文献情報
文献番号
201310008A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防事業の進捗管理と効果評価のためのデータ整備に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、自治体・社会環境(地域)・個人の3つの視点で、介護予防の進捗管理と効果評価を行うためのデータセットを確立し、その活用方策を提示することである。
自治体の視点では、介護予防のサービス提供量と要介護認定率との関連を解析して、介護予防の効果を検証する。
社会環境の視点では、地域における介護予防資源の需給バランスをGeographic Information System(GIS)分析で検討する。これにより、資源の地域偏在をチェックし、介護予防資源の適正配置のあり方を提言する。
個人の視点では、地域高齢者のコホート研究をもとに高齢期の生活習慣・生活行動(とくに高齢者の行動変容)が機能低下に及ぼす影響を検討する。これにより、高齢期における健康づくり・介護予防のあり方を提案する。
これらを通じて、介護予防事業の効果的な実施、健康寿命の延伸と介護保険財政の適正化に資するものである。
自治体の視点では、介護予防のサービス提供量と要介護認定率との関連を解析して、介護予防の効果を検証する。
社会環境の視点では、地域における介護予防資源の需給バランスをGeographic Information System(GIS)分析で検討する。これにより、資源の地域偏在をチェックし、介護予防資源の適正配置のあり方を提言する。
個人の視点では、地域高齢者のコホート研究をもとに高齢期の生活習慣・生活行動(とくに高齢者の行動変容)が機能低下に及ぼす影響を検討する。これにより、高齢期における健康づくり・介護予防のあり方を提案する。
これらを通じて、介護予防事業の効果的な実施、健康寿命の延伸と介護保険財政の適正化に資するものである。
研究方法
自治体の視点では「一次予防事業の利用率と新規要介護認定率との関連:保険者間の比較研究」として、全国1,571ヵ所の介護保険者を対象に公的統計データを用いて平成18~20年度の一次予防事業(一般高齢者施策)の平均利用率と平成21・22年度の新規要介護認定率との関係をエコロジカル研究の手法で検討した。
社会環境の視点では「仙台市における二次予防事業対象者の出現頻度」として、仙台市健康福祉局介護予防推進室の協力を得て、仙台市全体および町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度を算出し、GIS分析によりグラフ化した。
個人の視点では、既存の高齢者コホートを用いて、基本チェックリストの妥当性に年齢が与える影響を検討した。
すべての研究は「疫学研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けた。
社会環境の視点では「仙台市における二次予防事業対象者の出現頻度」として、仙台市健康福祉局介護予防推進室の協力を得て、仙台市全体および町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度を算出し、GIS分析によりグラフ化した。
個人の視点では、既存の高齢者コホートを用いて、基本チェックリストの妥当性に年齢が与える影響を検討した。
すべての研究は「疫学研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けた。
結果と考察
平成18~21年度の一次予防事業の平均利用率により全国1,627保険者を5群に分類した。アウトカム指標は、高齢人口あたりの新規要介護認定の割合(新規要介護認定率)で、平成21年度と平成22年度の合算値とした。利用率による5群の間で、アウトカム指標を共分散分析により比較した。全認定区分の新規要介護認定率は、一次予防事業の実施量が多いことによる有意な発生率比の減少を認めなかった。以上のように、一次予防事業の実施が多い保険者ほど、その後の新規要介護認定率が低いというような、一次予防事業の効果を支持する関連はみられなかった。
仙台市における「二次予防事業対象者データ」から平成23年度分11,835名と平成24年度分13,451名を合算した25,286名の二次予防事業対象者を集計し、既存の人口データを用いて、高齢人口あたりの二次予防事業対象者の割合を算出した。また地理情報システムを用い、町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度について地図によるグラフ化を行った。二次予防事業対象者割合は12.8%と、昨年度に奇数年齢者のみのデータから推定した割合(12.1%)と同程度であった。また町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度については、偏在していた。
宮城県大崎市の高齢者14,636名を対象に、基本チェックリスト回答状況に応じた1年間の新規要介護認定発生のオッズ比とROC曲線下面積を年齢階級別(65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85歳以上)に算出した。いずれの年齢階級でも、二次予防事業の対象者の選定基準に該当した者は、要介護認定発生の性別調整オッズ比が有意に高かった(P<0.0001)。しかし、年齢が高いほどオッズ比(点推定値)が低い傾向にあり、年齢階級との交互作用は有意であった(P<0.001)。一方、該当基準とされている4種のいずれの分野でも、年齢が高いほどROC曲線下面積が低い傾向にあった(P=0.123~0.607)。以上より、基本チェックリストの予測妥当性は年齢が高い者ほど低い傾向にあることが分かった。
仙台市における「二次予防事業対象者データ」から平成23年度分11,835名と平成24年度分13,451名を合算した25,286名の二次予防事業対象者を集計し、既存の人口データを用いて、高齢人口あたりの二次予防事業対象者の割合を算出した。また地理情報システムを用い、町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度について地図によるグラフ化を行った。二次予防事業対象者割合は12.8%と、昨年度に奇数年齢者のみのデータから推定した割合(12.1%)と同程度であった。また町丁字レベルの二次予防事業対象者の頻度については、偏在していた。
宮城県大崎市の高齢者14,636名を対象に、基本チェックリスト回答状況に応じた1年間の新規要介護認定発生のオッズ比とROC曲線下面積を年齢階級別(65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85歳以上)に算出した。いずれの年齢階級でも、二次予防事業の対象者の選定基準に該当した者は、要介護認定発生の性別調整オッズ比が有意に高かった(P<0.0001)。しかし、年齢が高いほどオッズ比(点推定値)が低い傾向にあり、年齢階級との交互作用は有意であった(P<0.001)。一方、該当基準とされている4種のいずれの分野でも、年齢が高いほどROC曲線下面積が低い傾向にあった(P=0.123~0.607)。以上より、基本チェックリストの予測妥当性は年齢が高い者ほど低い傾向にあることが分かった。
結論
自治体・社会環境(地域)・個人の3つの視点で、介護予防の進捗管理と効果評価を行うためのデータセットを確立し、その活用方策を提示することを目的に、本年度は以下の結果を得た。
一次予防事業の実施が多い保険者ほど新規要介護認定率が低いという関連はみられず、一次予防事業により要介護高齢者の発生を抑制できるかは明らかでなかった。
仙台市全体の高齢人口あたりの二次予防事業対象者の頻度は12.8%と、昨年度に奇数年齢の高齢者集団(標本)から推定した値(12.1%)と同程度であった。
基本チェックリストの現行の選定基準は、いずれの年齢層でも1年間の要介護認定の新規発生を有意に予測するものの、その予測妥当性は年齢が高い者ほど低い傾向にあった。
一次予防事業の実施が多い保険者ほど新規要介護認定率が低いという関連はみられず、一次予防事業により要介護高齢者の発生を抑制できるかは明らかでなかった。
仙台市全体の高齢人口あたりの二次予防事業対象者の頻度は12.8%と、昨年度に奇数年齢の高齢者集団(標本)から推定した値(12.1%)と同程度であった。
基本チェックリストの現行の選定基準は、いずれの年齢層でも1年間の要介護認定の新規発生を有意に予測するものの、その予測妥当性は年齢が高い者ほど低い傾向にあった。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
-