文献情報
文献番号
201313036A
報告書区分
総括
研究課題名
低線量胸部CTによる肺がん検診の有効性評価のための無作為化比較試験
課題番号
H23-3次がん-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐川 元保(金沢医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 祖父江 友孝(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 西井 研治(岡山県健康づくり財団 附属病院)
- 江口 研二(帝京大学 医学部)
- 中山 富雄(大阪府立成人病センター がん予防情報センター)
- 田中 洋史(新潟県立がんセンター新潟病院 内科)
- 小林 健(石川県立中央病院 放射線診断科)
- 佐藤 雅美(鹿児島大学大学院 呼吸器外科学分野)
- 高橋 里美(宮城県立がんセンター 呼吸器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国における肺がん死亡数は,がん死亡の第一位をしめ,がん対策上大きな位置をしめる.喫煙対策は重要であるが即効性はなく,何らかの対策を講じる必要がある.胸部CT検診は,単純X線に比べて微小肺野病変の検出率が高い事が知られていたが,その有効性は未だ確立していない.
新しい肺がん対策として低線量CT検診の導入を検討するためには,死亡率をエンドポイントとした無作為化比較試験が必要と考えられる.欧米での比較試験は喫煙者のみが対象であり,わが国における非喫煙者に対する腺癌の増加という現状に対応していない.低線量CT検診導入の可否を決定するためには,わが国での比較試験を完遂することが必須である.
本研究の目的は,胸部CTによる肺がん検診が,わが国の肺がん死亡減少のために有用なものかどうかを判断するための,本邦の実情に合致した無作為化比較試験を立案・実行することである.あわせて,管電流自動調整CTの普及に伴い,従来の「低線量」の定義では処理できなくなってきたことから.適正な撮影条件を再検討する.
新しい肺がん対策として低線量CT検診の導入を検討するためには,死亡率をエンドポイントとした無作為化比較試験が必要と考えられる.欧米での比較試験は喫煙者のみが対象であり,わが国における非喫煙者に対する腺癌の増加という現状に対応していない.低線量CT検診導入の可否を決定するためには,わが国での比較試験を完遂することが必須である.
本研究の目的は,胸部CTによる肺がん検診が,わが国の肺がん死亡減少のために有用なものかどうかを判断するための,本邦の実情に合致した無作為化比較試験を立案・実行することである.あわせて,管電流自動調整CTの普及に伴い,従来の「低線量」の定義では処理できなくなってきたことから.適正な撮影条件を再検討する.
研究方法
(1)2009年度に作成した「低線量CTによる肺がん検診の精度および死亡減少効果評価のための個人単位ランダム化比較試験 研究計画書」を改訂したプロトコールに沿って,いくつかの地区で実際に無作為化を含めたリクルートを行い,研究を実施する.昨年度までに,研究全体の流れにおける多種の書類・ツールの作成,研究の実際における問題点を明らかにすることによる計画の改善,対象者の何割が研究に参加するかの把握,等の研究を実施したので,今年度はそれらをもとにして,実施地域の拡大と参加者数の増加を目標とした.さらに,より組織的な研究体制とするために,データベースを構築すると共に,検診結果報告書式の完全な統一を図る.
(2)全国でCT肺がん検診を行っている施設において,模擬結節入り胸部CT用ファントムを当該施設で低線量CT検診を実施している条件下で撮影してもらい,その画像と線量をはじめとした撮影条件を評価することによって,低線量CT検診としての適正な撮影条件を検討する.
(2)全国でCT肺がん検診を行っている施設において,模擬結節入り胸部CT用ファントムを当該施設で低線量CT検診を実施している条件下で撮影してもらい,その画像と線量をはじめとした撮影条件を評価することによって,低線量CT検診としての適正な撮影条件を検討する.
