がん死亡率減少に資するがん検診精度管理に関する研究

文献情報

文献番号
201313044A
報告書区分
総括
研究課題名
がん死亡率減少に資するがん検診精度管理に関する研究
課題番号
H24-3次がん-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 元保(金沢医科大学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学)
  • 渋谷 大助((公財)宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合健康管理センター)
  • 松田 一夫((公財)福井県健康管理協会)
  • 中山 富雄(大阪府立成人病センター疫学予防課)
  • 笠原 善郎(恩賜財団福井県済生会病院)
  • 濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画の個別目標である「全ての市町村で精度管理を行う」「50%の受診率達成(胃、肺、大腸は40%)」に資する課題について検討した。
研究方法
1.精度管理の評価指標、手法の開発(1)厚労省がH20年に公表した集団検診CLについて、コンセンサスパネル等により運用開始以降の問題点を検討し、改訂案を作成した。(2)個別検診CLの新規作成の為、精度管理水準が優れた10自治体に対し、検診体制、医師会との連携体制についてヒアリング調査を行った。また調査で得た知見によりCLの必須要件を特定し、それが他自治体でも適用可能かどうか、全国調査による検証を開始した。(3)精度管理のもう一方の指標であるプロセス指標について、H20年に公表された基準値の改訂の是非を検証した。H17年(基準値設定時のベースライン)~H22年の指標値について、都道府県毎のベンチマーキングを行った。
2.全国の精度管理状況の把握(1)市区町村:全国1704市区町村を対象に、市町村CLの実施率を調査した。(2)都道府県:全都道府県の生活習慣病検診等管理指導協議会(協議会)を対象に、昨年度の活動状況について調査し、その評価結果を都道府県つきで公表した。
3.精度管理向上体制に関する検討(1)市町村への支援:優良自治体への調査により、CL達成の為のノウハウを特定し、それに解説を加えて「自治体担当者のためのがん検診精度管理マニュアル」を作成した。(2)都道府県への支援:協議会が行うべき精度管理手法を標準化し(胃、大腸、肺がん)、全国がん検診講習会を通じて、これらの手法の普及を図った。さらに、都道府県が行う精度管理をより具体的に支援する目的で「自治体のためのがん検診精度管理支援のページ」を開設した。
4.受診率向上に関する検討
全市区町村を対象に、網羅的な対象者名簿の作成、対象者全員への個別受診勧奨、再勧奨(Call -recallシステム)の実施の有無について調査した。
結果と考察
1.精度管理の評価指標、手法の開発(1)パネルでは、検診体制の変化の反映、誤解釈を避けるための解説の必要性が指摘され、それらを踏まえて改訂版を作成し、厚労省「がん検診のあり方に関する検討会」に提出した。(2)個別検診CLの必須要件として、「医師会との連携体制強化」、「要綱に沿った医療機関の選定」、「各医療機関の評価・還元」が示された。今後これらの要件を含むCLを作成し、妥当性・有用性評価を行う。(3)精検受診率の基準値は上方修正(5年前の水準より5~10%向上しているため)、それ以外の指標は据え置きが妥当と判断された。今後がん種毎に詳細な分析をした上で新しい基準値案を決定し、厚労省検討会に提案する予定である。以上の一連の作業により、今後精度管理指標の有用性が向上することが期待できる。また、個別検診の指標が新たに作成されることで、その精度管理が初めて可能になり、ようやく住民検診全体(個別検診、集団検診)の精度管理向上が実現できる。
2.全国の精度管理状況の把握(1)CL実施率は、がん対策推進基本計画個別目標の進捗指標として用いられている。今年度の実施率は、調査初年度(H21)より3~7ポイント上昇していた。ただし、受診勧奨、受診歴別集計、検診機関の適切な委託については未だ実施率が低く、今後特に改善が必要である。(2)協議会に求められる活動のうち、「がん部会の開催」については32~33県、「精度管理評価の公表」については10~16県しか実施していなかった(胃、大腸、肺がん)。ただし、2回目の調査となった肺がん部会については、1回目の調査で活動のなかった3県で新たに活動が認められ、昨年の調査結果の公表(研究班)による改善と示唆された。調査・評価・結果の公表のサイクルを継続して行うことで、協議会の活動が促進されることが期待できる。
