デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン53スキップ治療薬による早期探索的臨床試験

文献情報

文献番号
201309018A
報告書区分
総括
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン53スキップ治療薬による早期探索的臨床試験
課題番号
H24-臨研推-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
  • 立石 智則(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 村田 美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対する治療法として、アンチセンス・オリゴヌクレオチド(AO)を用いたエクソン・スキップ治療薬の開発が進行している。特にエクソン51スキップ治療薬の開発が先行しているが、DMD患者の遺伝子変異形式は多様なため、その対象患者の割合は全体の13%に留まる。我々はこのような状況を鑑み、次いで対象患者数が多いエクソンの一つとされるエクソン53を対象とした、同様の機序による治療薬の開発に着手した。企業との共同研究を経て有効なモルフォリノAO配列を決定し、国産初のアンチセンス医薬品としての承認を得るべく、平成25年の医師主導治験開始を目標に開発を進めてきたところである。本研究は平成24年度に採択され、2年目となる平成25年度は計画してきた医師主導早期探索的臨床試験を開始するに至った。本研究は当該試験の円滑な推進を図るとともに、核酸医薬品等の新規性の高い医薬品、及びDMDなど希少疾病に対する医薬品の開発において共通する課題について検討し、新たな治療技術の実用化に資する知見の集積を目的として実施するものである。
研究方法
1. 本試験「デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者を対象とした NS-065 /NCNP-01 の早期探索的臨床試験」は GCPで計画され、国立精神・神経医療研究センター治験審査委員会の承認を受け、医薬品医療機器総合機構(PMDA) に対する治験届出を行い実施する。
2. 当該試験の実施においては、同センタートランスレーショナル・メディカルセンターにプロジェクト・マネージャーを置き、治験薬提供者等との連携、PMDA 薬事戦略相談、治験計画届/治験計画変更届提出、安全性評価委員会の運営等について支援する。
3. 次相試験の実施を見据えて、DMD患者の症例集積性とoutcome measureの動向について、診療録の後方視的検討、及び文献的な検索を行う。
4. 組み入れられた被験者が、当該試験に対して抱く見解や意向についてのアンケート調査を行う。
5. 海外で先行するエクソン51スキップ治療薬の開発に関する本年度の動きについて、学術文献、企業からの発表資料、及び規制当局から示された見解等を中心に調査する。
結果と考察
1. 平成25年6月に被験者組み入れを開始した(UMIN CTR: 000010964, ClinicalTrials.gov: NCT02081625)。平成25年度末において、今のところ重篤な有害事象は観察されておらず試験は順調に進捗している。今後も安全性に十分に配慮した進捗管理を進めていく。
2. トランスレーショナル・メディカルセンター主体の支援により、現在のところ本試験は円滑に進捗している。支援を通して得られた経験の蓄積を、その他の医師主導治験にも反映させていくこととしている。
3. 当センターに受診歴のあるDMD患者において、エクソン53スキップ対象患者の割合は11.8%であったが、これは本試験の開始に伴うバイアスの影響が考えられた。現在DMDの臨床試験において標準的なoutcome measureとされる6分間歩行テストについては、その適切性を再考する動きもあり、新たな臨床評価項目の探索が始まっている。
4. 調査結果からは希少疾患の臨床試験における保護者の期待の大きさが伺えた。被験者が未成年の場合、保護者の意向は強く反映されやすいが、自身で理解し、自らの意思で参加した被験者も存在していた。同意取得の際にはその点に十分留意して、被験者と保護者それぞれに対して説明する必要があると考えられた。
5. 2013年から2014年にかけて、海外では主要2社の開発するエクソン51スキップ治療薬の開発戦略が大きく変化した。エクソン・スキップ治療薬が承認される可能性については未だ予断を許さない状況にあるが、本薬の開発においても先行薬の開発動向を注視し、今後の開発戦略立案に活用していくことが重要である。
結論
エクソン53スキップ治療薬の早期探索的臨床試験が開始され、適切な被験者組み入れと安全性評価、並びに臨床試験支援部門による進捗管理により、順調な進捗を認めている。今後を見据えた症例集積性及び臨床評価項目の検討、参加した被験者に対する調査、並びに類薬の開発動向調査なども実施し、本薬のような医薬品開発に共通する課題に対し、有用と考えられる一定の成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201309018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,991,953円
人件費・謝金 2,492,529円
旅費 879,892円
その他 13,635,626円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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