文献情報
文献番号
201309048A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研究・治験における大規模災害時の対応指針の作成に関する研究
課題番号
H24-臨研基-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武田 和憲(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 楠岡 英雄(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 院長)
- 山本 学(日本医師会治験促進センター 研究事業部)
- 石橋 寿子(聖路加国際病院 研究管理部)
- 田代 志門(昭和大学 研究支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2011年3月11日に発生した東日本大震災は東北地方の太平洋沿岸を中心とした巨大地震と大津波により未曾有の大規模被害をもたらし、被災地以外の地域においても広範囲に臨床研究や治験の実施に影響を及ぼした。本研究は臨床研究・治験活性化5か年計画2012アクションプランに基づいて、大規模災害が発生した際の被験者の安全性確保についての具体的なマニュアルを作成するとともに、データの信頼性確保等の在り方についても現状の見直しと検討を行い、成果物として「臨床研究・治験における大規模災害時の対応指針」を作成することを目的とした。
研究方法
平成24年度は平成23年度厚生労働科学研究費補助金(医療技術実用化総合研究事業)東日本大震災が治験等に及ぼした影響の調査と今後の対策に関する研究班(研究代表者:楠岡英雄)の全国アンケート調査および聞き取り調査1)、日本製薬工業協会、医療機器産業連合会による調査報告をもとに大震災時にみられた不具合事象と対応の検証を行い、これに基づいて臨床研究・治験における大規模災害時の対応指針の素案を作成した。平成25年度はパブリックコメントに従い素案に対するご意見を広く聴取し、素案を再検討し指針を作成した。
結果と考察
指針の構成は以下の6項目とした。(1)東日本大震災が臨床研究・治験に及ぼした影響と今後の対応、(2)医療機関における大規模災害時の臨床研究・治験対応マニュアル(雛形)、(3)希少疾患、ならびに医師主導治験における大規模災害時対応、(4)大規模災害への対応マニュアルの作成のための指針(治験依頼者)、(5)臨床研究・治験における大規模災害による停電への対応マニュアル、(6)原資料・必須資料・データバックアップのための方策。
治験における大規模災害対応マニュアルは治験実施医療機関・治験依頼者双方に必須であり、被験者の安全性確保の観点から大規模災害が発生した場合の行動基準について双方が事前に協議し合意を形成しておくことが重要である。治験実施医療機関は被験者の安全性確保を最優先事項とし、治験依頼者との複数の連絡方法や通信手段の確保、災害時の治験薬の供給方法、治験継続の可否、IRB開催不能に陥った場合の対応等を事前に検討し、マニュアルを整備しておくことが重要である。治験依頼者においても被験者の安全性確保は最優先事項であり、特に大規模災害時における治験薬の安定供給のため治験薬の製造、輸入、管理、配送まで包括的に関係者、関係機関との間で取り決めを行い、万全を期すことが望まれる。臨床研究や医師主導治験においては調整事務局の役割がきわめて大きく、調整事務局が被災した場合を想定した対策が必要であり、代替の調整事務局を準備するなど事前の取り決めが重要である。データの信頼性確保の観点からは、遠隔地へのデータのバックアップや共用バックアップサイトの構築が望まれる。パブリックコメントでは、データのバックアップや共用サイトに関する費用、電磁的記録の作成・保存に関する手順の普及が課題とのご意見をいただいた。
治験における大規模災害対応マニュアルは治験実施医療機関・治験依頼者双方に必須であり、被験者の安全性確保の観点から大規模災害が発生した場合の行動基準について双方が事前に協議し合意を形成しておくことが重要である。治験実施医療機関は被験者の安全性確保を最優先事項とし、治験依頼者との複数の連絡方法や通信手段の確保、災害時の治験薬の供給方法、治験継続の可否、IRB開催不能に陥った場合の対応等を事前に検討し、マニュアルを整備しておくことが重要である。治験依頼者においても被験者の安全性確保は最優先事項であり、特に大規模災害時における治験薬の安定供給のため治験薬の製造、輸入、管理、配送まで包括的に関係者、関係機関との間で取り決めを行い、万全を期すことが望まれる。臨床研究や医師主導治験においては調整事務局の役割がきわめて大きく、調整事務局が被災した場合を想定した対策が必要であり、代替の調整事務局を準備するなど事前の取り決めが重要である。データの信頼性確保の観点からは、遠隔地へのデータのバックアップや共用バックアップサイトの構築が望まれる。パブリックコメントでは、データのバックアップや共用サイトに関する費用、電磁的記録の作成・保存に関する手順の普及が課題とのご意見をいただいた。
結論
平成25年度は成果物として「臨床研究・治験における大規模災害時の対応指針」を作成した。治験においては被験者の安全性確保を第一優先とし、依頼者・実施医療機関相互の緊急時連絡体制の整備、災害時の治験薬の供給方法、治験継続の可否、IRB開催不能に陥った場合の対応等に関する事前の合意形成が重要である。また、データの信頼性確保の観点からは、遠隔地へのデータのバックアップや共用バックアップサイトの構築が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
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