文献情報
文献番号
201309047A
報告書区分
総括
研究課題名
高度医療残存聴力活用型人工内耳挿入術の適応症および有効性、安全性に関する調査研究
課題番号
H24-被災地域-指定-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター )
- 高橋 晴雄(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・統計部外科学分野)
- 東野 哲也(宮崎大学医学部耳鼻咽喉科)
- 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院耳鼻咽喉科)
- 岩崎 聡(信州大学医学部人工聴覚器学講座)
- 工 穣(信州大学医学部耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
44,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難聴はコミュニケーションの大きな障害となるだけでなく、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こすため適切な介入が重要である。
研究代表者らは、平成20年~22年度にかけて、厚生労働科学研究費を受けて、遺伝子診断に基づく難聴のサブタイプ分類と、サブタイプに応じた適切な介入法に関する研究を行い、研究成果を先進医療「先天性難聴の遺伝子診断」として臨床に還元してきた。遺伝子解析研究を行い難聴のサブタイプ分類を進める中で、難聴患者の約10%が高音急墜型の聴力像を示すことが明らかとなったが、高音急墜型の聴力像を呈する難聴患者は従来の人工内耳の適応外であり、また補聴器での聴取は困難な場合が多いため、保険診療の範囲内に有効な治療法は無い状況であった。
近年、高音急墜型難聴に対する新しい治療法として、低音部は音響刺激、高音部は電気刺激により聴神経を刺激する「残存聴力活用型人工内耳」が開発され、欧米を中心に臨床応用が進められている。本邦では当施設がこの新しい人工内耳を高度医療(第3項先進医療)として申請し、2010年7月に承認を得て臨床研究を開始した。
本研究では、残存聴力活用型人工内耳の適応症、有効性および安全性に関する研究を行い、本医療の科学的エビデンス(特に日本語話者に対する有効性に関するエビデンス)を蓄積することで、本先進医療(B)を早期に実用化することを目的とした。
研究代表者らは、平成20年~22年度にかけて、厚生労働科学研究費を受けて、遺伝子診断に基づく難聴のサブタイプ分類と、サブタイプに応じた適切な介入法に関する研究を行い、研究成果を先進医療「先天性難聴の遺伝子診断」として臨床に還元してきた。遺伝子解析研究を行い難聴のサブタイプ分類を進める中で、難聴患者の約10%が高音急墜型の聴力像を示すことが明らかとなったが、高音急墜型の聴力像を呈する難聴患者は従来の人工内耳の適応外であり、また補聴器での聴取は困難な場合が多いため、保険診療の範囲内に有効な治療法は無い状況であった。
近年、高音急墜型難聴に対する新しい治療法として、低音部は音響刺激、高音部は電気刺激により聴神経を刺激する「残存聴力活用型人工内耳」が開発され、欧米を中心に臨床応用が進められている。本邦では当施設がこの新しい人工内耳を高度医療(第3項先進医療)として申請し、2010年7月に承認を得て臨床研究を開始した。
本研究では、残存聴力活用型人工内耳の適応症、有効性および安全性に関する研究を行い、本医療の科学的エビデンス(特に日本語話者に対する有効性に関するエビデンス)を蓄積することで、本先進医療(B)を早期に実用化することを目的とした。
研究方法
先進医療(B)「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の患者選定基準を満たす症例を対象に、十分な説明の上、書面で同意を取得して残存聴力活用型人工内耳挿入術を実施した。全例とも、MedEL社のPULSAR FLEX EASインプラント(電極長:24mm)を用い、正円窓アプローチによる電極挿入を行った。手術完了後後約1ヶ月時点で体外器を装用を開始し、機器調整を繰り返しながら術後評価を実施した。術後評価としては、人工内耳挿入術前後の聴力閾値の変化および残存聴力活用型人工内耳の装用効果(装用閾値)および日本語話者における有効性に関する評価(語音弁別検査)を行った。また、安全性評価項目としては、術前および術中の機械の確認と、手術後1ヶ月の術部の確認および検査期間を通じての有害事象の有無に関して検討を行った。人工内耳機器の不具合に関しては、手術前および術中に、人工内耳インプラントの各電極の抵抗インピーダンスを測定し不具合が無いことを確認した。また、術後1ヶ月後に人工内耳機器のマッピングを行なう際に人工内耳挿入電極の各チャンネルの不良の有無を確認した。
結果と考察
平成25年度は、当初の計画通り、前年度までに先進医療(B)「残存聴力活用型人工内耳挿入術」を実施した症例(全24症例)を対象に人工内耳装用後1ヶ月時、3ヶ月時、6ヶ月時および12ヶ月時の有効性主要評価項目、有効性副次評価項目、その他の評価項目および安全性評価項目の検査および評価を実施した。その結果、先進医療(B)「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性主要評価項目である自由音場閾値検査に関しては24例中24例と全例に有効であった。また、もう一つの有効性主要評価項目である日本語の聴取能力を評価する語音弁別検査に関しては24例中21例が有効、3例は不変であり、と術前と比較して有意に改善を認めており、有効性に関するエビデンスを明らかにすることができた。
また、製造・販売業者であるメドエルジャパン株式会社との連携により、PMDAの薬事承認申請に向けた対面相談を行い、欧州での治験のデータに、本高度医療「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性・安全性のデータを参考資料として添付して薬事申請を行った。その結果、本研究事業の成果が活用され平成25年9月に薬事承認を得ることが出来た。
また、製造・販売業者であるメドエルジャパン株式会社との連携により、PMDAの薬事承認申請に向けた対面相談を行い、欧州での治験のデータに、本高度医療「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性・安全性のデータを参考資料として添付して薬事申請を行った。その結果、本研究事業の成果が活用され平成25年9月に薬事承認を得ることが出来た。
結論
本研究により、先進医療(B)「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性に関する検討を行った結果、全例において低音部の残存聴力を温存することが可能であった。また、装用閾値に関しても、全周波数にわたり30~40dBの装用閾値が得られ、高音部に関しては顕著に改善が認められることが明らかとなった。また。日本語話者における有効性を検討し、日本語の語音弁別にも有効であることを明らかにした。本研究により、本医療の有効性に関する医学的なエビデンスを示すことができたと考えられる。
また、本医療の有効性を示す参考資料として、欧州での治験のデータに加えて、本高度医療「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性・安全性のデータを参考資料として添付して薬事申請を行い、薬事承認を得る事ができた。研究事業の成果が活用され、薬事承認を得ることができたことで、研究成果を実際の臨床に還元することができた成功事例であると考えられる。
また、本医療の有効性を示す参考資料として、欧州での治験のデータに加えて、本高度医療「残存聴力活用型人工内耳挿入術」の有効性・安全性のデータを参考資料として添付して薬事申請を行い、薬事承認を得る事ができた。研究事業の成果が活用され、薬事承認を得ることができたことで、研究成果を実際の臨床に還元することができた成功事例であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
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