重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究

文献情報

文献番号
201309027A
報告書区分
総括
研究課題名
重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武田 篤(国立病院機構 仙台西多賀病院)
研究分担者(所属機関)
  • 森悦朗(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 久永欣哉(国立病院機構 宮城病院)
  • 宇川義一(福島県立医科大学 医学部医学科)
  • 服部信孝(順天堂大学 医学部)
  • 村田美穂(国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 長谷川一子(国立病院機構 相模原病院)
  • 祖父江元(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 伊東秀文(和歌山県立医科大学 大学院医学研究科)
  • 佐々木秀直(北海道大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
42,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は重度嗅覚障害を示すPD群で脳代謝が低下していること、さらに3年間の縦断研究でPD認知症に移行したのは重度嗅覚障害群のみであったことを報告した。こうした研究結果により世界で初めて、以前から知られていたPDの嗅覚障害が認知症発症の最も的確な予測因子である事が明らかとなった。PD認知症では前脳基底核のコリン系が比較的選択的に障害されていること、また嗅覚障害は辺縁系のコリン低下と関連することが先行研究で示されているが、我々の結果から重度嗅覚障害が深刻なコリン低下の開始を示す指標となることが示唆される。そこで本研究では重度嗅覚障害をバイオマーカーとし、認知症発症前のPD患者にドネペジルを投与、認知症へ移行するリスクの軽減が期待できるかどうか検証することを目的とした。
研究方法
研究は研究代表者及び分担者の施設(中核施設)さらに研究協力施設を合わせて、最終的に全国22施設で実施する体制とした。また、臨床研究の専門支援機関である株式会社 CLINICAL STUDY SUPPORT(CSS)に臨床研究全体の管理を委託する。ドネペジルの実薬とプラセボについては開発元であるエーザイ株式会社から供給を受けることとした。
結果と考察
平成25年度は以下の成果を得た。
1. 割付システムの構築:
できるだけ偏りのない臨床研究を進めるために、パーキンソン病認知症の発症に最も大きく影響を与えると想定される患者年齢、罹病期間を割付因子とすることとした。その上で一施設あたり10例程度のエントリーを想定し22施設の多施設共同研究とすることを決定、研究参加施設毎に自動的に動的割付をするオンラインシステムを構築した。

2.データ収集システムの構築:
データ収集はElectric Data Capturing(ETC)にて実施することとした。本研究が厚生労働科学研究費により実施されることを考慮してサーバーは国内に保有し、データマネジメントおよびデータ品質管理を安全かつ適切に実施できる様にした。これにより症例報告書の作成支援、実施医療機関でのデータ収集からデータ固定、並びにデータベース構築までの一連の手順をスムースに進め、かつ研究全体の管理が適切に実施できる体制を確立した。

3. 試験薬の準備と供給体制の確立:
試験薬であるドネペジルの研究用実薬およびプラセボの製造については、一般競争入札により選定された株式会社エーザイと契約し、平成25年3月に前期分が納品された。さらにその後の試験薬の割付・管理と各研究実施施設への供給体制を構築した。

4. 研究事務局の設置とモニタリング体制の確立:
 研究事務局を設置し、専用のデスク・フリーダイヤル・TEL/FAX機を設置した。これにより各研究参加施設から送付される登録票に従って症例登録を行い、各種の問い合わせに対応、さらに研究進捗管理表および被験者管理表を作成し、研究全体および被験者の進捗を管理する体制を確立した。

5. 研究実施体制の確立:
研究代表者および分担者の所属9施設に加えて、13施設を研究協力施設として選定し、22施設による共同研究体制を構築した。また上記1)~4)とともに研究プロトコルの実施詳細を確定した。

6. 症例エントリーの開始:
平成24年度中にまず東北大学での症例エントリーを開始した。その後順次、参加各施設の実施体制を確立してエントリーを開始した。施設立ち上げは順調に推移し、最後に2施設を追加して22施設での実施体制が確立した。臨床研究の実施に関するサポート体制に施設間で差異が大きく、予想外に実施体制を構築するのに時間を要したが、年度後半には順調に症例エントリーが進む様になり、平成25年度中に9割以上のエントリーが完了、最終的に平成26年4月中に204例のエントリーを得て、登録を終了した。
これまでのところ試験薬であるドネペジルの投与によって生じたと考えられる重篤な有害事象は報告されていない。
結論
以上の様に初年度に構築した多施設共同研究体制を基に、平成25年度は実際の実施体制を確立し、症例のエントリーを進めた。年度内に9割以上の症例登録を完了し、概ね予定通り進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
55,575,000円
(2)補助金確定額
55,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 21,162,121円
人件費・謝金 3,319,031円
旅費 582,540円
その他 17,686,376円
間接経費 12,825,000円
合計 55,575,068円

備考

備考
利息68円が発生したため、支出が68円多くなっている。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-