結果と考察
(1)検診RCT実施
2013年度は全国各地の多くの自治体および検診機関と協議を行い, 6県6市町にて無作為化比較試験を実施し得た.報告書式を一元化し,アクセス2010を用いて構築したデータベースへの入力を継続的に可能とするような体制を構築した.その結果,2013年度までの研究への参加状況は,勧誘文書を郵送した対象者9268名のうち,19.6%が文書を返送し,そのうち適格例が92.1%に達し,最終的に1500名が説明会に参加した.その中から,説明会参加者の96.9%,全体の15.7%にあたる1453名が実際に研究に参加し,同様な研究における海外での参加状況(PLCO研究は0.3-7.2%,ITALUNG研究は4.5%)に比較し,応諾率はきわめて良好であった.また,説明会参加者の実に97%が実際に研究に参加しているが,今回作成した勧誘・説明書は,研究内容の適切な伝達および不適格例の排除の両面において,有効に機能していると考えられた.
すでに肺癌と確診された例が両群に発見されており,その他に,特にCT検診群において,多数の「肺癌疑い」としてフォローされている例が存在する.今後も集積されたデータの解析を行うとともに,新たな予算が得られれば,地域の拡大と追跡調査を行う事が可能である.
(2)低線量胸部CT検診における適切な被曝量の検討
スライス厚が5㎜を超えると画質に大きな劣化をきたすことから,低線量CT検診におけるスライス厚は5㎜以下であることが望ましいと考えられた.さらに,スライス厚が5㎜以下の画像においては,さらにスライス厚を薄くすることは画質の向上につながらず,むしろ線量と画質が強い相関を示した.当該相関関係の解析により,95%の読影医が「許容できる画質」を撮影できる被曝線量は2.5mGyと算出された.そのため,2.5mGy以下の線量の範囲で画質の改善を目指すことが望ましいと考えられた.
2013年度は全国各地の多くの自治体および検診機関と協議を行い, 6県6市町にて無作為化比較試験を実施し得た.報告書式を一元化し,アクセス2010を用いて構築したデータベースへの入力を継続的に可能とするような体制を構築した.その結果,2013年度までの研究への参加状況は,勧誘文書を郵送した対象者9268名のうち,19.6%が文書を返送し,そのうち適格例が92.1%に達し,最終的に1500名が説明会に参加した.その中から,説明会参加者の96.9%,全体の15.7%にあたる1453名が実際に研究に参加し,同様な研究における海外での参加状況(PLCO研究は0.3-7.2%,ITALUNG研究は4.5%)に比較し,応諾率はきわめて良好であった.また,説明会参加者の実に97%が実際に研究に参加しているが,今回作成した勧誘・説明書は,研究内容の適切な伝達および不適格例の排除の両面において,有効に機能していると考えられた.
すでに肺癌と確診された例が両群に発見されており,その他に,特にCT検診群において,多数の「肺癌疑い」としてフォローされている例が存在する.今後も集積されたデータの解析を行うとともに,新たな予算が得られれば,地域の拡大と追跡調査を行う事が可能である.
(2)低線量胸部CT検診における適切な被曝量の検討
スライス厚が5㎜を超えると画質に大きな劣化をきたすことから,低線量CT検診におけるスライス厚は5㎜以下であることが望ましいと考えられた.さらに,スライス厚が5㎜以下の画像においては,さらにスライス厚を薄くすることは画質の向上につながらず,むしろ線量と画質が強い相関を示した.当該相関関係の解析により,95%の読影医が「許容できる画質」を撮影できる被曝線量は2.5mGyと算出された.そのため,2.5mGy以下の線量の範囲で画質の改善を目指すことが望ましいと考えられた.
結論
7県20地区にて無作為化比較試験を実施した.対象者の17%が実際に研究に参加するという高率なリクルート状況であることが判明し,今回作成・配布している勧誘・説明書は,研究内容の適切な伝達および不適格例の排除の両面において,有効に機能していると考えられた.すでに数例の肺癌例と数十例の肺癌疑い例が発見されており,今後コンタミネーション調査とQOL調査に加えて,感度・特異度の解析と死亡率低減効果の推定を実施予定である.
また,管電流自動調整CTの普及に伴い,適切な撮影条件を再検討した,その結果,スライス厚が5㎜以下,被曝線量2.5mGy以下の範囲で画質の改善を目指すことが望ましいと考えられた.
また,管電流自動調整CTの普及に伴い,適切な撮影条件を再検討した,その結果,スライス厚が5㎜以下,被曝線量2.5mGy以下の範囲で画質の改善を目指すことが望ましいと考えられた.
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
-