高齢者の筋骨格系変性を改善・予防する在宅ロボットリハビリシステム開発とその実証試験

文献情報

文献番号
201310021A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の筋骨格系変性を改善・予防する在宅ロボットリハビリシステム開発とその実証試験
課題番号
H25-長寿-若手-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
住谷 昌彦(東京大学 医学部附属病院 緩和ケア診療部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,682,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の進歩によって平均寿命は延び高齢者人口が増加し続けているが、高齢者の多くが身体に関する愁訴を持ち実際に身体活動に制限があるため、健康寿命は平均寿命よりも約10歳下回っている。さらに、健康寿命の延長は平均寿命に比して鈍化しており、不健康な高齢者が増加している。高齢者の身体活動制限の最大の原因は加齢による筋骨格系の変性と疼痛であり、これらによる身体活動の低下は関節拘縮や筋力低下の増悪を引き起こし転倒と骨折、さらに寝たきりといった重度の身体活動の制限を来たす悪循環(ロコモティブ症候群)を形成しており、加齢による筋骨格系変性の予防と改善は喫緊の健康課題である。このような課題を解決するために(1)在宅ロボット・リハビリシステムを開発する、(2)ロコモティブ症候群に着目した運動指導の効果を検証することを目的とする。
研究方法
(研究1)筋骨格系慢性疼痛患者6名(60歳代1名、70歳代3名、80歳代2名)を対象とした。リハビリテーションで指導する運動は、在宅ロボットリハビリシステムでも適用可能な指導内容とした。リハビリ初回に理学療法士が患者毎の身体機能に応じたリハビリ指導(約30分間)を行い、その後、患者自身による自主トレーニング(1回15分)を6日間行った。7日目に理学療法士が再度、リハビリ指導内容の確認と変更を行い、再び患者自身による自主トレを6日間行い、合計15日間のリハビリを行った。ロコモティブ症候群の評価はロコモ25で行い、総得点に加えて、質問項目1-4の合計得点を運動器疼痛(ロコモ-ペイン)、質問項目5-25の合計得点を運動器機能(ロコモ機能)として評価した。
(研究2)
●被験者の体格に合わせた運動指導ポリゴン(3次元ヒト型モデル)を提示し、被験者のポリゴンとともにモニターに並列させることによって運動指導ポリゴンと被験者が実際に行っている運動内容がどれくらいずれているかを視認しできるようなシステムを開発する。さらに、運動内容のずれを検知し警告を提示するようにする。
●運動指導ポリゴンは、理学療法士が自分の身体を運動させることによって簡単に作成可能であり、3次元CGを描画する技能は不要で、各関節毎に容易に運動内容を修正可能なソフト開発を行う。
結果と考察
研究結果
(研究1)運動療法開始前のロコモ25総得点は51.3+/-18.1であり重症ロコモティブ症候群が示唆された(カットオフ値16点)。同時点でのロコモ-ペインは9.7+/-3.6、ロコモ機能は41.7+/-15.4であった。
計3回の理学療法士による運動療法の指導と患者自身による運動療法の実践(1日1回15-20分間、合計12回、2週間)によって、ロコモ25総得点は41.0+/-18.4、ロコモ-ペイン7.3+/-4.1、ロコモ機能33.7+/-15.6と改善した。
研究2)
●被験者の体格に合わせた運動指導ポリゴン(3次元ヒト型モデル)を、被験者のポリゴンとともにモニターに並列させることによって、運動指導ポリゴンと被験者が実際に行っている運動内容がどれくらいずれているかを視認し警告を提示するようにした。
●運動指導ポリゴンは、理学療法士が自分の身体を運動させることによって簡単に作成可能であり、3次元CGを描画する技能は不要で、各関節毎に容易に運動内容を修正可能なソフト開発を行った。
●在宅ロボットリハビリシステムの開発を進め、特許出願した。

考察
ロコモティブ症候群に対して運動療法は短期間(2週間)であっても痛み、筋骨格系機能ともに改善することを示した。したがって、筋力増強が必ずしも得られなくても患者毎の身体機能に応じた「身のこなし」を指導することは意義がある。
この研究結果を基に、在宅ロボットリハビリシステムでは筋力増強だけを単一の目的とするのでは無く、効果的な全身運動の指導を実践させるためのツールとしての位置付けに変更した。
結論
高齢者の筋骨格系変性に基づく慢性疼痛に対して理学療法士の指導と患者自身の随意的な運動療法の実行によって筋力増強が期待できない短期間の訓練であってもロコモティブ症候群および筋骨格系の変性による慢性疼痛が改善することを示した。高齢者に「みのこなし」を指導することは意義がある。
中年~高齢者が在宅で運動療法を実施し、その運動内容を遠隔的に指導するシステム開発を行い特許申請を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201310021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,186,000円
(2)補助金確定額
2,186,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,263,680円
人件費・謝金 212,973円
旅費 4,740円
その他 200,607円
間接経費 504,000円
合計 2,186,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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