文献情報
文献番号
201311011A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模疫学調査による、認知症の発症促進因子および抑制因子の検索に関する研究
課題番号
H25-認知症-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大塚 礼(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
- 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
- 島田 裕之(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
- 吉田 英世(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
- 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
- 中川 正法(京都府立医科大学 大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、大規模な疫学調査データを用い認知症及び認知機能障害の発症促進因子・抑制因子を明らかにし、中高年期における認知症予防、認知機能の維持のための新たなストラテジーの開発を目指す。
研究方法
無作為抽出された地域住民を対象とした大規模な疫学調査データを用い認知症及び認知機能障害の発症促進因子・抑制因子を明らかにしていく基幹コホート研究、その結果との比較検証を行う検証コホート研究及び予防的介入研究の3つの研究を実施した。
結果と考察
基幹コホート研究(NILS-LSA)
1.NILS-LSAデータ整備:NILS-LSAは平成24年度、第7次調査で学際的調査は終了した。平成25年度には終了した第7次調査のデータ整備を行った。調査内容及び性年齢別の平均値などはホームページに掲載し、その内容を修正・整備した(http://www.ncgg.go.jp/department/ep/nilslsa.html)。NILS-LSAでは老化・老年病との遺伝子との関連の研究を行ってきたが、今年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)として全エクソーム解析を実施した。NILS-LSA参加者2,173人の保存DNAを用い、各検体の244,770エクソーム多型のタイピングを終了した。
2.認知機能追跡調査:平成25年度には認知症及び認知機能に関する調査を中心としたNILS-LSAの追跡調査の準備を半年間かけて進め、平成25年10月より週3日ないし4日、1日6名で、年間1,000名の検査を実施し、平成27年度には追跡調査対象者の検査を終了する予定である。検査項目は頭部MRI、既往歴、生活習慣、認知機能検査、握力、歩行速度などである。
3.認知機能障害の加齢変化:平成25年度には知能のいろいろな側面での加齢変化、性差などを横断的及び縦断的な検討から明らかにした。MMSE得点の低い者では、物品名再生や計算の正答率が顕著に低く、MMSE得点は年齢の2乗に比例して経時的に低下した。これは従来から「認知症の有病率は年齢と共に指数関数的に増大する」とされていることに合致する結果であった。また認知機能の加齢変化には、教育歴の影響が大きく、認知機能のリザーブが認知症の予防に有用なことなどを明らかにした。
4.認知機能障害の発症促進因子・抑制因子:平成25年度には第7次調査の結果からNILS-LSAの膨大な指標と認知機能との関連について網羅的に検討した。医学的要因ではメタボ関連疾患やメタボ関連血液所見は有意な関連を示さず、ADLの低下、視力・聴力障害、脳血管障害の既往が認知機能障害保有の関連要因として示唆された。社会心理学的な要因の検討では周囲からのサポートを受けながら、余暇や趣味を楽しむことが認知機能低下予防につながる可能性が示された(図)。栄養では緑黄色野菜、カリウム、ベータカロテン、ビタミンK、ビタミンB6、水溶性食物繊維の摂取量が少ないことが、また鉄摂取量が多いことが認知機能障害と関連していた。
検証コホート研究・予防介入研究
山村、離島、都市近郊の各地域でのコホート研究・予防的介入研究での発症促進因子・抑制因子の解析、地域行政データを用いた認知症介護予防に直結した発症促進因子・抑制因子の解析を実施した。都市近郊在住の65歳以上の高齢者3,560名での調査では、軽度認知機能障害(MCI)を有する高齢者は知的な活動を実施していない者が多く存在し、特に複数の認知機能の低下を持つ者においてその傾向が高いことが明らかとなった。離島および過疎地域での調査では、神経心理調査でMMSEでは検出できない早期の注意・遂行機能の低下を検出することができた。農山村地域高齢者での10年間の追跡データで知的能動性が非自立であることが、その後の認知機能低下の要因であることが示された。
1.NILS-LSAデータ整備:NILS-LSAは平成24年度、第7次調査で学際的調査は終了した。平成25年度には終了した第7次調査のデータ整備を行った。調査内容及び性年齢別の平均値などはホームページに掲載し、その内容を修正・整備した(http://www.ncgg.go.jp/department/ep/nilslsa.html)。NILS-LSAでは老化・老年病との遺伝子との関連の研究を行ってきたが、今年度はゲノムワイド関連解析(GWAS)として全エクソーム解析を実施した。NILS-LSA参加者2,173人の保存DNAを用い、各検体の244,770エクソーム多型のタイピングを終了した。
2.認知機能追跡調査:平成25年度には認知症及び認知機能に関する調査を中心としたNILS-LSAの追跡調査の準備を半年間かけて進め、平成25年10月より週3日ないし4日、1日6名で、年間1,000名の検査を実施し、平成27年度には追跡調査対象者の検査を終了する予定である。検査項目は頭部MRI、既往歴、生活習慣、認知機能検査、握力、歩行速度などである。
3.認知機能障害の加齢変化:平成25年度には知能のいろいろな側面での加齢変化、性差などを横断的及び縦断的な検討から明らかにした。MMSE得点の低い者では、物品名再生や計算の正答率が顕著に低く、MMSE得点は年齢の2乗に比例して経時的に低下した。これは従来から「認知症の有病率は年齢と共に指数関数的に増大する」とされていることに合致する結果であった。また認知機能の加齢変化には、教育歴の影響が大きく、認知機能のリザーブが認知症の予防に有用なことなどを明らかにした。
4.認知機能障害の発症促進因子・抑制因子:平成25年度には第7次調査の結果からNILS-LSAの膨大な指標と認知機能との関連について網羅的に検討した。医学的要因ではメタボ関連疾患やメタボ関連血液所見は有意な関連を示さず、ADLの低下、視力・聴力障害、脳血管障害の既往が認知機能障害保有の関連要因として示唆された。社会心理学的な要因の検討では周囲からのサポートを受けながら、余暇や趣味を楽しむことが認知機能低下予防につながる可能性が示された(図)。栄養では緑黄色野菜、カリウム、ベータカロテン、ビタミンK、ビタミンB6、水溶性食物繊維の摂取量が少ないことが、また鉄摂取量が多いことが認知機能障害と関連していた。
検証コホート研究・予防介入研究
山村、離島、都市近郊の各地域でのコホート研究・予防的介入研究での発症促進因子・抑制因子の解析、地域行政データを用いた認知症介護予防に直結した発症促進因子・抑制因子の解析を実施した。都市近郊在住の65歳以上の高齢者3,560名での調査では、軽度認知機能障害(MCI)を有する高齢者は知的な活動を実施していない者が多く存在し、特に複数の認知機能の低下を持つ者においてその傾向が高いことが明らかとなった。離島および過疎地域での調査では、神経心理調査でMMSEでは検出できない早期の注意・遂行機能の低下を検出することができた。農山村地域高齢者での10年間の追跡データで知的能動性が非自立であることが、その後の認知機能低下の要因であることが示された。
結論
今年度の結果から、医学的要因ではメタボ関連疾患やメタボ関連血液所見は有意な関連を示さず、ADLの低下、視力・聴力障害、脳血管障害の既往が認知機能障害保有の関連要因として示唆された。社会心理学的な要因の検討では周囲からのサポートを受けながら、余暇や趣味を楽しむことが認知機能低下予防につながる可能性が示された。栄養では緑黄色野菜、カリウム、ベータカロテン、ビタミンK、ビタミンB6、水溶性食物繊維の摂取量が少ないことが、また鉄摂取量が多いことが認知機能障害と関連していた。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
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