肛門扁平上皮癌に対する新規化学放射線療法の確立 

文献情報

文献番号
201314010A
報告書区分
総括
研究課題名
肛門扁平上皮癌に対する新規化学放射線療法の確立 
課題番号
H23-がん臨床-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
濱口 哲弥(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 敏彦(山形県立中央病院)
  • 八岡 利昌(埼玉県立がんセンター)
  • 齋藤 典男(独立行政法人 国立がん研究センター東病院)
  • 正木 忠彦(杏林大学医学部)
  • 高橋 慶一(東京都立駒込病院)
  • 杉原 健一(国立大学法人東京医科歯科大学)
  • 佐藤 武郎(北里大学医学部)
  • 絹笠 祐介(静岡県立静岡がんセンター)
  • 小森 康司(愛知県がんセンター中央病院)
  • 能浦 真吾(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター)
  • 久保 義郎(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター)
  • 白水 和雄(久留米大学)
  • 猪股 雅史(国立大学法人大分大学)
  • 伊藤 芳紀(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 唐沢 克之(東京都立駒込病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 稀少疾患である肛門扁平上皮癌に対し、患者にとって利便性の高い治療であると期待できるS-1+MMC+RT療法が、標準治療である5-FU+MMC+RT療法と比べて同等以上の有効性と安全性を有するか否かを評価することで、新しい国内標準治療とできるかどうかを検証する。
研究方法
【対象】
臨床病期II/III期肛門管扁平上皮癌患者を対象とする。年齢は20歳以上80歳以下で、ECOG PSは0,1、肛門癌に対する治療歴がなく、他のがん種に対する治療を含めて化学療法・放射線療法の既往がなく、十分な経口摂取が可能であり、主要臓器機能が保たれていることとした。試験参加について患者本人から同意を得る。
【治療】
放射線治療開始と同時に、以下の化学療法および放射線療法を行う。
S-1: 80mg/m2/day 1日2回内服、day 1-14, day 29-42
MMC: 10mg/m2 急速静注、day 1, 29
RT: 1回1.8Gy, 1日1回、週5日、計33回、総線量59.4Gy
【評価項目】
Primary endpoint: 3 年無イベント生存割合
Secondary endpoints: 完全奏効割合、無増悪生存期間、全生存期間、有害事象発生割合
また放射線治療の品質管理(QA)・品質保証活動(QC)も並行して行う。
結果と考察
 平成23年12月1日より第II相部分の症例集積を開始し、参加施設43施設にて予定症例数は65例である。肛門管扁平上皮癌は、国内では年間200例たらずの発症数であるが、これまで月1-2例のペースで登録が進み計48例となった。登録施設も北は札幌厚生病院から、西は高知医療センターと全国から登録が進んでいるところである。
 2月28日までに登録された45例の患者背景は、年齢中央値62歳(範囲:33-78歳)、性別:男/女=6/39名、PS:0/1=37/8名であった。CRFが回収された42例の集計では、Stage II/IIIA/IIIB=16/7/19(名)と、今回、本試験のプライマリエンドポイントにおける比較の対象とするRTOG-9811試験に比べ、当試験に登録された患者の方が高齢かつstageも進んでいる傾向にあった。
 これまでにプロトコール治療が終了した36例におけるプロトコール治療完遂割合は97%と良好であった。また有害事象については、Grade 3/4の白血球減少69.7%, 好中球減少42.4%、放射線性皮膚炎33.3%に認め、現時点ではS-1+MMC併用放射線化学療法はtolerableといえる内容であった。尚、治療関連死およびプロトコール治療中及び最終プロトコール治療日から30日以内の死亡は認めていない。
 有効性評価は、中央判定にてCR確定が19例中17例と良好な成績であった。またNon-CRとなった1例については救済手術が施行されたが、病理結果はpathological CRであった。
 放射線治療の品質管理を36例で完了し、「遵守」83.3%、「逸脱」16.7%、「違反」0であった。逸脱の内容はいずれも臨床的には許容できる範囲内であり、本結果は登録施設へのフィードバックし、問題点があれば、参加施設のメーリングリストで情報共有している。
