文献情報
文献番号
201313070A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性肺がんに対する治療応答群及び術後再発危険度群捕捉のための新規バイオマーカーの同定
課題番号
H25-3次がん-若手-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白石 航也(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦における肺がんはがん死因第一位を占める難治がんであり、罹患数は男女ともに年々増加傾向にある。しかし現状では肺がんの発症や再発を予防する手段がなく、予後や治療効果の予測因子の同定が望まれている。これまでにがん細胞の遺伝子変異・発現動態を中心とした研究が行われてきたが、予後や治療効果の予測は実現できていない。その理由として、他の主要因が存在することが考えられる。本研究では、先行研究でほとんど解析されてこなかった宿主の遺伝要因(遺伝子多型)とがん細胞の体細胞変化との関連を明らかにすることで、術後再発や治療応答性に関わる遺伝子群を同定し、個別化予防・診療のためのバイオマーカー構築に資する基盤情報を提供することを目的とする。
研究方法
2000年~2008年において国立がん研究センター中央病院でプラチナダブレット治療を受けた非小細胞肺がん686症例から、RECISTによる治療効果判定が可能であった640症例をeligible caseとして選出した (Shiraishi et al., J. Clin. Oncol. 2010)。さらに治療効果判定がなされた643例の内、化学療法施行前に原発肺腺がんに対して外科的手術を受けていた103例を解析対象とした。40例については凍結組織を用いたmiRNAマイクロアレー解析と63例のFFPEを用いたTaqMan法による解析を行った。術後再発予後解析については、1997年~2008年において国立がん研究センター中央病院で外科的治療を受けた症例の内、肉眼でかつ病理学的に完全切除されたstage I-IIの早期肺腺がん症例1054例を用いた全ゲノム関連解析を行った。
結果と考察
本研究では、がん組織並びに胚細胞を用いて化学療法応答性並びに術後予後に関わる因子の探索を行った。化学療法応答性については、2個のmicroRNAが治療応答性に関わる可能性を示したことから、培養細胞を用いた薬剤感受性試験を検討した。しかし、薬剤感受性を評価するためコロニーフォーメーションアッセイを用いて評価を試みたが、薬剤を添加することでコロニーの形成能やその評価が難しく、現在細胞実験系の構築をあきらめ、現在までの結果だけで論文投稿を進めている。今後は、別の培養細胞を用いた評価系を用いたmicroRNAの標的となる遺伝子の同定を行うことで、本研究結果は分子標的となるようなシーズの提供に寄与できると考えられる。
術後予後解析については、1つの遺伝子多型について術後再発リスクと関連することを見出した。さらなる術後予後に関わる遺伝子多型の同定を目的に、Whole-genome imputationを用いた術後予後解析を愛知県がんセンターとの共同研究で進めており、遺伝子多型と症例の数を増やすことでさらなる感受性遺伝子座の同定を目指す。一方で、肺がん組織における遺伝子異常についても解析を進めており、がんの特性(例えばEGFR変異やKRAS変異など)も加味して検討することで、より精度の高い術後予後に関わるバイオマーカーの同定につなげ、将来個別化医療の推進に寄与できると考えられる。
術後予後解析については、1つの遺伝子多型について術後再発リスクと関連することを見出した。さらなる術後予後に関わる遺伝子多型の同定を目的に、Whole-genome imputationを用いた術後予後解析を愛知県がんセンターとの共同研究で進めており、遺伝子多型と症例の数を増やすことでさらなる感受性遺伝子座の同定を目指す。一方で、肺がん組織における遺伝子異常についても解析を進めており、がんの特性(例えばEGFR変異やKRAS変異など)も加味して検討することで、より精度の高い術後予後に関わるバイオマーカーの同定につなげ、将来個別化医療の推進に寄与できると考えられる。
結論
本研究により、治療応答性に関わる2個のmicroRNAを同定した。また術後再発予後に関わると考えられる1SNPを同定するに至った。これらの結果が他施設での同様の評価が得られるかどうかを今後さらに検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
-