非治癒因子を有する進行胃癌に対する胃原発巣切除の意義に関する国際共同研究 

文献情報

文献番号
201314003A
報告書区分
総括
研究課題名
非治癒因子を有する進行胃癌に対する胃原発巣切除の意義に関する国際共同研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
辻仲 利政(市立貝塚病院 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 栗田 啓(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター)
  • 木下 敬弘(独立行政法人 国立がん研究センター東病院)
  • 寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター)
  • 木村 豊(地方独立行政法人堺市立病院機構市立堺病院)
  • 津田 政広(兵庫県立がんセンター)
  • 畑 啓昭(独立行政法人国立病院機構 京都医療センター)
  • 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 田村 茂行(独立行政法人労働者健康福祉機構 関西労災病院)
  • 今本 治彦(近畿大学医学部付属病院)
  • 山上 裕機(和歌山県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治癒切除不能な進行胃がんに対する減量手術の意義は、最も科学的に信頼できるランダム化比較第3相試験により検証する必要がある。
本研究は、減量手術の意義を検証する世界で始めてのランダム化比較第3相試験であり、JCOG初の国際共同試験として行われる。
研究方法
JCOGプロトコール(JCOG0705)に記載された方法に従って研究は行われる。本試験の対象は、肝転移(H1)、腹膜播種(P1)、#16a1/b2大動脈周囲リンパ節転移(M1)の非治癒因子のうち1つのみを有する進行胃癌患者である。
治療計画として、化学療法単独群(A群)では登録後14日以内にS―1+CDDPによる化学療法、減量手術群(B群)では登録後21日以内に減量手術を行いその後S―1+CDDPによる術後化学療法を開始する。B群で行う減量手術は、開腹による胃切除およびD1郭清を原則とし、完全なD2郭清や他臓器の合併切除は許容しない。本試験の主要評価項目は生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間および有害事象発生割合とした。登録期間4年、追跡期間2年とし、必要症例数は両群合計330名である。165例登録された時点で、第1回の中間解析を行うこととした。
結果と考察
平成25年9月までの全登録症例数175例;日本95例であり、韓国80例(シンガポールからの1例を含む)である。平成25年5月までの全登録症例164例を対象として、9月14日第1回の中間解析を行った。その結果、COG効果・安全性評価委員会から試験の早期中止が勧告された。理由は、試験治療群(減量手術群)の有害事象発生割合が標準治療群(化学療法単独群)より高いにもかかわらず、試験治療群の生存曲線が標準治療群を下回っており、最終解析時に統計的に有意に試験治療の優越性が示される可能性が低かったためである。中止勧告に従って、両国の研究責任者が試験中止を決定した。非治癒因子が1つのみの治癒切除不能進行胃癌に対しては化学療法を行うべきであるとの結論が得られた。詳細な解析により、下部胃癌に対して減量的幽門側胃切除術を行うことが有用である可能性が示唆されたが、その検証は今後の研究に委ねられる。
本研究を日韓国際共同研究として行うことで、迅速な症例登録が得られ、結果が共有された。また、国別の背景因子の異なりも明らかとなった。本研究の成果と反省を基盤にして、胃癌に関する様々な共同研究をさらに展開することが期待される。
結論
非治癒因子を有する進行胃癌患者に対しては無益な外科切除を行うことなく、すみやかに化学療法を施行することが標準治療として推奨される。この結果に基づき、将来的に治療ガイドラインが改訂される見込みである。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201314003B
報告書区分
総合
研究課題名
非治癒因子を有する進行胃癌に対する胃原発巣切除の意義に関する国際共同研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
辻仲 利政(市立貝塚病院 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 栗田 啓(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター)
  • 木下 敬弘(独立行政法人 国立がん研究センター東病院)
  • 寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター)
  • 木村 豊(地方独立行政法人堺市立病院機構市立堺病院)
  • 津田 政広(兵庫県立がんセンター)
  • 畑 啓昭(独立行政法人国立病院機構 京都医療センター)
  • 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 田村 茂行(独立行政法人労働者健康福祉機構 関西労災病院)
  • 今本 治彦(近畿大学医学部付属病院)
  • 山上 裕機(和歌山県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治癒切除不能な進行胃がんに対する減量手術の意義は、最も科学的に信頼できるランダム化比較第3相試験により検証する必要がある。
本研究は、減量手術の意義を検証する世界で始めてのランダム化比較第3相試験であり、JCOG初の国際共同試験として行われる。