 本臨床試験は、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言等の国際的倫理原則に従う。またJCOGのプロトコール審査委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会、放射線治療委員会などによる第三者的監視を受けることを通じて、科学性と倫理性の確保に努める。
結論
 平成23年度に決定した推奨用量に準じて、第II相部分の症例集積を継続したところ、症例集積ペースは当初の予想を上回る月1-2例と順調であった。登録患者は比較的高齢かつstageも進んでいる傾向にあるが、現時点で薬物有害反応はtolerableであり、有効性評価も19例中17例でCRと良好であった。また放射線治療の品質管理をおこなったところ16.7%に逸脱がみられたが、いずれも臨床的に許容できる範囲内であった。平成26年9月に中間解析を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201314010B
報告書区分
総合
研究課題名
肛門扁平上皮癌に対する新規化学放射線療法の確立 
課題番号
H23-がん臨床-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
濱口 哲弥(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 敏彦(山形県立中央病院)
  • 八岡 利昌(埼玉県立がんセンター)
  • 齋藤 典男(独立行政法人 国立がん研究センター東病院)
  • 正木 忠彦(杏林大学)
  • 高橋 慶一(東京都立駒込病院)
  • 長谷川 博俊(慶応義塾大学)
  • 杉原 健一(国立大学法人東京医科歯科大学)
  • 佐藤 武郎(北里大学)
  • 絹笠 祐介(静岡県立静岡がんセンター)
  • 金光 幸秀(愛知県がんセンター中央病院)
  • 小森 康司(愛知県がんセンター中央病院)
  • 山口 高史(国立病院機構京都医療センター)
  • 大植 雅之(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター)
  • 能浦 真吾(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター)
  • 久保 義郎(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター)
  • 白水 和雄(久留米大学)
  • 北野 正剛(国立大学法人大分大学)
  • 猪股 雅史(国立大学法人大分大学)
  • 伊藤 芳紀(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 唐沢 克之(東京都立駒込病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 稀少疾患である肛門扁平上皮癌に対し、患者にとって利便性の高い治療であると期待できるS-1+MMC+RT療法が、標準治療である5-FU+MMC+RT療法と比べて同等以上の有効性と安全性を有するか否かを評価することで、新しい国内標準治療とできるかどうかを検証する。
研究方法
放射線治療開始と同時に、以下の化学療法および放射線療法を行う。
S-1: 80mg/m2/day 1日2回内服、day 1-14, day 29-42
MMC: 10mg/m2 急速静注、day 1, 29
RT: 1回1.8Gy, 1日1回、週5日、計33回、総線量59.4Gy
【評価項目】
第I相部分:S-1とMitomycin C(MMC)と放射線照射同時併用療法の最大耐用量)、用量制限毒性を推定し、推奨用量を決定する。
第II相部分:
Primary endpoint: 3 年無イベント生存割合
Secondary endpoints: 完全奏効割合、無増悪生存期間、全生存期間、有害事象発生割合
また放射線治療の品質管理(QA)・品質保証活動(QC)も並行して行う。
結果と考察
 第I相部分において用量制限毒性(DLT)は発熱性好中球減少であり、第II相部分の推奨投与量はS-1 80mg/m2/dayと決定した。平成23年12月1日より第II相部分の登録を開始し、平成26年3月31日時点で登録数は48例(第I相:10例、第II相:38例)であり、参加施設43施設にて予定症例数は65例である。肛門管扁平上皮癌は、国内では年間200例たらずの発症数であるが、北は札幌厚生病院から、西は高知医療センターと全国からは月1.3名と、当初の予定の月0.8名ペースを上回る登録が得られている。
 2月28日までに登録された45例の患者背景は、年齢中央値62歳(範囲:33-78歳)、性別:男/女=6/39名、PS:0/1=37/8名であった。CRFが回収された42例の集計では、Stage II/IIIA/IIIB=16/7/19(名)と、今回、本試験のプライマリエンドポイントにおける比較の対象とするRTOG-9811試験に比べ、当試験に登録された患者の方が高齢かつstageも進んでいる傾向にあった。
