呼吸移動を伴う胸部病変に対する先進的強度変調回転照射に関する研究

文献情報

文献番号
201313068A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸移動を伴う胸部病変に対する先進的強度変調回転照射に関する研究
課題番号
H24-3次がん-若手-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 成世(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 小口 正彦(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 小塚 拓洋(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 中島 大(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 伊藤 康(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 北村 望(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 五月女 達子(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 大友 結子(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 上原 隆三(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 松林 史泰(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 高橋 良(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,392,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は呼吸移動を伴う胸部病変において、強度変調回転照射(VMAT)の最適な治療計画から日々の投与線量の評価までの一連の手法を開発し、システムを構築することである。
研究方法
呼吸状態による投与線量の変化がどのようなパラメータに関係するか検討した。この検討は仮想的に呼吸状態を変化させたVMAT照射を治療計画装置上に再現させて行った。また昨年度に引き続き、過去に治療を行った肺癌患者を対象に線量体積ヒストグラム(DVH)の解析を行い線量処方方法の検討を行った。VMAT照射中の腫瘍位置を検出するため、前年度の検討で明らかとなった腫瘍位置検出法の問題点を改善した。腫瘍位置検出法と前年度構築した線量再構成法を統合し、照射中の腫瘍位置を基にした4次元線量再構成システムを構築した。胸部動体ファントムを用い、腫瘍の中心線量と腫瘍の中心を通る2次元断面の線量分布の実測値と比較することで線量再構成精度を評価した。
結果と考察
自由呼吸下のVMAT照射では、平均リーフギャップ幅とVMAT照射中に生じる呼吸回数が投与線量の変化に強く影響することが分かった。また、平均リーフギャップ幅と呼吸回数を変数にとることにより、投与線量の変化量を予測する近似式を導くことができた。DVH解析の結果、アイソセンタ線量と比較してPTVのD50線量が最もばらつきが少なく、平均値も2~3%高い程度で安定していた。VMATにおける線量処方方法の有力な候補として考えられた。VMAT照射中の腫瘍位置は±1mmの精度で検出することが可能であった。腫瘍中心における線量再構成値は±2%以内で実測と一致した。2次元断面の線量分布においても線量誤差3%、位置誤差3 mmを許容範囲としたガンマ解析のPass Rateは平均89.6%を示し、実測と良く一致する線量再構成が行えていると確認できた。
結論
呼吸状態による投与線量の変化に関連するパラメータを求められた。これにより、事前に投与線量の変化量を見積もることが可能だと分かった。4次元に対応した線量再構成法の一連のシステムを構築し、ファントム実験において実測と一致する結果が得られていると分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201313068B
報告書区分
総合
研究課題名
呼吸移動を伴う胸部病変に対する先進的強度変調回転照射に関する研究
課題番号
H24-3次がん-若手-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 成世(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 小口 正彦(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 小塚 拓洋(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 中島 大(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 伊藤 康(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 北村 望(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 五月女 達子(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 大友 結子(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 上原 隆三(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 松林 史泰(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
  • 高橋 良(公益財団法人がん研究会有明病院 放射線治療部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は呼吸移動を伴う胸部病変において、強度変調回転照射(VMAT)の最適な治療計画から日々の投与線量の評価までの一連の手法を開発し、システムを構築することである。
研究方法
呼吸状態を変化させた際に生じる投与線量の変化量とVMATプランのパラメータの関係性を求めた。過去に治療を行った肺癌患者を対象に線量体積ヒストグラム(DVH)の解析を行い、線量処方方法や線量制約などの最適化計算に必要となる情報の検討を行った。電子照合装置(EPID)の画像から正規化相互相関を用いて腫瘍陰影をトラッキングし、治療中の腫瘍位置が検出できるシステムを構築した。VMAT照射時では多分割コリメータ(MLC)と腫瘍陰影が重なってしまい、トラッキングできない状況も起こりうる。このような状況を回避するため、自動でEPID画像上のMLC領域を抽出し、腫瘍と重なる場合にはRPM(Real-time position management)systemで得られる呼吸波形から腫瘍位置を予測させるようにした。実際に投与された放射線量が確認できる線量再構成法を構築した。治療中の腫瘍位置とVMAT照射時の機器動作記録であるログデータを使用し、4次元CT画像を用いて治療計画装置上で線量分布を再計算させる手法を用いた。腫瘍位置取得法と統合することにより、実際の腫瘍位置を基にした4次元線量再構成法を構築した。
結果と考察
同一VMATプランにおいても呼吸状態に応じて投与線量は8%から3%まで変化した。また、VMATプランによっては呼吸回数が同じでも線量変化は8%から4%にまで変化した。この投与線量の変化はリーフギャップ幅及びVMAT照射中に生じる呼吸回数に依存しており、これらを変数とした近似式を用いて予測できると分かった。DVH解析の結果、アイソセンタ線量と比較し、計画標的体積のD50が最も安定していることが分かった。また、肺の線量制約に関してもGr2以上の放射線肺臓炎が生じた線量の閾値を求めることができた。VMAT照射中の腫瘍位置はファントム実験においては±1mmの精度で検出することが可能であった。腫瘍中心における線量再構成値は±2%以内で実測と一致した。2次元断面の線量分布においても線量誤差3%、位置誤差3 mmを許容範囲としたガンマ解析のPass Rateは平均89.6%を示し、実測と良く一致する線量再構成が行えていると確認できた。
結論
呼吸状態による投与線量の変化に関連するパラメータを求めることができた。これにより事前に変化量を見積もることが可能だと分かった。4次元に対応した線量再構成法の一連のシステムを構築し、ファントム実験において実測と一致する結果が得られていると確認できた。日々の患者投与線量が把握できることにより、万が一投与線量に誤差が生じた場合においても、誤差の追及ができプランを修正することも可能になると考えられる。本研究により、安全な高精度放射線治療の提供、実投与線量を基とした治療効果判定、放射線治療の技術水準の向上といった成果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313068C