3.精度管理向上体制に関する検討(1)精度管理の改善には、まずCL実施率の改善が最も重要である。今回その為の具体策を示したことで、今後CL実施率の向上が期待できる。(2)全国講習会では40県(約74名)の出席を得て、精度管理手法や、実際の地域の取組事例を紹介した。またホームページでは、各県の精度管理対策の資料として活用できる形で、CL実施率やプロセス指標値を還元し、H26年2月時点で34県が利用した。上記の支援の継続により、各地域の精度管理体制や行政職員の知識が向上し、結果的に我が国全体の精度管理向上が期待できる。
4.受診率向上に関する検討
海外でエビデンスのあるCall-recallシステムは日本では7%しか普及していなかった。これが日本で受診率が向上しない最大の要因であり、今後の喫緊の課題である。
結論
がん対策推進基本計画の個別目標達成に資する精度管理体制構築の検討が進捗した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201313044B
報告書区分
総合
研究課題名
がん死亡率減少に資するがん検診精度管理に関する研究
課題番号
H24-3次がん-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 元保(金沢医科大学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学)
  • 渋谷 大助((公財)宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合健康管理センター)
  • 松田 一夫((公財)福井県健康管理協会)
  • 中山 富雄(大阪府立成人病センター疫学予防課)
  • 笠原 善郎(恩賜財団福井県済生会病院)
  • 濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画の個別目標である「全ての市町村で精度管理を行う」「50%の受診率達成(胃、肺、大腸は40%)」に資する課題について検討した。
研究方法
1.精度管理の評価指標、手法の開発(1)厚労省がH20年に公表した集団検診CLについて、コンセンサスパネル等により運用開始以降の問題点を検討し、改訂案を作成した。(2)個別検診CLの新規作成の為、精度管理水準が優れた10自治体への調査よりCLの必須要件を特定した。またこれらの要件について、全国の実態調査による検証を開始した。(3)精度管理のもう一方の指標であるプロセス指標について、H20年に公表された基準値の改訂の是非を都道府県毎のベンチマーキングにより検証した。
2.全国の精度管理状況の把握(1)市区町村:市町村CLの実施率を調査した(H24、25)。(2)都道府県:生活習慣病検診等管理指導協議会(協議会)について、前年度の活動状況を調査し、その評価結果を都道府県つきで公表した(H24、25)。
3.精度管理向上体制に関する検討(1)市町村への支援:優良自治体への調査により、CL達成の為のノウハウを特定し、それに解説を加えて「自治体担当者のためのがん検診精度管理マニュアル」を作成した。(2)都道府県への支援:協議会が行うべき精度管理手法を標準化し、全国がん検診講習会を通じて、これらの手法の普及を図った(H24、25)。さらに、都道府県が行う精度管理をより具体的に支援する目的で「自治体のためのがん検診精度管理支援のページ」を開設した。
4.受診率向上に関する検討
全市区町村を対象に、網羅的な対象者名簿の作成、対象者全員への個別受診勧奨、再勧奨(Call -recallシステム)の実施の有無を調査した。また、受診勧奨の際の適切な情報提供の効果(受診率向上効果)について、大腸がん検診受診者4500人を対象とした介入研究で検証した。
結果と考察
1.精度管理の評価指標、手法の開発(1)厚労省がH20年に公表した集団検診CLについて、コンセンサスパネル等により運用開始以降の問題点を検討し、改訂案を作成した。(2)個別検診CLの新規作成の為、精度管理水準が優れた10自治体への調査よりCLの必須要件を特定した。またこれらの要件について、全国の実態調査による検証を開始した。(3)精度管理のもう一方の指標であるプロセス指標について、H20年に公表された基準値の改訂の是非を都道府県毎のベンチマーキングにより検証した。
2.全国の精度管理状況の把握(1)市区町村:市町村CLの実施率を調査した(H24、25)。(2)都道府県:生活習慣病検診等管理指導協議会(協議会)について、前年度の活動状況を調査し、その評価結果を都道府県つきで公表した(H24、25)。
3.精度管理向上体制に関する検討(1)市町村への支援:優良自治体への調査により、CL達成の為のノウハウを特定し、それに解説を加えて「自治体担当者のためのがん検診精度管理マニュアル」を作成した。(2)都道府県への支援:協議会が行うべき精度管理手法を標準化し、全国がん検診講習会を通じて、これらの手法の普及を図った(H24、25)。さらに、都道府県が行う精度管理をより具体的に支援する目的で「自治体のためのがん検診精度管理支援のページ」を開設した。
