妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究

文献情報

文献番号
201312012A
報告書区分
総括
研究課題名
妊産婦のメンタルヘルスの実態把握及び介入方法に関する研究
課題番号
H24-次世代-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
久保 隆彦(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター産科)
研究分担者(所属機関)
  • 森臨太郎(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所・成育政策科学研究部)
  • 立花良之(独立行政法人国立成育医療研究センターこころの診療部育児心理科)
  • 吉田敬子(九州大学病院子どものこころの診療部)
  • 葛西圭子(社団法人日本助産師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊娠中、産後のメンタルヘルススクリーニングならびに影響因子を調査することで、いつの時期にどの程度の頻度でハイリスク群(介入必要群)が存在し、その簡便な抽出方法を確立することにある。このような縦断的研究は現在国内外にも無く独創的といえる。また、妊娠中のメンタルヘルスリスクと産後のメンタルヘルスならびに育児行動、母子関係との関係があるか否か、それに影響する因子を抽出することにある。そのハイリスク妊産褥婦への妊娠中・後の母親への介入で産後の育児ストレス軽減、ひいては虐待予防に繋がるか否かを明らかとし、我が国における妊産婦のメンタルヘルスの支援体制を構築するためにどのような施策がとりうるかを提言することを目的とする。
研究方法
 世田谷区の分娩を取り扱うすべての産科施設によるpopulation basedな縦断研究である。
妊娠20週時のベースライン調査、分娩後入院中(産後数日)、産後2週、1か月、2か月、3か月の合計6回の調査を実施した。メンタルヘルスの評価指標として、EPDS、WHO-5精神的健康状態表、育児支援チェックリスト、赤ちゃんへの気持ち質問票、育児ストレスショートフォーム(PSI-SF)などの既存尺度を用いた。
424名を対象とし、産後2週の抑うつ状態についての、妊娠中期20週頃と産後直後(4,5日後)における予測因子について研究した。第1回目調査票の心理社会的因子・精神科既往・生殖医療についての経験の因子を用いた。第2回目(産後4,5日後)と第3回目(分娩2週後)の欠損が無い1025名を対象とし、第2回目調査票に含まれる出産様式、身体的トラブル、精神科既往、サポートの有無についての因子を用いた。
妊娠期からはじめる妊産婦へのメンタルケアと育児支援のシステムについて医師の参入をテーマとして検討した。
結果と考察
2014年2月での質問票の回収状況は、同意書は1,799人、妊娠20週で1721人、分娩直後1327人、産後2週間1130人、産後1カ月1382人、産後2カ月1156人、産後3カ月964人であった。EPDSの9点以上の者は、妊娠20週時:10.3%、産後直後:13.2%、産後2週時:17.5%であった。WHO-5が12点以下だった者は、同様に12.0%、12.9%、26.5%であった。初産・経産婦別のEPDSのハイリスク者の割合は、初産婦では妊娠20週で10.0%、産後数日で16.9%、産後2週で24.7%であった。経産婦では、妊娠20週が8.6%、産後数日が8.5%、産後2週が7.7%であった。
EPDSの点数と相関のあったのは、仕事・パートナーの有無、夫以外で相談できる人・手伝ってくれる人の有無、精神科通院・過去に精神科通院歴、過期産、分娩方法、分娩手技、無痛分娩、陣痛促進剤の使用、分娩の満足度、児のNICU管理、乳房トラブル、母乳栄養かどうか、直接母乳かどうか、尿漏れ、会陰縫合部または帝王切開時の傷の痛み、痔または脱肛、妊娠前に精神科通院歴あり、妊娠中に精神科通院あり、パートナーの精神的サポート、パートナーの家事・育児の手伝い、実母または義母の精神的サポート、実母または義母の家事・育児のサポート、家族としてのまとまりであった。  
調査の進捗状況は2014年2月の時点では産後2週までの3回の調査データの収集が終了している。80.3%が継続をしていることから、本研究は当初の計画に沿って順調に進んでいると判断できる。本研究で収集しているデータは、わが国の妊産婦において、メンタルヘルスの不調を訴えやすくなる時期の特定や、メンタルヘルスの状態の推移などを適切に把握する上で有用なものと考えられる。
初産婦に対しては入院中の介入以外に、ハイリスク者割合が高くなる産後2週で専門職による何らかの介入が要請される。この時期は妊産婦のメンタルヘルスにとって大変重要で、産褥健診を制度化する必要が示唆された。また、精神科を持つ医療施設、保健所、精神科開業医、児童相談所、小児科医などと連携をすることで、より大きな事象を防ぐ可能性が示唆された。

結論
妊娠期から産後2週にかけて初産婦において、EPDS陽性者の割合が10.0%から24.7%へと、約2.5倍に増えることが示された。初産婦はEPDS、WHO-5共に産後2週でハイリスク者割合が高く、何らかの対策が必要と考えられる。経産婦ではEPDSハイリスク者割合は妊産褥期を通じて10%以下で推移していたが、WHO-5では産後2週で20.8%という結果であった。
出産後2週の時点でのメンタルヘルスのハイリスクが高頻度であることから、産褥健診を制度化することが有効な手段となる。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201312012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,884,000円
(2)補助金確定額
12,884,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,027,505円
人件費・謝金 5,460,166円
旅費 220,120円
その他 3,232,209円
間接経費 944,000円
合計 12,884,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
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