 これまでにプロトコール治療が終了した36例におけるプロトコール治療完遂割合は97%と良好であった。また有害事象については、Grade 3/4の白血球減少69.7%, 好中球減少42.4%、放射線性皮膚炎33.3%に認め、現時点ではS-1+MMC併用放射線化学療法はtolerableといえる内容であった。尚、治療関連死およびプロトコール治療中及び最終プロトコール治療日から30日以内の死亡は認めていない。
 有効性評価は、中央判定にてCR確定が19例中17例と良好な成績であった。またNon-CRとなった1例については救済手術が施行されたが、病理結果はpathological CRであった。
 放射線治療の品質管理を36例で完了し、「遵守」83.3%、「逸脱」16.7%、「違反」0であった。逸脱の内容はいずれも臨床的には許容できる範囲内であり、本結果は登録施設へのフィードバックし、問題点があれば、参加施設のメーリングリストで情報共有している。
 本臨床試験は、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言等の国際的倫理原則に従う。またJCOGのプロトコール審査委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会、放射線治療委員会などによる第三者的監視を受けることを通じて、科学性と倫理性の確保に努める
登録施設別には、北は札幌厚生病院、西は高知医療センターと”All Japan”で登録が進んでいる。
結論
 平成23年度に決定した推奨用量に準じて、平成24年度より第II相部分を開始し、症例集積ペースは当初の予想を上回る月1.3例と順調であった。登録患者は比較的高齢かつstageも進んでいる傾向にあるが、現時点で薬物有害反応はtolerableであり、有効性評価も19例中17例でCRと良好であった。また放射線治療の品質管理をおこなったところ16.7%に逸脱がみられたが、いずれも臨床的に許容できる範囲内であった。平成26年9月に中間解析を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、稀少疾患である肛門管扁平上皮癌のうち臨床病期II期およびIII期の症例に対して、患者にとって利便性の高い治療であると期待できるS-1+MMC併用放射線療法が、標準治療である5-FU+MMC併用放射線療法と比べて同等以上の有効性と安全性を有するか否かを評価することで、新しい国内標準治療とみなしうるかを検証する国内初の前向き臨床試験である。平成27年3月27日に69例目が登録され完了した。
臨床的観点からの成果
第Ⅰ相部分により推奨用量はS-1 80mg/m2/day day1-14, day29-42, MMC 10mg/m2 day 1, 29と決定した。39例におけるプロトコール治療完遂割合は97%と良好であり、有害事象は、Grade 3/4の白血球減少64.9%, 好中球減少40.5%、放射線性皮膚炎19.4%に認めfeasibleといえる内容であった。平成27年1月に中間解析が行われ「試験継続」が承認された。
ガイドライン等の開発
これまで肛門管扁平上皮癌は化学放射線療法により肛門温存でき治癒可能な疾患であることがあまり知られておらず外科切除が行われていた施設もあったが、all Japanで行っている本研究により化学放射線療法が標準治療であることが認知されてきている。
その他行政的観点からの成果
肛門管扁平上皮癌は稀少癌であり、国内では年間200例たらずの発症数である。本研究ではこれまで月1-2例(1.3名/月)のペースで登録が進み計48例となった。登録施設も北は札幌厚生病院から、西は久留米大学と全国から登録が進んでいる。昨今、稀少癌の臨床試験の体制整備の重要性が増してきているが、本研究は稀少癌の臨床試験のモデルとなりうると考えている。
その他のインパクト
肛門管癌の疾患概要や治療に関する重要な情報を、患者や一般の医療者向けに情報提供できるよう、当研究のホームページを準備中である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takashia A, Shimada Y, Hamaguchi T, et al.
A phase II trial of chemoradiotherapy concurrent with S-1 plus Mitomycin C in patients with clinical stage II/III squamous cell carcinoma of anal canal (JCOG0903: SMART-AC).
Jpn J Clin Oncol , 41 (5) , 713-717  (2011)
10.1093/jjco/hyr028

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2015-09-02

収支報告書

文献番号
201314010Z