文献情報
文献番号
201314014A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢がん患者における高齢者総合的機能評価の確立とその応用に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長島 文夫(杏林大学 医学部内科学腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
- 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん政策科学研究部)
- 小川 朝生(国立がん研究センター東病院 臨床開発センター精神腫瘍学開発分野)
- 濱口 哲弥(国立がん研究センター中央病院 消化管内科)
- 明智 龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
- 須藤 紀子(杏林大学医学部 高齢医学科)
- 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院 先端医療臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment; 以下CGA)は、高齢者の生活機能障害を総合的に評価する手法で、本研究の目的は日本人高齢がんに活用できるCGAの計測尺度を開発・検証し、高齢がん医療へ応用していくことである。
研究方法
患者登録を含む研究は、研究計画書を作成し倫理委員会の承認を得たのちに登録を開始した。これらの臨床試験は、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言などの国際的倫理原則を遵守して行われた。タブレット端末を用いたCGA採録システムの構築には日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)と協働し、一部は外部業者に委託して開発した。
結果と考察
(1)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)において高齢者研究小委員会を組織し、高齢者がんの臨床研究ポリシーを策定するべく活動を開始した。
(2)抗がん剤治療を予定している高齢の固形がん患者においてCGAを経時的に実施し、実施可能性について検討しCGAは抗がん剤治療中に継続実施が可能と考えられた。また、CGA各項目のスコア、PSと生存期間との関連を探索的に検討すると、MMSEスコアとVES-13スコアについて年齢調整下で全生存期間と有意な関連を認めた。
(3)CGAを実施する対象者を選定するスクリーニングツールの開発を試み、G8を試行した。その結果G8は実施可能であり、あわせて十分なスクリーニング性能を有することが明らかとなった。
(4)高齢者化学療法患者を対象とした多施設臨床第Ⅲ試験においてCGAを実施し、予後や副作用の重篤性が予測可能かを評価する。臨床試験の登録を進め52例となった。併せてQOL評価を実施した。
(5)新規に悪性リンパ腫または多発性骨髄腫と診断された65歳以上のがん患者に対して、治療開始前に日常生活活動度、抑うつ、認知機能障害などを含む機能評価を行った。86名より有効データが得られ、頻度の高い問題として、日常生活活動度の低下(51%)、合併症(47%)、栄養状態(36%)、抑うつ(20%)などがあった。6評価領域のうち2領域以上に障害があった場合を脆弱性ありと定義した場合、52%の患者がそれに該当し、総合的機能評価を実施する重要性が示唆された。
(6)前年度までのカルテ調査では、治療方針の決定は癌種にかかわりなく保存的治療の65%は家族により決定されており、本人意向によるのは20%にとどまるという結果だった。今年度のアンケート調査の結果を加味すると、家族による治療方針の決定には、それまで家族に伝えてきた本人の希望が反映されていることが判明した。総合機能評価や寝たきり度、老年症候群の評価は今後担癌患者の在宅サポートを組み立てる上で重要なツールになると考えられる。
(7)日本において開発されたがん診療の質を測定する指標(QI:Quality Indicator)を用いて、患者年代別にQIの実施率を検討した。院内がん登録とDPCを連結可能に匿名化したデータを用いて解析を行った。治療や術後補助療法に関するQIでは、実施率は年代の上昇と共に著明に低下し、また有害事象の予防に関するQIも年代の上昇に伴い実施率は低下する傾向が認められた。高齢がん患者に対しての診療の質の改善のする余地がある可能性が示された。
(2)抗がん剤治療を予定している高齢の固形がん患者においてCGAを経時的に実施し、実施可能性について検討しCGAは抗がん剤治療中に継続実施が可能と考えられた。また、CGA各項目のスコア、PSと生存期間との関連を探索的に検討すると、MMSEスコアとVES-13スコアについて年齢調整下で全生存期間と有意な関連を認めた。
(3)CGAを実施する対象者を選定するスクリーニングツールの開発を試み、G8を試行した。その結果G8は実施可能であり、あわせて十分なスクリーニング性能を有することが明らかとなった。
(4)高齢者化学療法患者を対象とした多施設臨床第Ⅲ試験においてCGAを実施し、予後や副作用の重篤性が予測可能かを評価する。臨床試験の登録を進め52例となった。併せてQOL評価を実施した。
(5)新規に悪性リンパ腫または多発性骨髄腫と診断された65歳以上のがん患者に対して、治療開始前に日常生活活動度、抑うつ、認知機能障害などを含む機能評価を行った。86名より有効データが得られ、頻度の高い問題として、日常生活活動度の低下(51%)、合併症(47%)、栄養状態(36%)、抑うつ(20%)などがあった。6評価領域のうち2領域以上に障害があった場合を脆弱性ありと定義した場合、52%の患者がそれに該当し、総合的機能評価を実施する重要性が示唆された。
(6)前年度までのカルテ調査では、治療方針の決定は癌種にかかわりなく保存的治療の65%は家族により決定されており、本人意向によるのは20%にとどまるという結果だった。今年度のアンケート調査の結果を加味すると、家族による治療方針の決定には、それまで家族に伝えてきた本人の希望が反映されていることが判明した。総合機能評価や寝たきり度、老年症候群の評価は今後担癌患者の在宅サポートを組み立てる上で重要なツールになると考えられる。
(7)日本において開発されたがん診療の質を測定する指標(QI:Quality Indicator)を用いて、患者年代別にQIの実施率を検討した。院内がん登録とDPCを連結可能に匿名化したデータを用いて解析を行った。治療や術後補助療法に関するQIでは、実施率は年代の上昇と共に著明に低下し、また有害事象の予防に関するQIも年代の上昇に伴い実施率は低下する傾向が認められた。高齢がん患者に対しての診療の質の改善のする余地がある可能性が示された。
結論
実地診療においてもCGAを実施し、高齢者特有の問題に対応していくことが、高齢がん患者への医療やケアとして重要であると考えられた。しかしながら、多忙な実地診療においてCGAを全例に実施することは困難が予想され、効率的な方法の確立が望まれる。一方、高齢者がんの標準治療確立に向けては多くの課題があり、臨床試験におけるCGAの意義は明確とはいえない。臨床研究ポリシー策定を目指すべくJCOGと協力して研究体制を組織したので、今後は高齢者のがんを対象とした質の高い診療研究が推進されることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
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