4.受診率向上に関する検討
全市区町村を対象に、網羅的な対象者名簿の作成、対象者全員への個別受診勧奨、再勧奨(Call -recallシステム)の実施の有無を調査した。また、受診勧奨の際の適切な情報提供の効果(受診率向上効果)について、大腸がん検診受診者4500人を対象とした介入研究で検証した。
結論
がん対策推進基本計画の個別目標達成に資する精度管理体制構築の検討が進捗した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313044C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん対策として死亡率減少の成果を上げるためのがん検診について、その精度管理体制の基盤となる手法や評価法が開発された。指標が開発され、その妥当性が評価されたことで、我が国でもようやく、がん検診の質の実態把握、分析および評価結果の還元による検診の質の向上が可能となった。今後、海外の一部先進国のように、施策として実施されている検診の質を評価し、改善させる具体的な方法を提示したことは、がん対策上、あるいは公衆衛生学的にも意義が大きい。
臨床的観点からの成果
本研究はがん患者ではなく、健常な一般国民を対象にする取り組みであり、短期的かつ直接的な臨床上の効果を目指すものではないが、がん対策推進基本計画にあげられたがん検診の質の向上により、がんの病期分布の早期への移行がもたらされ、診断されるがんの治癒率向上、ひいては死亡率減少に寄与すると期待される。
ガイドライン等の開発
H20年に前身班が作成した集団検診の精度管理指標(CL)について、その後の精度向上等による検診実態の変化を踏まえて改定を行った。更に、CLが無く精度管理が遅れていた個別検診についても、その必須要件を検討し、それらも勘案して住民検診全体(集団検診+個別検診)を対象としたCLを新たに作成した。この新CLは厚労省「第16回がん検診のあり方に関する検討会」(H28年2月18日)で承認され、厚労省健康局長通達「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年2月改正)」に反映された。
その他行政的観点からの成果
・CLの実施状況はがん対策推進基本計画の進捗指標として活用された(がん対策加速化プラン、第3期基本計画案など)。
・「第2期がん対策推進基本計画」で、精度管理の均てん化のため、生活習慣病検診等管理指導協議会の活性化が掲げられている。同協議会が行うべき精度管理を標準化し、研修会等を通じて普及を図り、各協議会の活動度の評価結果を公表した。
・厚労省「がん対策加速化プラン(H27.12)」では全国の受診率向上体制の不備が本研究班調査のCall-recall実施率を根拠に指摘された。
その他のインパクト
がん対策推進基本計画では、がん検診精度管理向上のために生活習慣病検診等管理協議会の活性化が「取り組むべき施策」として掲げられているが、多くの協議会ではその活動は形骸化し、都道府県内自治体の精度管理の仕組みはごく一部の府県以外にはなかった。そこで同協議会が行うべき5がんの精度管理手法を開発し、7回の全国がん検診指導者講習会を開催し、各々40県以上の都道府県が参加した。長く懸案であった協議会の活性化が認められ、それを通じた都道府県の精度管理の均てん化に道筋がついた。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
52件
その他論文(和文)
51件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
145件
学会発表(国際学会等)
40件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
33件
その他成果(普及・啓発活動)
138件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2018-06-04

収支報告書

文献番号
201313044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,800,000円
(2)補助金確定額
27,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,149,578円
人件費・謝金 1,643,004円
旅費 1,311,770円
その他 17,280,648円
間接経費 6,415,000円
合計 27,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-