国民・患者への臨床研究・治験の普及啓発に関する研究

文献情報

文献番号
201309032A
報告書区分
総括
研究課題名
国民・患者への臨床研究・治験の普及啓発に関する研究
課題番号
H24-臨研基-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋邦彦(名古屋大学大学院医学系研究科臨床医薬学講座生物統計学分野)
  • 山本 学(社団法人日本医師会治験促進センター・研究事業部・薬剤開発管理)
  • 木内貴弘(大学病院医療情報ネットワーク/東京大学大学院医学系研究科・医療コミュニケーション学)
  • 伊藤俊之(独立行政法人国立国際医療研究センター・臨床研究センター臨床研究支援部・内科学)
  • 渡邊清高(独立行政法人国立がん研究センター・がん情報提供研究部医療情報コンテンツ研究室・医療情報学)
  • 伊藤澄信(独立行政法人国立病院機構本部総合研究センター・臨床薬理学/内科学/総合診療医学)
  • 武井貞治(独立行政法人医薬基盤研究所・医薬品医療機器の研究開発振興)
  • 武田伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター,神経内科学)
  • 篠崎 大(東京大学医科学研究所附属病院・外科)
  • 荻野大助(国立保健医療科学院・政策技術評価研究部)
  • 野口都美(国立保健医療科学院・政策技術評価研究部)
  • 藤井 仁(国立保健医療科学院・政策技術評価研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」において、「臨床研究(試験)情報検索ポータルサイト」は、実施中の臨床研究・治験に関する情報提供を求められており、JPRN3機関が収集したデータを統合しHP上で公開しているが、これは臨床試験・治験の登録情報の一部を羅列した者であり、利用者視点から見て必要な情報を効率的に収集できるものとなっていない。
この現状と政策的要請を踏まえ、(1)国内における患者および臨床試験・治験関係者を対象とした、情報に関する利用実態とニーズに関する調査をすること、(2).臨床試験・治験に関するより良い情報提供のあり方を検討し、検討結果を反映させた新しい情報提供サイトを構築すること、(3)臨床試験・治験に関連するJPRN3機関、国研等の情報提供、普及啓発に関する取り組みを協同して充実させ、さらにポータルサイドにおいて集約すること、の3つを研究の目的とした。
研究方法
(1)昨年度は一般住民、患者会に所属する患者、通院患者等を対象に臨床研究・治験情報に関する実態とニーズを探るアンケートを実施した。今年度はその補助的解析として、患者別のサブグループで情報に関する利用実態とニーズに関して分析した。(2)昨年度に実施した「臨床研究・治験」に関するウェブサイト改善に向けたアンケート調査の結果および昨年度に実施した患者会へのヒアリングの結果を参考にウェブサイトユーザビリティについて整理を行った。また、現在収集している臨床試験・治験情報だけでなく、関連する医療情報もまとめて検索ができるようにする「横断検索」機能の実装のために、国研等の信頼性の高いサイトよりいくつかを選び出し、情報の提供を依頼した。(3)JPRN3機関の臨床試験・治験の登録状況を明らかにするために、運用当初からの年度別登録件数の集計、項目別・年度別の集計をし、運用体制については聞き取り調査をした。また、臨床試験・治験の情報提供について、内容の充実を図り、各研究機関の新たな試みについてまとめた。
結果と考察
(1)いずれの患者群においても、普段の医療情報は医師から入手することが最も多い。臨床試験・治験の情報についても同様だが、一般的な医療情報と異なるのは、能動的な情報源であるインターネットの利用頻度が上がることである。臨床研究・治験情報の望ましい提供方法は、いずれの患者群でも「かかりつけ医師から口頭で」を選択することが最も多い。また、インターネットを情報提供の手段として期待する回答も多く、ウェブサイトは厚生労働省など国の機関が運営することを希望する回答が多い。しかし現実にはポータルサイトのアクセス数は低く、内容の充実、ポータル(検索)機能の拡充などを含め、改善が必要である。
(2)病気の解説、医薬品の解説、専門用語の解説などを国研や関係機関のサイトから直接読み出し表示する横断検索機能を加えた。検索処理において、表記のぶれを吸収し、検索語がハイライトされるように改修し、検索結果を見やすくした。データのフォーマットがJPRN3機関で異なることに起因する構成の複雑さは、技術的に吸収しうる問題ではなく、厚生労働省による関連各機関の調整が必須であるが、それ以外の部分は掲載情報を吟味し、全体のイメージが明快になるよう工夫した。
(3)英語による情報の掲載等の利便性向上の取り組みの効果もあってか、JPRN3機関のいずれにおいても登録数は順調に増加している。各研究機関においては、動画やパンフレットを用いた臨床試験の普及啓発、研究成果の公開等、新たな情報提供の取り組みが進められている。
結論