成果

専門的・学術的観点からの成果
呼吸移動を伴う胸部病変に対するVMATでは照射時の呼吸状態に依って投与線量が変化し、変化量はVMATプランのパラメータや患者呼吸回数に関連することが分かった。また、実際の投与線量は従来推定することが困難であったが、本研究で構築した4次元線量再構成法を用いることによって確認できることが示唆された。
臨床的観点からの成果
投与線量の変化に影響するパラメータが明らかになったことにより、患者個々の呼吸状態に応じた最適な放射線治療が提供できる可能性が示された。線量再構成法を用いて投与線量を確認することにより、治療効果判定や副作用の発生率を実投与線量を基にして評価することが可能となる。さらに、治療期間中の投与線量を確認していくことで、万一投与線量に過不足が生じた場合にも、その都度治療計画を修正することで最終的に目的とする線量を患者に投与することが可能となる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
本研究により、安全な高精度放射線治療、実投与線量を基とした治療効果判定、放射線治療の技術水準の向上といった成果が得られる。また、線量再構成では実際の照射条件を再現するため、照射事故やケアレスミスを早期に発見することに繋がる。すなわち、厚生労働省の施策の1つである医療安全対策に貢献する成果だと考えられる。
その他のインパクト
呼吸移動を伴う胸部病変に対応した4次元線量再構成法を構築し国内で初めて精度評価を行った。本研究成果は平成23年9月に開催された日本医学物理学会学術大会において受賞された。また平成23年10月にアメリカで開催されたASTRO's Annual Meetingにおいても発表され、国内外の研究者や医療関係者に公表された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松林史泰、橋本成世、上原隆三、他
呼吸性移動を伴う肺癌に対するVMATにおける適切な線量計算パラメータ決定方法
日本放射線技術学会雑誌 , 71 (4) , 301-307  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-06

収支報告書

文献番号
201313068Z