文献情報
文献番号
201310005A
報告書区分
総括
研究課題名
虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究
課題番号
H24-長寿-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
研究分担者(所属機関)
- 菊谷 武(日本歯科大学大学院生命歯科研究科)
- 東口 高志(藤田保健衛生大学)
- 高田 和子((独)国立保健・栄養研究所 栄養教育研究部)
- 大渕 修一(独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
有効な虚弱予防を達成するために、その最たる病態である筋肉減弱症(サルコぺニア)の解明が必須である。本研究では、食環境の悪化から始まり虚弱・サルコぺニアを経て、最終的には生活機能障害に至る構造に着目した新概念『食の加齢症候群』を構築した。主目的としてこの新規概念の妥当性を検証することにより、高齢者に虚弱予防の最上流における食の重要さを再認識させ、より早期から気づきを与えることである。すでに平成24年度調査の横断解析により、サルコぺニアへの初期予測因子として食の偏りや歯科口腔系の不具合が重要であることを同定した。25年度は1年間の追跡データから縦断検討を行い、虚弱の関連要因を身体・精神・社会性などの幅広い視点から横断的かつ縦断的に解析することで、包括的アプローチを視野に早期介入ポイントを明らかにする。
研究方法
千葉県柏市在住の満65歳以上の高齢者2044人(平均73.0±5.5歳:無作為抽出)を対象として、平成24年度に巡回型の『栄養とからだの健康増進調査』を実施、3年間の前向きコホート研究をした。平成25年度では1537名(平均年齢74.0±5.5歳)に追跡調査を実施した。調査項目は歯科口腔、身体能力・計測、体組成(筋肉量含)、社会・生活・心理・認知機能、食品・栄養素摂取などを評価した。
結果と考察
①1年間の追跡期間を経て男女とも身体機能の中で口腔機能の咀嚼力が顕著に低下し、さらに人とのつながりや認知機能、身体活動量も低下傾向を示した。
②サルコぺニア予備群への有意な予測因子は運動機能だけではなく、口腔機能(舌の運動力や舌圧など)や食品多様性、鬱傾向、ヘルスリテラシー、ソーシャルネットワーク、余暇活動量であった。サルコぺニア群へは口腔機能(咬合力や残存歯数など)や歯科受診頻度の低下、経済面、学歴、認知機能、食欲、睡眠障害が有意な予測因子であった。サルコぺニア新規罹患者は114名(9.2%)であり、罹患に関しては身体測定、運動機能(握力・ピンチ力・膝伸展力・最大歩行速度・立ち回りTUG)、運動習慣、牛乳・海藻の日常的摂取習慣が有意な予測因子であった。
③『食の加齢症候群』の仮説モデル構造を共分散構造分析・多母集団平均構造分析により検証したところ、「生活の広がり・社会性」因子が口腔機能や精神面に影響し、最終的には食事量低下などに影響を与え、サルコぺニアに至る構造が最も適合度が良値であった。1年間の追跡調査からも生活の広がり・社会性因子や精神面の悪化(うつ)が口腔機能に大きく影響した。
④サルコぺニアの1次スクリーニング法として『指輪っかテスト』の高予測力を証明し、1年間のサルコぺニア新規罹患も有意に予測し得ることを確認した。そこに質問票を加えた形でのサルコぺニア危険度を得点化し得る、高い予測力の簡易スクリーニング法およびカットオフ値を開発した。同時に、握力、下腿周囲長、体重を用いて四肢骨格筋量を推定する予測式を開発した。また下腿周囲長のみでの最も簡便な推定式も開発し、十分な予測能を確認した。
⑤直近1年間の転倒に対するサルコぺニアと鬱傾向の悪影響とその負の相乗効果を縦断的に解析し、周辺環境(近所に商店がある、交通整備)が身体的因子とは異なる独立した予測因子であることを同定した。
