大規模ゲノム疫学共同研究による認知症の危険因子および防御因子の解明

文献情報

文献番号
201311009A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模ゲノム疫学共同研究による認知症の危険因子および防御因子の解明
課題番号
H25-認知症-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 北園 孝成(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 )
  • 岩城 徹(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 )
  • 中別府 雄作(国立大学法人九州大学 生体防御医学研究所 )
  • 久保 充明(独立行政法人理化学研究所 医科学研究センター)
  • 熊谷 秋三(国立大学法人九州大学 基幹教育院 )
  • 朝田 隆(筑波大学 医学医療系臨床医学域精神医学 )
  • 目黒 謙一(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科高齢者高次脳医学寄附講座 )
  • 中島 健二(国立大学法人鳥取大学 医学部脳神経医科学講座 )
  • 山田 正仁(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域医学系 )
  • 内田 和宏(中村学園大学短期大学部)
  • 小原 知之(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
49,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、福岡県久山町で進行中の老年期認知症の疫学調査において、老年期および中年期の喫煙と認知症発症の関係、および病理診断に基づく認知症病型の頻度の時代的変化を検討する。遺伝的危険因子の検討では、アルツハイマー病(AD)の遺伝的危険因子が認知症発症に及ぼす影響を明らかにするとともに、最新のマイクロアレイを用いた解析を開始する。また、食事性因子および運動と認知機能との関連について解析を行う。さらに、脳卒中患者および糖尿病患者を対象にした大規模疾患コホートにおける認知症発症者を特定するほか、全国5つの地域で進行中の認知症の疫学研究を組織化し、わが国における認知症データバンクを形成する。
研究方法
①1988年の久山町循環器病健診に参加した65-84歳の認知症のない住民712名を15年間追跡し、老年期の喫煙が認知症発症に与える影響を検討した。また、この集団が15年前の健診を受診した際の喫煙情報を用いて中年期の喫煙と老年期における認知症発症の解析を行った。
②久山町において、1986年から2013年までの認知症連続剖検352例について、病理診断による認知症病型の時代的変化を検討した。また、Matlabで定量化したタウ蛋白陽性病変とBraak stageとの相関を検証した。
③AD関連遺伝子の再現性研究で有意な関連を認めたAPOEとPICALM遺伝子多型が認知症発症に及ぼす影響を検討するために、60歳以上の認知症のない久山町住民1,554名を10年間追跡した。
④久山町の剖検脳からRNAを抽出し、GeneChip®Human Transcriptome Array (HTA2.0)を用いたマイクロアレイ解析を行った。また、ADモデルマウスにヒトミトコンドリア転写因子TFAMを導入し、認知障害とインスリンシグナリングへの影響を解析した。
⑤久山町高齢者調査に参加した65歳以上の住民1,133名の認知機能とビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の摂取との関係を検討した。また、認知症がなく日常生活が自立している65歳以上の福岡県篠栗町住民1,445名を対象に、認知機能と握力や脚進展力などの体力指標との関連解析を行った。
⑥大規模疾患コホートにおける認知症発症者を特定するために、血管性認知症(VaD)のハイリスク群である脳卒中患者からなるコホート(FSR)とADのハイリスク群である糖尿病患者からなるコホ―ト(FDR)のデータを整備した。
⑦認知症データバンクを形成するために、全国5カ所で進行中の認知症疫学研究を組織化した。既存のデータを統合したデータベースを作成するために、各研究の基礎的なデータを調査して問題点の抽出を行った。
結果と考察
①久山町の疫学調査の結果、老年期および中年期の喫煙は認知症、特にAD発症の有意な危険因子であった。また、中年期と老年期ともに喫煙していた群では、ADとVaD発症のリスクがいずれも有意に上昇した。
②久山町の認知症連続剖検例の検討では、時代とともにVaDの頻度が減少する一方でADの頻度が有意に増加しており、特に男性でその傾向が強かった。また、タウ蛋白陽性病変の総面積はBraak stageと有意に相関した。
③久山町での追跡調査の結果、APOE-ε4遺伝子型はAD発症の有意な危険因子だった。
④久山町剖検脳から抽出したRNAを用いて遺伝子発現レベルとスプライシングについての統合解析を開始した。また、ミトコンドリア機能障害が認知機能障害と全身のインスリンシグナリング異常に強く関与していた。
⑤久山町の断面調査の結果、葉酸の高摂取は認知機能低下の有意な防御因子だった。また、握力や脚進展力などの体力指標が認知機能のマーカーとして有用であることが示唆された。
⑥FSRおよびFDRのデータを整備し、FSRは新規対象者のうち、脳梗塞発症後も高次脳機能障害がない者の追跡調査を、FDRは登録時に認知機能を評価した者の追跡調査を開始した。
⑦認知症、軽度認知障害などの診断基準や喫煙、飲酒など生活習慣は研究間で共通していたが、生活習慣病関連因子、調査期間、および調査回数がばらついていたうえ、対象者の一部に介入研究を行っている研究もあった。
結論
中年期および老年期の喫煙やAPOE-ε4遺伝子型は認知症、特にAD発症の有意な危険因子であった。病理学的検討では、時代とともにVaDの頻度が減少する一方でADの頻度が有意に増加していた。また、食事性因子や運動が認知機能に与える影響を明らかにした。さらに、脳卒中および糖尿病患者を対象にした大規模疾患コホートや認知症データバンクの基礎的調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201311009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
54,000,000円
(2)補助金確定額
54,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,225,622円
人件費・謝金 13,920,424円
旅費 3,721,310円
その他 11,223,747円
間接経費 4,909,000円
合計 54,000,103円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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