研究方法
JCOGプロトコール(JCOG0705)に記載された方法に従って研究は行われる。本試験の対象は、肝転移(H1)、腹膜播種(P1)、#16a1/b2大動脈周囲リンパ節転移(M1)の非治癒因子のうち1つのみを有する進行胃癌患者である。
治療計画として、化学療法単独群(A群)では登録後14日以内にS―1+CDDPによる化学療法、減量手術群(B群)では登録後21日以内に減量手術を行いその後S―1+CDDPによる術後化学療法を開始する。B群で行う減量手術は、開腹による胃切除およびD1郭清を原則とし、完全なD2郭清や他臓器の合併切除は許容しない。本試験の主要評価項目は生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間および有害事象発生割合とした。登録期間4年、追跡期間2年とし、必要症例数は両群合計330名である。165例登録された時点で、第1回の中間解析を行うこととした。
結果と考察
平成25年9月までの全登録症例数175例;日本95例であり、韓国80例(シンガポールからの1例を含む)である。平成25年5月までの全登録症例164例を対象として、9月14日第1回の中間解析を行った。その結果、COG効果・安全性評価委員会から試験の早期中止が勧告された。理由は、試験治療群(減量手術群)の有害事象発生割合が標準治療群(化学療法単独群)より高いにもかかわらず、試験治療群の生存曲線が標準治療群を下回っており、最終解析時に統計的に有意に試験治療の優越性が示される可能性が低かったためである。中止勧告に従って、両国の研究責任者が試験中止を決定した。非治癒因子が1つのみの治癒切除不能進行胃癌に対しては化学療法を行うべきであるとの結論が得られた。詳細な解析により、下部胃癌に対して減量的幽門側胃切除術を行うことが有用である可能性が示唆されたが、その検証は今後の研究に委ねられる。
本研究を日韓国際共同研究として行うことで、迅速な症例登録が得られ、結果が共有された。また、国別の背景因子の異なりも明らかとなった。本研究の成果と反省を基盤にして、胃癌に関する様々な共同研究をさらに展開することが期待される。
結論
非治癒因子を有する進行胃癌患者に対しては無益な外科切除を行うことなく、すみやかに化学療法を施行することが標準治療として推奨される。この結果に基づき、将来的に治療ガイドラインが改訂される見込みである。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201314003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
JCOG初の国際共同研究として開始し、中間解析結果で試験中止とはなったが、確かな結論が得られたことは大きな研究成果である。日韓両国の研究者が国際共同試験を体験したことは今後の糧となった。両国のデータセンターにも、国際共同研究を行う上で貴重な経験と教訓が得られた。非治癒因子を有する進行胃癌に対する減量的胃切除の意義を問う世界初の第3相試験が完了したことは、国際的にもインパクトが高い。本試験の対象に対してまず化学療法を施行することが標準となる。本試験結果に基づいて、今後の新たな治療開発が行われる。
臨床的観点からの成果
標準治療が化学療法であることが立証され、不利益な手術を受ける患者が少なくなることが期待される。世界で減量的胃切除がまだ一般治療として行われている現状が、早急に改善される契機となる。減量手術群で化学療法の有害事象発生が多いこと、胃癌の占拠部位により治療効果が異なること、日韓で患者背景と治療効果の差が認められたこと、など副次的に多くの情報が得られた。不適格例および経過不明例が韓国に頻発しており、試験の質の改善が必要なことが指摘された。今後の国際共同研究の在り方について多くの課題が得られた。
ガイドライン等の開発
2014年3月20日日本胃癌学会総会コンセンサス会議において、本研究結果を報告した。胃癌治療の携わる多くの医師に本結果が周知された。
現在のガイドラインにおいて、「減量手術の明らかなエビデンスはなく、臨床研究の位置付けである」と記載されているが、本研究結果によりガイドライン改訂が行われる予定である。
2018年1月に改訂された「胃癌治療ガイドライン 第5版」において、本試験結果により「減量手術の延命効果は認められず、これを行わないことが強く推奨される」と明記された。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
2014年3月20日日本胃癌学会総会に併せて記者会見を行い、本研究結果を報告した。代表的な医学系新聞であるメディカルトリビューン誌2014年4月10日号の一面に本研究結果が掲載された。その他、医学系情報誌にも本給結果の要約が掲載される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
31件
学会発表(国内学会)
88件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujitani K, Yang H-K, Mizushima J, et al.
Gastrectomy plus chemotherapy versus chemotherapy alone for advanced gastric cancer with a single non-curable factor (REGATTA): a phase 3, randomised controlled trial.
Lanccet Oncol , 17 , 309-318  (2016)
org/10.1016/S1470-2045(15)00553-7

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-06-04

収支報告書

文献番号
201314003Z