高齢脳卒中患者をモデルとした栄養管理と摂食機能訓練に関するアルゴリズムの開発、および経口摂取状態の改善効果の検証

文献情報

文献番号
201310013A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢脳卒中患者をモデルとした栄養管理と摂食機能訓練に関するアルゴリズムの開発、および経口摂取状態の改善効果の検証
課題番号
H25-長寿-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 )
研究分担者(所属機関)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 對馬 栄輝(弘前大学 医学部 保健学研究科)
  • 椿原 彰夫(川崎医科大学)
  • 東口 高志(藤田保健衛生大学 医学部 外科緩和医療学)
  • 水間 正澄(昭和大学医学部リハビリテーション科)
  • 石川 誠(一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業では、脳卒中患者における適切な栄養・リハビリテーション管理のアルゴリズムを立案・検証することにより、脳卒中患者の急性期~回復期における経口摂取移行率を向上させることを最終目的とする。アルゴリズム立案に資するデータを得るため、Research Questionとして、①急性期に於いて、いつ、どのような患者に、どのような判断で経口摂取のアプローチ(間接訓練・直接訓練)を開始すべきか、②回復期に於いて、栄養状態とADLの改善に資する栄養モニタリング(臨床的栄養評価の実施、およびその評価結果に基づき患者毎の適切な栄養投与量・投与形態等を検討し、共有すること)はどのようにあるべきか、③経管栄養を要する患者に於いて、安全かつ患者満足度の高い栄養投与経路・栄養剤の形状はどのようにあるべきか、を明確にするための研究を実施する。
研究方法
本事業では、はじめに脳卒中患者の栄養管理と摂食機能訓練に係る実態調査結果の解析を行うとともに、研究1.脳卒中発症後急性期からの摂食機能訓練の介入の検討、研究2.回復期リハ入院時における栄養モニタリング頻度のコホート調査、および研究3.経管栄養を要する患者における栄養投与経路と半固形化栄養投与の検討を行う。得られた知見から、摂食嚥下障害を伴うハイリスク症例の栄養管理と摂食機能訓練のアルゴリズムを作成し、その有用性評価と医療経済評価を多施設共同RCTで検討する。
結果と考察
急性期病院34施設および回復期リハ病院25施設で収集した後方視データの解析を行い、以下の研究1~3の研究計画を協議・立案した。
研究1.「脳卒中急性期患者を対象とした発症後早期からの摂食機能訓練介入効果の検討」
急性期病院における後方視データの解析を行い、入院時NIHSSの点数が退院時の経口摂取状態に影響を及ぼすことを明らかにした。また、急性期病院では嚥下障害が認められる患者に対する間接訓練の実施率が6割程度に留まり、訓練が実施されている頻度も毎日実施されていない割合が半数近くに上る一方で、退院時に3食経口摂取可能な患者は、発症から間接訓練開始までの日数が短かった。これらの結果をもとに、急性期における理想的な摂食機能訓練、栄養管理のアルゴリズムの安全性・有用性を探索的に検討する研究計画を立案し、実施施設として急性期病院6施設から実施承諾を得た。全施設で倫理審査承認を得て、平成26年1月より登録を開始し、現在研究継続中である。
研究2.「回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の栄養モニタリングの頻度の違いが栄養状態および身体機能の回復に与える影響の検討」
回復期リハ病院における後方視データの解析を行い、回復期リハ病院においては摂食機能訓練が入院後速やかに実施され、その頻度も急性期に比べて高いこと、入院時に3食経口摂取が不可だった患者の53%が退院時に3食経口摂取が可能になっていることを明らかにした。一方で、入院時BMIが18.5未満の低栄養患者が入院中にBMIの改善を得た割合は41%に留まっており、嚥下障害を有する低栄養患者に対する栄養管理を再考する必要性が示唆された。これらの結果をもとに、回復期リハ入院時に低栄養と判断された患者に対する入院中の栄養管理の在り方を探索的に検討する研究計画を立案し、実施施設として回復期リハビリテーション病棟協会加盟の5施設から実施承諾を得て、倫理審査承認後、研究が開始された。平成26年1月より登録を開始し、現在研究継続中である。
研究3.「経管栄養を要する脳卒中患者を対象とした栄養投与経路および投与栄養剤の形状の違いによる影響の検討」
急性期病院での後方視データ、ならびに回復期リハ病院における後方視データの解析を行い、急性期病院における胃瘻造設は脳卒中発症から約1カ月で造設されている一方で、回復期リハ病院での胃瘻造設は脳卒中発症から平均3カ月以上経過してから造設されていること、および胃瘻患者に対する半固形化栄養の実施率は50%に留まっていることが明らかとなり、半固形化栄養と併せて所謂「食べるためのPEG」を活用する余地があることが示唆された。これらの結果をもとに、経管栄養を要する患者で胃瘻造設予定の患者を対象として、栄養投与経路と栄養剤の形状別に患者の苦痛や栄養剤投与にかかる時間、有害事象を評価する研究計画を立案し、実施施設として回復期リハ病棟協会加盟の4施設から実施承諾を得て、倫理審査承認後、研究が開始された。平成26年1月より登録を開始し、現在研究継続中である。
結論
現在実施中の上記3件の研究を完遂させ、その結果を解析の上、急性期・回復期・生活期における医療資源配分や地域特性を考慮した栄養管理・摂食機能訓練のアルゴリズムを立案する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201310013Z