⑥社会性に焦点を当て、ソーシャルフレイル群、予備群を位置づけ、ソーシャルフレイルが鬱傾向や低栄養リスクの予測因子であることを横断的に同定した。また、同居者がいるにも関らず、食事を一人で食べる(孤食)場合に、最も鬱傾向との関連性が高かった。
⑦サルコぺニアとメタボリック症候群(MetS)の関連では、MetSは前期高齢男性でサルコペニアのリスクと正に関連していた。MetSが筋肉量や機能に与える影響は性や年齢によって異なることが示唆され、特に男性ではサルコぺニア肥満と鬱との関連がみられた。
⑧高齢者における不適切薬剤の使用および多剤併用の実態を調査し、これらが髙頻度でみられることがわかった。
②サルコぺニア予備群への有意な予測因子は運動機能だけではなく、口腔機能(舌の運動力や舌圧など)や食品多様性、鬱傾向、ヘルスリテラシー、ソーシャルネットワーク、余暇活動量であった。サルコぺニア群へは口腔機能(咬合力や残存歯数など)や歯科受診頻度の低下、経済面、学歴、認知機能、食欲、睡眠障害が有意な予測因子であった。サルコぺニア新規罹患者は114名(9.2%)であり、罹患に関しては身体測定、運動機能(握力・ピンチ力・膝伸展力・最大歩行速度・立ち回りTUG)、運動習慣、牛乳・海藻の日常的摂取習慣が有意な予測因子であった。
③『食の加齢症候群』の仮説モデル構造を共分散構造分析・多母集団平均構造分析により検証したところ、「生活の広がり・社会性」因子が口腔機能や精神面に影響し、最終的には食事量低下などに影響を与え、サルコぺニアに至る構造が最も適合度が良値であった。1年間の追跡調査からも生活の広がり・社会性因子や精神面の悪化(うつ)が口腔機能に大きく影響した。
④サルコぺニアの1次スクリーニング法として『指輪っかテスト』の高予測力を証明し、1年間のサルコぺニア新規罹患も有意に予測し得ることを確認した。そこに質問票を加えた形でのサルコぺニア危険度を得点化し得る、高い予測力の簡易スクリーニング法およびカットオフ値を開発した。同時に、握力、下腿周囲長、体重を用いて四肢骨格筋量を推定する予測式を開発した。また下腿周囲長のみでの最も簡便な推定式も開発し、十分な予測能を確認した。
⑤直近1年間の転倒に対するサルコぺニアと鬱傾向の悪影響とその負の相乗効果を縦断的に解析し、周辺環境(近所に商店がある、交通整備)が身体的因子とは異なる独立した予測因子であることを同定した。
⑥社会性に焦点を当て、ソーシャルフレイル群、予備群を位置づけ、ソーシャルフレイルが鬱傾向や低栄養リスクの予測因子であることを横断的に同定した。また、同居者がいるにも関らず、食事を一人で食べる(孤食)場合に、最も鬱傾向との関連性が高かった。
⑦サルコぺニアとメタボリック症候群(MetS)の関連では、MetSは前期高齢男性でサルコペニアのリスクと正に関連していた。MetSが筋肉量や機能に与える影響は性や年齢によって異なることが示唆され、特に男性ではサルコぺニア肥満と鬱との関連がみられた。
⑧高齢者における不適切薬剤の使用および多剤併用の実態を調査し、これらが髙頻度でみられることがわかった。
結論
本年度までの研究により、サルコぺニア・予備群そして新規罹患の予測因子を同定しつつ『食の加齢症候群』の仮説検証を行い、栄養/口腔・運動・社会性の重要性が確認された。介護予防事の有効性に向けて簡易スクリーニング法も開発し、これらの成果を医療機関への受療機会のみではなく、日常生活において自助・互助・共助の精神の下、高齢者に虚弱・サルコぺニアに対する早期の気づきを与え、顕在化していない生活機能障害や食欲減退因子の存在に対してより早くから意識させることに繋げる。それにより健康増進への興味も高まり、継続性の高いコミュニティー活動や国民運動論に発展していく可能性がある。最終年度はさらなる追跡調査解析から仮説検証をより強固なものにし、さらにメッセージを発信していく。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
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