために、ワクチン接種者(当研究への登録者)に対してインタビュー調査・アンケート調査を行ったところ、現在の若年者の子宮がん検診受診率は著しく低いが、検診についての正確な情報提供を行えば若年者でも十分検診に向かわせることが可能であることが示唆された。一方、現在ほぼ止まっているワクチン接種については、接種の積極的勧奨が再開された際に備える必要があるが、上述のインタビュー調査・アンケート調査から、ワクチンの効能や副反応について正確な情報提供があれば今後接種が進むことが示唆された。
結論
日本における子宮頸癌予防のためのHPVワクチンの医療経済的評価を最終目的とした大規模コホート研究OCEAN STUDYを実施している。現在の若年健常女性における HPV の感染状況(HPV-16型・18型の割合)を大規模に解析すること、および学童期女子に対する HPV ワクチンの中・長期予防効果を検証することがOCEAN STUDYの最大の目的である。子宮頸癌を効果的に予防していくには子宮がん検診受診率とワクチン接種率をいずれも50%以上に上げることを目指す必要がある。医療経済的にはワクチン接種率のみを100%近くに上げることも許容され、これについては今後のワクチン接種の勧奨再開の流れなどを把握して戦略を練っていく必要があるものと考えられる。当研究の重要性はさらに高まっていると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
-