 昨年度から実施した臨床試験・治験に関する情報利用の実態、ニーズ調査により、国が求められている情報提供の方法、内容が明らかになった。臨床試験・治験に関する情報は、情報の信頼性の担保のため国の機関による提供が求められる。また、提供される内容は信頼性の高さだけでなく、広く一般に理解しやすいこと、望まれる情報が得られることが必要とされる。これら諸点に対応する形で、新しい臨床研究(試験)情報検索ポータルサイトのプロトタイプを構築し、技術的また運営上の課題を明らかにした。プロトタイプは、ユーザビリティの向上のため、類語検索機能、検索語のハイライト機能などを実装し、標準的な医薬品などの関連情報を関係機関のサイトから直接吸い出し表示するワンストップポータルとしての機能を有している。次年度以後、本研究を基にして、国立保健医療科学院の臨床研究(治験)情報ポータルサイトならびに関連諸機関における情報提供システムの改善を開始するための準備を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201309032B
報告書区分
総合
研究課題名
国民・患者への臨床研究・治験の普及啓発に関する研究
課題番号
H24-臨研基-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋邦彦(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 山本 学(社団法人日本医師会治験促進センター 研究事業部)
  • 木内貴弘(大学病院医療情報ネットワーク/東京大学大学院医学系研究科 医療コミュニケーション学)
  • 伊藤俊之(独立行政法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター臨床研究支援部)
  • 渡邊清高(独立行政法人国立がん研究センター がん情報提供研究部医療情報コンテンツ研究室)
  • 伊藤澄信(独立行政法人国立病院機構本部総合研究センター)
  • 武井貞治(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 武田伸一(独立行政法人国立精神 神経医療研究センター)
  • 篠崎 大(東京大学医科学研究所附属病院)
  • 荻野大助(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 野口都美(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 藤井 仁(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 臨床研究・治験活性化5か年計画2012において、臨床研究(試験)情報検索ポータルサイトは、実施中の臨床研究・治験に関する情報提供を求められており、JPRN3機関が収集したデータを統合しHP上で公開しているが、それは臨床試験・治験の登録情報の一部を羅列した者であり、利用者視点から見て必要な情報を効率的に収集できるものとなっていない。
これらの現状を踏まえ、平成24年度は(1).国内における患者・国民を対象とした臨床試験・治験の情報に関する利用実態、ニーズ調査(利用者側)、(2).国内外の臨床試験に関する実態調査・評価、登録情報検索のためのポータルサイトの比較調査(提供側)、加えて(3).情報提供のより良いシステム構築に向けての技術的課題の検討などを中心に調査研究を行った。また平成25年度には、(4).検討結果を反映させた新しい情報提供サイトのプロトタイプを構築すること、(5).臨床試験・治験に関連するJPRN3機関、国研等の情報提供、普及啓発に関する取り組みを集約すること、の2つを主目的として研究を進めた。
研究方法
 平成24年度は、利用者視点からの課題抽出を目的として、(1)患者、患者団体・家族会、(2)一般診療従事者、治験実施医師・医療機関、(3)医薬品開発者・企業、研究機関、研究者、(4)地域住民など具体的に想定される利用者集団を対象として、臨床試験・治験情報の利用実態と課題・要望に関するアンケート調査、解析を開始した。また、情報提供の現状調査として、(1)臨床研究に関する情報サイトに関する現状調査、(2)国内・海外の臨床研究関連機関の情報サイトの運営や体制に関する調査を実施し、情報提供システム構築の方策について検討した。
 平成25年度は、患者別に情報に関する利用実態とニーズに関して分析した。また、前年度からの調査結果を踏まえ、ポータルサイトの改善に向けて問題点を整理すると共に、プロトタイプの開発に着手した。あわせて、国立高度先進医療研究センター、国立病院機構、医薬基盤研究所等においても、各機関ウェブサイトの内容充実を図り、ポータルサイトとの情報連携に着手した。
結果と考察
【平成24年度】
一般国民を対象とした調査からは、臨床研究に関する情報を医師や薬局薬剤師から提供して欲しいと望んでいるが十分でなく、実際は臨床研究に関する情報をマスコミから得ざるをえない状況が明らかになった。主に難病・希少疾患に関する患者会会員への調査からは、医療情報の利用について、マスコミや医師・患者会が主な情報源であることが明らかとなった。また、臨床研究に関する情報サイトの現状に関する評価より、日米欧三極のうち、臨床研究・治験情報の公開が法令等で求められていないのは日本のみであり、行政側から何らかの法整備等が行われることが望ましいことが明示された。

