文献情報
文献番号
201310004A
報告書区分
総括
研究課題名
未受診・未回収対策を含めた介護予防標準化に向けたテーラーメード型介護予防法の開発
課題番号
H24-長寿-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 青山朋樹(京都大学 医学研究科 )
- 大倉美佳(京都大学 医学研究科 )
- 山田実(京都大学 医学研究科 )
- 荻田美穂子(京都精華女子大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
介護予防に関するチラシをポスティング配布することによる介護予防への有用性、その短期効果の一つとして身体活動量に対する効果を検証するとともに高齢者の健康・生活実態を把握する。
研究方法
研究1.介護予防事業の効果検証
クラスターRCTを実施するため無作為に9小学校区を介入エリア、別の9区をコントロールエリアとし、1年間月に1度介護予防に関するチラシをポスティング配布した。介入期間の前後に郵送式のアンケート調査によって生活状況や身体活動等を調査した。
研究2.未受診・未回収調査
基本チェックリスト、生活実態、主観的な健康観や健康に対する受け止め方、未受診の理由や健診に対する考え方を調査した。介護保険認定者、入院・施設入所を除く高齢者を対象とし郵送調査を実施した。その後未回収者を訪問調査の対象者とし、聞き取り調査を行った。
クラスターRCTを実施するため無作為に9小学校区を介入エリア、別の9区をコントロールエリアとし、1年間月に1度介護予防に関するチラシをポスティング配布した。介入期間の前後に郵送式のアンケート調査によって生活状況や身体活動等を調査した。
研究2.未受診・未回収調査
基本チェックリスト、生活実態、主観的な健康観や健康に対する受け止め方、未受診の理由や健診に対する考え方を調査した。介護保険認定者、入院・施設入所を除く高齢者を対象とし郵送調査を実施した。その後未回収者を訪問調査の対象者とし、聞き取り調査を行った。
結果と考察
研究1.介入地区でチラシを見ていたのは1,282名(42.9%)、意識が変化したのは741名(24.8%)、習慣が変化したのは490名(16.4%)、新たに運動習慣を獲得したのは409名(13.7%)であり、チラシを配付することにより介入地区では1週間あたりの運動時間が約60分増加した。特に60歳以上の高齢者では運動時間と骨格筋のパフォーマンスが直線関係にあることも報告されており、運動時間の増加は介護予防に寄与するものと考えられた。
研究2.高齢者5,401名のうち郵送回収者数は3,952名(回収率73.2%)であった。郵送調査の未回収者に聞き取り調査を行った結果、訪問調査協力者は1,142名(回収率78.8%)、3回以上訪問したが不在であった者は77名(5.3%)、調査拒否者は228名(15.7%)であった。全体の回収者は5,040名(回収率94.3%)であった。
日常的な運動・動作についての特徴としては、女性は男性に比べ以前よりも歩行速度が低下したと自覚しており、継続した歩行を行っている者の割合が低かった。外出を控えたり、億劫になると回答した者は全体の37%を占め男性より女性で高かった。理由としては、足腰などの痛みと回答した者が最も高く、ついで階段や坂道が辛いであった。社会参加・地域交流についての特徴としては、預貯金の出し入れは全体の78%が行っており、男性より女性で割合が高かった。
物忘れについての特徴としては、男性は女性よりも認知機能に関する項目に該当する者の割合が高かった。うつについての特徴としては、うつに関する5項目全てにおいて、年齢が上がるにつれ該当する者の割合が高くなる傾向が認められた。運動機能・閉じこもりに該当する者の割合は女性が高く、口腔機能・認知機能に該当する者の割合は男性が高かった。運動機能の低下を自覚している者の割合については、女性が男性に比べて高く、そのため、階段や起立時の手すり使用、杖歩行といった生活上の運動動作を補助している割合が高いことにつながっていたと考えられる。一方、ほぼ毎日の趣味や習い事、ボランティア活動を行っていた割合は、男性が女性に比べて多かった。これらの結果を踏まえ、社会参加・地域交流を深める・広げるアプローチを検討する際には、性差に応じた考慮が必要である。栄養状態・口腔機能、認知機能およびうつ支援に関する項目に該当する者の割合は、年齢階級が上がるにつれて増加傾向であり、女性に比べて男性の割合が高くなる傾向が認められた。この結果から、早期からの男性へのアプローチが重要であることが示唆された。