文献情報
文献番号
201313055A
報告書区分
総括
研究課題名
NCDを用いた胸腔鏡による肺癌切除手術の実態調査
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-3次がん-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 丘(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 横井 香平(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 遠藤 俊輔(自治医科大学 大学院医学研究科)
- 中島 淳(東京大学 大学院医学系研究科)
- 千田 雅之(獨協医科大学 医学部)
- 奥村 明之進(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 伊達 洋至(京都大学 大学院医学研究科)
- 岩崎 昭憲(福岡大学 大学院医学研究科)
- 横見瀬 裕保(香川大学 医学部)
- 佐藤 雅美(鹿児島大学 医歯学総合研究科)
- 宮田 裕章(東京大学 大学院医学系研究科)
- 池田 徳彦(東京医科大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は2011年から全国規模で外科手術のデータ入力を行っているNational Clinical Database(NCD)を利用して、肺癌に対する胸腔鏡下手術の適応や現状、アウトカムなどを明らかにし、その標準化や均てん化のための提言を行うことを目的とする。本邦の年間33000件の肺癌手術のうちの60%が胸腔鏡下手術とされるが、人口の高齢化と早期癌の増加の傾向によりこの比率は更に高まるものと考える。しかし、胸腔鏡下肺癌手術の適応や手技は必ずしも統一化されておらず、治療成績の客観的な評価が困難といえる。本研究ではNCDの呼吸器外科部門に他の調査すべき専門的な項目と並んで胸腔鏡下肺癌手術に関する調査項目を設定し、2014年から全国規模で前向き入力を開始して、集計データから本医療の我が国での実施状況、成績を把握することを目的とする。
研究方法
NCDは2011年1月1日に外科関連の専門医制度との連携の下で2500以上の参加施設,3800以上の診療科のネットワークにより構成され,年間に100万例以上の症例データが登録されている。呼吸器外科領域は従来、基本項目(患者の基本情報、病名、術式など13項目)のみデータ入力していたが、2013年度には臨床研究や医療評価に関する詳細項目を設定し、2014年度より全国的に詳細項目のデータ入力を開始した。翌年に1年間で入力された実証データの集計、分析を行い、我が国における肺癌手術、特に胸腔鏡下手術の実態、特に適応、手術方法、アウトカムの現状を明らかにする。すなわち病期、切開創の大きさ、胸腔鏡の利用度、自動縫合器の利用状況、合併症の有無、種類などの項目を入力することにより、我が国における低侵襲肺癌手術の実施状況が明らかになる。本邦の肺癌手術は年間33000件程度であり、このうちの60%が胸腔鏡手術であるので科学的な解析を行うには十分なデータを集積することが可能である。解析結果より我が国の胸腔鏡下肺癌手術の実状、本医療の水準評価や標準化、ガイドライン策定とともに、得られたデータを多職種で分析することにより、安全な手術方法の検討や併発症を有する患者のリスク評価、医療の地域格差などに関する検討も行う予定である。
結果と考察
呼吸器外科領域はNCD基本項目の入力率は良好であり、日本呼吸器外科学会での検討で更に専門的な項目の入力も十分可能であるとの結論に至った。年々施行実績が増加している胸腔鏡下肺癌手術の科学的な調査が必要と考え、これに関係する臨床研究や医療評価の詳細項目を2013年度に設定し、複数の施設でテスト入力も行い、システムは円滑に作動することを確認した。2014年度より全国的にデータ入力が開始され、翌年に1年間で入力された実証データの集計、分析を行い、我が国における肺癌手術、特に胸腔鏡下手術の実態、特に適応、手術方法、アウトカムの現状を明らかにする。すなわち病期、切開創の大きさ、胸腔鏡の利用度、自動縫合器の利用状況、合併症の有無、種類などの解析により、我が国における低侵襲肺癌手術の実施状況が明らかになる。外科手術の領域は前向きの無作為比較試験を行うことが困難な領域であり、患者情報、治療、アウトカムなどに関する大規模な前向き症例登録を行い、その解析により科学的な指標を示すことが、実際には良質な医療の提供に直結し、エビデンスの構築にも実効的と考える。近年、低侵襲手術に対する国民の期待は高く、すでに実臨床には定着しているが、適応や手術方法は必ずしも統一されていない。その実状に対する客観的な調査を行い、その結果を解析し適応と限界、標準的な医療に関するアセスメントを行うことは専門医の責務と考える。適応や治療成績を含む胸腔鏡下肺癌手術の実施状況が明らかになれば、施設ごとに治療成績や標準治療からの乖離など、パフォーマンスを把握することが可能となり,癌医療の均てん化に向けた課題を同定することができる。同時に専門医認定のあり方に関しても適正な症例経験数や手術の質、合併症の発生率などを客観的な指標として見直すことが可能となり、更に質の高い専門医制度を策定する支援となる。この検討結果は患者、保険者、行政との連携をもたせ、治療成績の向上を患者に示すとともに、より安心で実効的な医療環境整備の材料とすることも可能である。胸腔鏡下肺癌手術の臨床実態調査のみならず、医療行為の質的調査、技術の標準化、専門医育成、ガイドライン作成、保険診療への提言などの面でも様々な波及効果が期待しうる。
結論
全国の日常手術データを前向きに入力することにより、我が国における肺癌手術、特に胸腔鏡下手術の実施状況の把握に直結する入力システムを構築しえた。データを多角的に分析することにより、医療水準評価や標準化、より良質な医療を市民に提供するための臨床情報のフィードバックも計画している。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
-