【平成25年度】
臨床研究・治験情報の望ましい提供方法は、いずれの患者群でも「かかりつけ医師から口頭で」を選択することが最も多い。また、インターネットを情報提供の手段として期待する回答も多く、ウェブサイトは国の機関が運営することを希望する回答が多い。しかし現実にはポータルサイトのアクセス数は低く、治験情報のポータル機能と内容の拡充、情報提供体制の整備が望ましいと考えられた。
 情報ポータルのプロトタイプには、以下の機能を実装した。病気、医薬品、専門用語の解説などを国研等のサイトから直接読み出し表示する横断検索機能を加えた。検索処理において表記のぶれを吸収し、検索語がハイライトされるように改修した。データのフォーマットがJPRN3機関で異なることに起因する構成の複雑さは、技術的に吸収し得ないが、それ以外の部分は掲載情報を吟味し、全体のイメージが明快になるよう工夫した。
結論
 平成24年度には臨床試験・治験に関する情報利用の実態・ニーズに関する調査を実施し、国に求められる情報提供の方法、内容を明らかにした。また、国内外の関連するウェブサイトについての情報を収集、評価して、国立保健医療科学院の臨床研究(治験)情報ポータルサイトに実装すべき機能について検討を加えた。
臨床試験・治験に関する情報は、信頼性の担保のため国の機関による提供が求められている。また、その内容は信頼性に加えて、一般の利用者にとって理解しやすいこと、治験に関する幅広い情報が一括して得られることが求められている。平成25年度には、前年度の検討を更に進めると共に、新しいポータルサイトのプロトタイプを構築し、また技術的また運営上の課題を明らかにした。このプロトタイプは、ユーザビリティの向上のため、類語検索機能、検索語のハイライト機能などを実装し、医薬品などの関連情報を関係機関のサイトから直接吸い出し表示するワンストップポータルとしての機能を有している。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201309032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究は国内外の治験登録の現状を明らかにするとともに、治験推進のための国民にとって望ましい情報提供のあり方を探る研究である。本研究には臨床試験・治験に関する深い知識が必要なだけではなく、それを俯瞰して取りまとめる視点が必要であり、非常に専門性は高い。また、治験推進のための情報提供の指針を示し、実際に事業化するためのロードマップを作ったことの学術的な意義は非常に高い。
臨床的観点からの成果
 本研究は直接臨床研究にかかわる内容ではないが、臨床試験・治験推進に大きく寄与する内容を含んでおり、間接的に臨床研究の推進を支援するものである。臨床試験を取り巻く枠組み-特に臨床試験情報登録制度の問題点を明白にし、その改善のための具体的なポイントを明示したことは臨床研究の環境整備をしたと考えられ、臨床的視点からも一定の成果を残したと言える。
ガイドライン等の開発
本研究は何らかのガイドラインに関連するような内容を含まない。しかし、国の臨床試験・治験推進に関する情報提供の指針を提示し、それを具体化するための道筋を示した。これはガイドラインを作成し実践することと本質的に同じ意味を持つと考えられる。情報提供のためのプロトタイプを作成したことは、情報提供のためのガイドラインを作成するよりもより具体的で有益であると考えられる。
その他行政的観点からの成果
 本研究の研究成果は臨床試験・治験に関する情報提供のための新しいポータルサイトとして具体化され、厚生労働省の情報提供事業として引き継がれる予定である。現在我々はその事業に携わっており、実用化に着手している段階である。
本研究の内容は行政の一事業に結実しており、行政的な観点から見て大きな成果を残したと考えられる。
その他のインパクト
 本研究で構築したプロトタイプは、臨床試験段階の薬品に関する情報のみならず、市販薬の情報や病気の解説などの情報を直接、国の関係機関のデータベースから吸い出し表示するものであり、このような機能は米国のClinicalTrial.govにも、欧州のEC CT registerにも、WHOのICTRPにもない。Webの技術的にも、コンテンツの内容的にも非常に先進的な試みであると言える。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura H, Kimura E, Mori, Yoshimura M, Komaki H,et al.
Characteristics of Japanese Duchenne and Becker muscular dystrophy patients in a novel Japanese national registry of musculardystrophy (Remudy)
Orphanet J Rare Dis , 8 (1) , 60-  (2013)
原著論文2
Takeuchi F, Yonemoto N, Nakamura H, Shimizu R, et al.
Prednisolone improves walking in Japanese Duchenne muscular dystrophy patients
J Neurol , 260 (12) , 3023-3029  (2013)
原著論文3
渡邊清高
がん情報の普及に向けたわが国の政策とがん拠点病院の役割
保健の科学 , 54 (7) , 436-446  (2012)
原著論文4
荻野大助, 野口都美, 佐藤元
製薬企業(情報提供部門)における医療・臨床研究・治験の情報提供に関する現状と課題について
Clinical Research Professionals , 39 , 5-13  (2013)
原著論文5
藤井仁, 野口都美, 荻野大助 他
臨床試験段階の医薬,一般的な医薬の情 報源についての観察研究-患者団体,通院患者,一般住民の差異
臨床医薬 , 30 (1) , 39-46  (2014)
原著論文6
荻野大助, 野口都美, 藤井仁 他
臨床研究・治験情報提供および情報検索ウェブサイトにおけるJIS規格への適合状況と課題
臨床医薬 , 30 (3)  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,200,000円
(2)補助金確定額
15,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,758,212円
人件費・謝金 366,825円
旅費 841,898円
その他 9,233,104円
間接経費 0円
合計 15,200,039円

備考

備考
自己負担39円

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-