今後、生活実態の各項目がどのように、またどの程度介護リスク要因として関係しているのかを多変量解析していく際には、性別および年齢を調整因子として分析・検討していく必要がある。厚生労働省によると、全国における基本チェックリスト回収率62.7%のうち、二次予防事業対象の該当割合は21.7%であり、生活機能チェック・検査による該当者も合わせた二次予防事業対象者総数を基本チェックリスト配付数で除した割合は15.6%となる。これらの値とB町を比較すると、全数、把握方法の内訳(郵送回収群、訪問協力群) のいずれにおいても該当割合は低値であった。今後は本研究結果をベースラインとし、追跡調査をすることによって、要介護高齢者の発生割合・介護度の推移に影響する特定健診データや医療費との関連を明らかにしていくとともに、多変量解析を用いてリスク要因を検討していく予定である。
研究2.高齢者5,401名のうち郵送回収者数は3,952名(回収率73.2%)であった。郵送調査の未回収者に聞き取り調査を行った結果、訪問調査協力者は1,142名(回収率78.8%)、3回以上訪問したが不在であった者は77名(5.3%)、調査拒否者は228名(15.7%)であった。全体の回収者は5,040名(回収率94.3%)であった。
日常的な運動・動作についての特徴としては、女性は男性に比べ以前よりも歩行速度が低下したと自覚しており、継続した歩行を行っている者の割合が低かった。外出を控えたり、億劫になると回答した者は全体の37%を占め男性より女性で高かった。理由としては、足腰などの痛みと回答した者が最も高く、ついで階段や坂道が辛いであった。社会参加・地域交流についての特徴としては、預貯金の出し入れは全体の78%が行っており、男性より女性で割合が高かった。
物忘れについての特徴としては、男性は女性よりも認知機能に関する項目に該当する者の割合が高かった。うつについての特徴としては、うつに関する5項目全てにおいて、年齢が上がるにつれ該当する者の割合が高くなる傾向が認められた。運動機能・閉じこもりに該当する者の割合は女性が高く、口腔機能・認知機能に該当する者の割合は男性が高かった。運動機能の低下を自覚している者の割合については、女性が男性に比べて高く、そのため、階段や起立時の手すり使用、杖歩行といった生活上の運動動作を補助している割合が高いことにつながっていたと考えられる。一方、ほぼ毎日の趣味や習い事、ボランティア活動を行っていた割合は、男性が女性に比べて多かった。これらの結果を踏まえ、社会参加・地域交流を深める・広げるアプローチを検討する際には、性差に応じた考慮が必要である。栄養状態・口腔機能、認知機能およびうつ支援に関する項目に該当する者の割合は、年齢階級が上がるにつれて増加傾向であり、女性に比べて男性の割合が高くなる傾向が認められた。この結果から、早期からの男性へのアプローチが重要であることが示唆された。今後、生活実態の各項目がどのように、またどの程度介護リスク要因として関係しているのかを多変量解析していく際には、性別および年齢を調整因子として分析・検討していく必要がある。厚生労働省によると、全国における基本チェックリスト回収率62.7%のうち、二次予防事業対象の該当割合は21.7%であり、生活機能チェック・検査による該当者も合わせた二次予防事業対象者総数を基本チェックリスト配付数で除した割合は15.6%となる。これらの値とB町を比較すると、全数、把握方法の内訳(郵送回収群、訪問協力群) のいずれにおいても該当割合は低値であった。今後は本研究結果をベースラインとし、追跡調査をすることによって、要介護高齢者の発生割合・介護度の推移に影響する特定健診データや医療費との関連を明らかにしていくとともに、多変量解析を用いてリスク要因を検討していく予定である。
結論
1)介護予防に関するチラシ配布によって、介入地区では1週間あたりの運動時間が約60分増加し、有効性が示された。
2)B町は全国に比べて、主観的健康観も高く、実質的な元気高齢者の割合が多い地域であることが示唆された。今後は、全国平均的な町との比較検討によって、元気高齢者の割合が多い要因分析を明確にし、先駆的な地域としてモデル発信する。
2)B町は全国に比べて、主観的健康観も高く、実質的な元気高齢者の割合が多い地域であることが示唆された。今後は、全国平均的な町との比較検討によって、元気高齢者の割合が多い要因分析を明確にし、先駆的な地域としてモデル発信する。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
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