難治性SLEに対するボルテゾミブ療法の有効性・安全性検証試験

文献情報

文献番号
201309024A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性SLEに対するボルテゾミブ療法の有効性・安全性検証試験
課題番号
H24-被災地域-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 良哉(産業医科大学 大学院医学研究科)
  • 川上 純(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 齋藤 和義(産業医科大学 大学院医学研究科)
  • 山口 拓洋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 智徳(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 井上 彰(東北大学病院)
  • 石澤 賢一(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
42,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膠原病の代表的疾患である全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE) は,皮膚病変・関節炎に加え多彩な内臓病変が出現する難治性自己免疫疾患である。原因は不明であり、炎症の病態に合わせてステロイドホルモンを中心とした免疫抑制療法がおこなわれるが、多くの患者は長期にわたるステロイド剤による治療を余儀なくされ長期的なQOLは不良である。特に、重症例、難治性症例においては標準的治療薬であるステロイド剤のみでは病勢をコントロールすることが難しい。疾患のコントロールのためには病態の主体である抗DNA抗体を産生する病的形質細胞を除去する必要がある。
ボルテゾミブは可逆的かつ特異的なプロテアソーム阻害薬であり,ボルテゾミブはプロテアソーム活性を阻害することにより変性蛋白質の過剰蓄積を引き起こし,アポトーシスを誘導する薬剤である。他の細胞に比べてグロブリンをはじめとする蛋白質の合成が盛んな形質細胞は本剤に対し高い感受性を有していることから、形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫に対して本剤は標準的治療薬として用いられている。SLEの治療として自己抗体産生病的形質細胞の除去が有効であるとすれば、本剤は難治性SLEに対して画期的な治療薬となる可能性を有している。
これらの背景から、難治性SLEに対する新規治療法としてボルテゾミブ療法の開発を目指し、医師主導治験を実施することを目的として本研究を計画した。
研究方法
1.医師主導治験:試験デザインは、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験であり、対象は、難治性SLE症例、投与スケジュールは、多発性骨髄腫で承認されている投与量(1.3mg/m2)、投与法(d1, 4, 8, 11の4回投与、2週間の休薬で1コース)を基本とし、治療サイクルは2コースと限定し治療効果を評価する。主要評価項目は、投与開始より24週後におけるdsDNA抗体価の低下である。
2.SLEモデルマウスに対するボルテゾミブ薬効の検証:SLEモデルマウスであるMRL/lprマウス(14週齢)に対して、1.コントロール(PBS注)、2.ボルテゾミブ150ug/kg、週2回注、3.ボルテゾミブ750ug/kg 週2回皮下注、4. シクロフォスファミド1mg/body 2週に1回腹腔内注を行い、薬効を評価する。
結果と考察
1.医師主導治験:本治験がPhase IIaのPOC試験であることから当初単アーム20例の治験を予定していたが、PMDAの強い要請により、ランダム化比較試験(RCT)となった。症例数については、RCTとなったことで治験経費が増加すること、プラセボ群への実薬投与の機会を設けるために、治験終了後プラセボ群に実薬を、実薬群にプラセボを投与する臨床研究を行う必要が生じたことなどから、実薬7例、プラセボ7例計14例を目標症例数とすることでPMDAとの合意に至った。東北大学、長崎大学、産業医科大学のIRB承認を得た後、7月22日にPMDAに治験届を提出した(難治性全身性エリテマトーデスに対するボルテゾミブの有効性・安全性探索試験:第II相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)。PMDAの審査・確認期間を経て、9月に東北大学で、10月に長崎大学、11月に産業医科大学でスタートアップミーティングを開催した。平成25年度末時点で投与開始が8例、スクリーニング中が1例あり、治験は順調に進んでいる。
2.SLEモデルマウスに対するボルテゾミブ薬効の検証:22-26週でマウスをサクリファイスし、病理学的、血清学的、フローサイトメトリーによる解析を行った。ボルテゾミブボルテゾミブ750ug/kg投与群においてリンパ節腫脹、脾腫の著明な改善と抗dsDNA抗体の低下を認め、モデルマウスにおいてボルテゾミブの有効性が確認された。
本研究の独創性は形質細胞腫瘍に対し有効であるボルテゾミブを、形質細胞による病的自己抗体産生を原因として発症するSLEに適用し、臨床応用を目指す点にある。現在、SLEを対象としたボルテゾミブの有効性・安全性を検証する臨床試験国内外を通じてない。SLEに対する新規治療薬の開発が進んでいないことを考えると、本治験の臨床的意義は大きいものと考えられる。モデルマウス実験においても有望な結果が得られていることから、本薬剤の臨床的有効性が認められることを期待したい。
結論
難治性SLEに対するボルテゾミブの有効性・安全性探索試験のプロトコールが確定し、PMDAの承認を得て医師主導治験が開始された。26年度中の目標症例数の達成と治験総括を目指し、今後研究を継続する。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
55,575,000円
(2)補助金確定額
55,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,148,103円
人件費・謝金 2,193,351円
旅費 421,180円
その他 24,987,366円
間接経費 12,825,000円
合計 55,575,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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