文献情報
文献番号
201309020A
報告書区分
総括
研究課題名
食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験
課題番号
H24-臨研推-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 達也(京都大学 医学部附属病院)
- 笠井 宏委(京都大学 医学部附属病院)
- 矢野 友規(国立がん研究センター東病院)
- 片岡 洋望(名古屋市立大学 医学研究科)
- 石原 立(大阪府立成人病センター)
- 山本 佳宣(兵庫県立がんセンター)
- 角嶋 直美(静岡県立静岡がんセンター)
- 磯本 一(長崎大学病院)
- 中村 哲也(獨協医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、食道がん化学放射線療法(chemoradiotherapy, CRT)または放射線治療(radiotherapy, RT)後の原発巣遺残再発に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた光線力学療法の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施し薬事申請後承認を得ることである。また、承認申請に必要な非臨床試験データ(食道がん細胞に対する有効性と翌日照射の有効性と安全性に関するデータ)も補充する。
研究方法
食道がん放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた光線力学療法の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施する。対象は、50Gy以上のCRTまたはRT単独治療を施行され、原発巣に遺残再発が認められた症例。遺残再発病変の壁深達度は固有筋層まで。ME2906の投与量は20mg/kg。照射のタイミングは、ME2906投与後4-6時間後でPNL6405EPGの照射エネルギーは、100J/cm2とした。主要評価項目は、原発巣のLocal-confirmed complete response (L-cCR)とした。目標症例数は25例。治験調整事務局は、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターに設置した。非臨床試験として、翌日照射の有効性と安全性を実施する。
結果と考察
1)医師主導治験
2012年9月に治験届けを提出し、2012年11月には第一例目を登録した。2013年度中に目標症例25例を登録した(最終登録症例は26例)。研究者判定による有効性(局所完全奏効:local complete remission, L-CR)は、88.5%(23/26)と極めて高かった。内視鏡による有効性判定に関し客観性を担保するため、これまで2回中央判定委員会を実施し、最終回は平成26年5月28日を予定している。安全性に関するモニタリングはすでに終了しており、日光過敏を含め重篤な有害事象は認めなかった。
2)非臨床試験
2-1) マウス腫瘍移植モデルを用いた翌日照射の有効性評価試験
「照射漏れ」と想定した翌日照射群においては、血漿中濃度が半減した時点での照射となるが、コントロール群と比較して、移植腫瘍の壊死組織の深さは両群で差がなかった。
2-2) マウス腫瘍移植モデルを用いた2回照射の安全性評価試験
翌日照射することによって、前日照射部位にも再度レーザ照射がされる可能性があるが、1回照射群と比較して、翌日照射(2回照射されたとする群)における移植腫瘍の壊死組織の深さは両群で差がなかった。
食道がんは、難治がんのひとつであり進行期(ステージII/III/IV)症例の予後は極めて悪い。化学放射線療法は食道がんに対する臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本治験により、高い奏効率と安全性が示されれば、平成26年度中に薬事承認を行う予定である。また、本研究の成果で、根治的な化学放射線療法で食道がんが残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が確立できる可能性がある。さらに厚生労働省の癌医療政策では、癌患者の5年生存率を20%向上させることを掲げているが、本研究成果で根治的な低侵襲治療が開発されれば、患者一人一人に根治の望みを与えるばかりか、癌医療政策に大きく貢献することが期待できる。
2012年9月に治験届けを提出し、2012年11月には第一例目を登録した。2013年度中に目標症例25例を登録した(最終登録症例は26例)。研究者判定による有効性(局所完全奏効:local complete remission, L-CR)は、88.5%(23/26)と極めて高かった。内視鏡による有効性判定に関し客観性を担保するため、これまで2回中央判定委員会を実施し、最終回は平成26年5月28日を予定している。安全性に関するモニタリングはすでに終了しており、日光過敏を含め重篤な有害事象は認めなかった。
2)非臨床試験
2-1) マウス腫瘍移植モデルを用いた翌日照射の有効性評価試験
「照射漏れ」と想定した翌日照射群においては、血漿中濃度が半減した時点での照射となるが、コントロール群と比較して、移植腫瘍の壊死組織の深さは両群で差がなかった。
2-2) マウス腫瘍移植モデルを用いた2回照射の安全性評価試験
翌日照射することによって、前日照射部位にも再度レーザ照射がされる可能性があるが、1回照射群と比較して、翌日照射(2回照射されたとする群)における移植腫瘍の壊死組織の深さは両群で差がなかった。
食道がんは、難治がんのひとつであり進行期(ステージII/III/IV)症例の予後は極めて悪い。化学放射線療法は食道がんに対する臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本治験により、高い奏効率と安全性が示されれば、平成26年度中に薬事承認を行う予定である。また、本研究の成果で、根治的な化学放射線療法で食道がんが残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が確立できる可能性がある。さらに厚生労働省の癌医療政策では、癌患者の5年生存率を20%向上させることを掲げているが、本研究成果で根治的な低侵襲治療が開発されれば、患者一人一人に根治の望みを与えるばかりか、癌医療政策に大きく貢献することが期待できる。
結論
食道がんCRT/RT後の遺残再発に対する救済治療に関する医師主導治験を実施し、目標症例数を登録した。研究者判定ではあるが、88%と高い完全奏効割合が示された。またモニタリングが終了した安全性評価では、重篤な有害事象は認めなかった。翌日照射に対する有効性と安全性をGLP基準の非臨床試験で示した。
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
-