文献情報
文献番号
201312002A
報告書区分
総括
研究課題名
人工妊娠中絶の地域格差に関する研究
課題番号
H24-次世代-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(三重大学 大学院医学系研究科 臨床医学系講座 産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 州博(東北大学医学部産婦人科)
- 中井 章人(日本医科大学多摩永山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
昨年度に引き続き、わが国で施行されている人工妊娠中絶術の手技と合併症の関係について調査し、その安全性について検討する。また、都道府県別人工妊娠中絶率と関連すると考えられる諸因子との関連を検討し、経口避妊薬の都道府県別売上錠数の関連を検討する。さらに、これまで正確な統計が存在していなかった帝王切開率について日本の正確な帝王切開率の数値を調査する。次に帝王切開率と周産期死亡率の相関を解析し、帝王切開が周産期死亡にどのような影響を及ぼしているか検討することを目的とする。
研究方法
人工妊娠中絶の方法と合併症について、日本産婦人科医会の協力を得て、人工妊娠中絶の実態について全国のアンケート調査を行った。地域格差については厚生労働省衛生行政報告の平成21年の各都道府県あるいは各地方別の中絶率を用いて解析を行った。また経口避妊薬の都道府県別売上錠数の関連を検討した。経口避妊薬の売上錠数については、売上シート数として解析に用い、アイ・エム・エス・ジャパン株式会社より売上シート数に関する情報を収集した。帝王切開率については、日本産婦人科医会常務理事会の了承を得て、2008~2012年の年初に日本産婦人科医会によって行われた前年の全国施設調査の基礎データを用い、2007~2011年の年別、47都道府県別の分娩数、帝王切開数を解析した。周産期死亡率については毎年、厚生労働省大臣官房統計情報部から公表される人口動態統計のデータを用い解析を行った。
結果と考察
母体保護法指定医のいる全国の産婦人科施設4,154件に対して、2012年1年間の人工妊娠中絶術についてアンケート調査を行った。回答率は58.6%、集計された人工妊娠中絶術施行数は108,148件であった。妊娠12週未満の中絶手技は約70%の施設が吸引法を用いており、診療所が主体で施行していた。合併症の発生は合計391件(人工妊娠中絶10万件あたり362件)で、そのうち子宮内容遺残295件(75%)が最多であった。掻爬法は時期・施設を問わず、吸引法に比較し合併症が有意に高率であった。経口避妊薬使用量は、東京都が飛び抜けての1位であったが、都会で多く、地方で少ない傾向が認められた。また中絶率と経口避妊薬使用量の間に有意な負の相関が認められ、避妊法に関する啓発が重要であることが示唆された。日本の帝王切開率は2007年から年毎に上昇していた。また、47都道府県別の帝王切開率に大きな幅があることが明らかになった。日本の周産期死亡率は2007年から年毎に低下していたが、47都道府県間の5年間集計での帝王切開率と周産期死亡率に統計学的な相関は認められなかった。
結論
妊娠12週未満の中絶手技は約70%の施設が吸引法を用いており、診療所が主体で施行していた。掻爬法は時期・施設を問わず、吸引法に比較し合併症が有意に高率であった。経口避妊薬使用量は、都会で多く、地方で少ない傾向が認められた。また中絶率と経口避妊薬使用量の間に有意な負の相関が認められた。日本の帝王切開率は2007年から年毎に上昇していた。日本の周産期死亡率は2007年から年毎に低下していたが、47都道府県間の5年間集計での帝王切開率と周産期死亡率に統計学的な相関は認められなかった。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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