標準治療抵抗性の抗心筋自己抗体を有する重症心不全患者に対する免疫吸着療法

文献情報

文献番号
201309036A
報告書区分
総括
研究課題名
標準治療抵抗性の抗心筋自己抗体を有する重症心不全患者に対する免疫吸着療法
課題番号
H25-医療技術-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
馬場 彰泰(北里大学 北里研究所病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療が進歩する現代においても、心臓移植や人工心臓の主な適応となる拡張型心筋症の予後は改善していない。しかし平成24年8月の臨床報告では、重症心不全に対する免疫吸着療法が奏功した76/108例(約70%)の5年生存率は70%と、非奏功例の5年生存率25%よりも有意に改善していた。当初は心臓移植の候補となっていながら、免疫吸着療法を行うことで、心臓移植待機リストから外された症例が数多く存在する。このように重症心不全に対する免疫吸着療法は欧州を中心に400例以上実施され、心臓移植の代替治療として期待されている。
本邦においても拡張型心筋症の液性免疫異常の研究は行われており、治療機序から考えて使用する医療機器は欧米製より本邦製品が優れていること、治療奏功例を予測する検査も治療前に行えること、が判明している。さらに平成22年初からは国内多施設(当院,東京大学病院,国立循環器病センター,慶應義塾大学病院,北里大学病院等)での治験が開始され、平成24年11月には治験終了が終了した。
しかしながら治療機序となる標的自己抗体「心抑制性抗心筋自己抗体」のバイオアッセイが本治験では行うことができず、結果として薬事承認のために補完的データが必要となる可能性も存在していた。これに対して平成24年12月より先進医療Bとして開始した本臨床研究の結果が期待されている。
本研究は、企業治験による薬事承認取得後の「保険適応条件の設定」に対して、補完的役割を果たすことを当初の目的とした。すなわち以下3点、(1)当該療法の対象疾患、(2)一連で行う場合の実施回数(1クールあたりの実施回数)、(3)一定期間内の実施限度回数、を明らかにする。
研究方法
本研究では、心筋自己抗体を有する慢性心不全患者に対して、本邦医療機器イムソーバTR(AMT-0902-1,旭化成メディカル株式会社)による免疫吸着療法の用量反応、プラセボ群対照による、奏効率の有効性を探索的に検討する。基本デザインは第2相無作為化治療中止試験とする。適応基準は、治験対象外、心抑制性抗心筋自己抗体陽性、心不全の自覚症状がNYHA分類で2度以上、心筋核医学検査(QGS法)による左室駆出率が40%以下の症例とする。主要評価項目は左室駆出率(QGS法)とし、治療3か月後に同値が5%以上改善したものを「有効」と判断する。副次的観察項目は、心エコー図検査指標ならびに体重、6分間歩行テスト、心胸郭比、血漿ANP値およびBNP値、副作用の有無とする。治療後に、研究開始前の「抗心筋自己抗体」の種類によって、上記の観察項目における差異の有無を解析する。
結果と考察
本研究は平成25~27年度の3年間で合計27症例の被験者を対象としている。研究プロトコル通りに、試験開始前の「抗心筋自己抗体」の種類によって、左室駆出率(心筋シンチQGS法ならびに心エコー図検査)の差異を観察した。本年度(平成26年3月末)に合計9症例、平成26年4~5月に合計3例の試験参加者の登録があった。
のべ17クールの免疫吸着療法を初年度に実施した。「抗心筋自己抗体」をモニターしながら治療(免疫吸着療法)効果を評価しないと、適切な治療効果を判断できない可能性が示唆された。成人の場合には、小柄な方であれば、3回の免疫吸着療法にて心筋自己抗体が完全除去された。逆に、拡張型心筋症にかぎらず、たとえ体格が大きくても「抗心筋自己抗体」を完全除去できれば、治療3ヵ月後には左室駆出率が増加する症例が観察された。ただし、免疫吸着療法の間隔が著しくあいてしまうと(1~2年以上)、心筋自己抗体が陰化化しにくく、たとえ陰性化しても再び陽性化することがあり、期待される効果が得られない症例が観察された。自己抗体が再上昇することで、心機能がもとの悪い状況にもどり再治療を行うケース(いわゆるレスキュー治療)までの期間は最低3~6ヶ月であることが示唆された。
結論
初年度結果からは以下が妥当と考えられた。当該療法の対象となる慢性心不全(心筋自己抗体を有るもの)の実施回数は、一連につき月5回を限度とするが、最短3か月ごとに(心筋自己抗体が消失するまで)同回数を繰りかえして算定する。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309036Z