網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究-GCPに準拠した遺伝子治療臨床研究-

文献情報

文献番号
201309019A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究-GCPに準拠した遺伝子治療臨床研究-
課題番号
H24-臨研推-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院 )
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康博(九州大学病院)
  • 中西 洋一(九州大学病院)
  • 米満 吉和(九州大学病院)
  • 吉田 茂生(九州大学病院)
  • 戸高 浩司(九州大学病院)
  • 江内田 寛(佐賀大学)
  • 村上 祐介(九州大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、難治性疾患である網膜色素変性(retinitis pigmentosa: RP)に対する新しい治療法として、国産新規遺伝子治療用ベクターである第3世代アフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus: SIV)ベクターを用いた視細胞保護遺伝子治療臨床研究(安全性試験)のGCPに準拠した実施と臨床研究データの集積を目的として、1.臨床研究薬(SIV-hPEDF)の網膜下投与の安全性確認(臨床研究の実施)、2.臨床研究薬の網膜下投与の治療効果の評価と原因遺伝子との因果関係の検討、3.GCPに準拠した臨床研究データ収集・評価、4.臨床研究実施から製剤化へ向けた準備、という4つのテーマで研究を行う。
研究方法
1.本臨床研究は、オープンラベル、2段階用量漸増式で、安全性の確認を主眼とした臨床研究(第I相に相当)であり、臨床研究実施計画書の記載に基づいて実施される。被験者に本臨床研究参加への同意取得を行った後、所定の問診・スクリーニング検査で適格基準の確認を行い、臨床研究薬の投与を行う。投与後24ヶ月までを観察期間とし、有害事象の発生、疾患に対する検査、一般検査、臨床症状などから安全性を評価する。
2.遺伝子治療臨床研究の被験者それぞれにおける治療効果と原因遺伝子の因果関係を検討するために、被験者の原因遺伝子検索を実施する体制を整備する。
3.九州大学病院ARO次世代医療センターが支援し、GCPに準拠した書類の作成整備や報告書作成、モニタリング、データマネジメント、安全性情報管理、遺伝子治療臨床研究指針で求められる有害事象報告等の規制当局対応を担当する。
4.臨床研究実施のための準備として、ベクターの受け入れ試験ならびに、臨床研究実施期間中の生体材料(血液、尿、他)を用いた各種検査法(ベクターゲノム検出、抗体レベル測定、ベクター活性測定、各種サイトカイン測定など)の適正化を行い、手順に従って各種検査を適切に実施する。また、本臨床研究薬の製剤化へ向けた準備として、大量生産に対応可能な施設でのベクター製造を実施する。
結果と考察
1.平成24年8月に厚生労働大臣より臨床研究実施計画の了承を取得し、平成25年3月より遺伝子治療臨床研究を開始した。低用量群として、RP-01, 02, 03, 04および06の5例がスクリーニング検査結果に基づき適応ありと判断された後に、臨床研究薬を投与するに至った。臨床研究を中止するような重篤な有害事象はこれまでに確認されていない。低用量群での安全性が確認できたため、高用量群へ移行することができると判断し、ステージアップ審査に向けたデータ収集と解析を進めている。来年度は、ステージアップの審査を受けた後、高用量群15名への投与を開始する予定である。
2.手順に従い、被験者から採取されたサンプルは適切に保存されている。また、既知の原因遺伝子を検出するためのプライマーやプローブを設計し、適正化を実施している。原因遺伝子検査を実施する体制が順調に整備されており、臨床研究における効果判定後速やかに検査を実施することが可能となる予定である。
3.昨年度までに作成した各種業務手順書に従ってGCPに準拠したデータ収集を実施した。RP-03(第3症例)の際に発生した重大事態を受け、有害事象報告等の規制当局対応を実施した。臨床研究支援体制の整備は完了しており、臨床研究をスムーズに実施できている。また、業務手順に従い、適切なデータ収集ならびにデータ解析が可能となっている。
4.血液、尿、涙液中のベクターゲノムを検出する方法を確立し、各被験者から収集したサンプルに対して検査を実施し、RP-06(第5症例)の臨床研究薬投与後6時間の涙液中からのみベクターゲノムが検出された。抗VSV-G抗体価の測定法の検査手順書を作成し、適正化を実施した。血清中の炎症サイトカイン測定を手順書に従って実施した。いくつかの症例において、投与後のみならずスクリーニング時のサンプルにおいても複数の項目で高値が検出されたため、保存法や検査法を含めて原因の検索を行った。その結果、血清サンプル回収後に速やかに保存されなかったことによりサイトカインが高値を示したと推察された。今後の対応として、手順通りに速やかな血清の保存を徹底することとした。また、本臨床研究薬の製剤化へ向けた準備として、大量生産に対応可能な施設でのベクター製造を開始した。製造されたベクターは来年度中に輸入し、受け入れ試験を実施する予定である。
結論
遺伝子治療臨床研究は順調に実施されている。引き続き、高用量群の症例を追加しながら、臨床研究を進めていく予定である。また、大量生産に対応な施設での生産準備も完了し、来年度には本臨床研究薬の製剤化への対応も完了する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,612,054円
人件費・謝金 2,711,336円
旅費 1,980,310円
その他 12,696,300円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
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