文献情報
文献番号
201313067A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこ規制枠組条約に基づいた有害化学物質の規制によるたばこ対策研究
課題番号
H24-3次がん-若手-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
- 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
- 井埜 利博(群馬パース大学 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2011年のLancet「日本特集号」の中で,日本の予防可能な最大の危険因子は,「喫煙」であると示された。現在,我が国は,国際条約である「たばこ規制枠組条約(FCTC)」を批准し,国内法として健康日本21,健康増進法,がん対策基本法に基づいてたばこ対策を進めている。しかし,我が国のたばこ製品への規制は,対策が進んでいる諸外国と比較すると遅れており,「メンソールカプセルたばこ」などの新規製品が販売される状況にある。2013年8月には無煙たばこのSNUS,同12月には,たばこ葉を加熱し蒸気成分を吸い込む「Ploom」が販売されるなど,新製品の発売時に有害化学物質のガイドラインは設けられてはいない。さらに,たばこ製品のたばこ葉と煙中には,喫煙者と受動喫煙者にとって有害な成分が含有されているが,これらの有害化学物質の規制の検討についても一切行われていない。以上の課題を解決する方法として,FCTCの第9条「たばこ製品の含有物に関する規制」と第10条「たばこ製品についての情報開示に関する規制」に基づいて,研究・対策を実行することが有効とされている。これにより,たばこ製品の有害化学物質の規制・含有量を含めた情報開示が行われ,たばこ製品の有害性の評価,喫煙者・受動喫煙者の健康影響の低減が可能になり,新規たばこ製品の抑制になることも期待される。FCTC締約国会議(COP)は,FCTCの9,10条を推進するためには,まず,たばこ製品中の有害化学物質を分析する手法(標準作業手順書:SOP)を確立することが急務であるとした。そこで本研究は、世界保健機関(WHO)が組織するたばこ研究室ネットワーク(WHO TobLabNet)に参画し,主流煙中ベンゾ[a]ピレン,カルボニル類、揮発性有機化合物及びたばこ葉中グリセロール類のSOP作成し,国産たばこ製品への適用を目的とした。
研究方法
今年度,本研究班は,国内で唯一WHOたばこ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参加し,たばこ葉中グリセロール類のラウンドロビン研究を行った。TobLabNetでの活動は高く評価され,カルボニル類と揮発性有機化合物(VOC)の同時分析法を開発した。また,たばこ製品中の自然放射性核種のポロニウム-210(Po-210)の分析を行った。
結果と考察
TobLabNetと共にたばこ葉中グリセロール類のラウンドロビン研究を行った。合わせて、国産たばこ銘柄中のたばこ葉中グリセロール類と主流煙中のカルボニル類とVOC類の分析を行った。これらの成果を2013年7月にジュネーブで行われた技術部会で報告し,続いて2014年3月には,オランダRIVMで「主流煙中のカルボニル類及びVOC分析法の技術研修会」が本研究班とTobLabNetの合同開催で行われた(US-CDC,China-CDC,Netherlands-RIVM,Canada-Labstatなど)。現在,TobLabNetとともに本法の改良を行い,SOP草案を作成している。主流煙カルボニル類及びVOC類はHCI法で捕集した量がISO法で捕集した値よりも高かった。また,たばこ製品中の自然放射性核種のポロニウム-210(Po-210)の分析を行った。海外の先行研究と比較すると我が国たばこ銘柄1本あたりのPo-210量が高いことが分かった。最後に,主流煙及び副流煙中のPo-210分析法の確立を行った。副流煙については,更なる改良が必要であった。
結論
たばこ産業は,毎年,新しいたばこ製品を次々と市場に発表している。しかしながら,有害化学物質の発生源となるたばこ製品の規制対策は進んでいない。FCTCの第9条「たばこ製品の含有物に関する規制」と第10条「たばこ製品についての情報開示に関する規制」に基づいて,研究・対策を実行することが有効である。今後,国内で最大の健康阻害要因であるたばこに関して,その有害性成分の調査研究を継続して積み重ねていくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
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