症候性脳放射線壊死に対する核医学的診断とベバシズマブの静脈内投与による治療

文献情報

文献番号
201309014A
報告書区分
総括
研究課題名
症候性脳放射線壊死に対する核医学的診断とベバシズマブの静脈内投与による治療
課題番号
H24-臨研推-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 伸一(大阪医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 寺坂 俊介(北海道大学 医学研究科、脳神経外科学教室)
  • 井内 俊彦(千葉県がんセンター 脳神経外科)
  • 成相 直(東京医科歯科大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 露口 尚弘(大阪市立大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 別府 高明(岩手医科大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 荒川 芳輝(京都大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 成田 善孝(独立行政法人国立がん研究センター中央病院・脳脊髄腫瘍科)
  • 田部井 勇助(日本赤十字社医療センター・脳神経外科)
  • 中村 英夫(熊本大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 坪井 康次(筑波大学、陽子線医学利用研究センター、放射線腫瘍学教室)
  • 永根 基雄(杏林大学 医学部、脳神経外科学教室)
  • 三輪 和弘(木沢記念病院・脳神経外科)
  • 古瀬 元雅( 大阪医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 杉山 一彦(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・がん化学療法科)
  • 阿部 竜也(大分大学医学部附属病院地域医療連携センター・脳神経外科)
  • 武笠 晃丈(東京大学医学部、脳神経外科学教室)
  • 寺崎 瑞彦(久留米大学医学部、脳神経外科学教室)
  • 隈部 俊宏(北里大学 医学部、脳神経外科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、強度変調放射線治療、各種粒子線等の高線量放射線治療が悪性グリオーマをはじめとする頭蓋内悪性腫瘍に適応され、また転移性脳腫瘍に対しては定位放射線治療による積極的加療により、これら腫瘍に対して優れた成績を残している。一方で高線量放射線治療により生存期間が延長し、脳放射線壊死に遭遇する機会が増加してきた。脳放射線壊死は周囲に強い脳浮腫を呈し、機能予後や、時には生命予後も悪化させることも多い。脳放射線壊死に対しては試験的にステロイド、抗凝固薬、ビタミンE、高圧酸素療法なども試されてきたが、十分ナ効果は得られていない。
われわれは放射線壊死による浮腫の発生機序が脆弱な血管新生にあり、血管内皮増殖因子(VEGF)が大きく関与していることを自験例より明らかとし、抗VEGF抗体であるベバシズマブの効果が期待できることを報告してきた。これらの観察を基に実際にベバシズマブ(商品名アバスチン)を症候性脳放射線壊死に投与するという臨床研究を行ったところ、全例で著効を得た。
以上の知見をもとに、アミノ酸トレーサーによるPET診断をも含めて、「神経症状を呈する脳放射線壊死に対する核医学診断及びベバシズマブ静脈内投与療法」を平成23年1月17日に高度医療に申請し、第3項先進医療として2011年4月1日付けの官報で公示され、最終的には薬事承認を目指した多施設臨床試験として開始している。治験に準じた高品質の臨床試験を行うには、信頼のおけるデータマネージメントが可能なデータセンターの支援が必要であり、そのために本厚生労働科学研究費を活用し、質の高い臨床試験を行い、良好な結果を得られれば、各種学会より学会要望を提出し、治験を経ずして、公知申請により本治療の薬事承認を目指すことがこの臨床試験の目的である。
研究方法
本臨床研究の骨子は、既存の内科的治療にて効果不十分である症候性脳放射線壊死に対し、ベバシズマブの静脈内投与の有用性を検討するものである。対象は原発性および転移性脳腫瘍もしくは隣接組織の腫瘍に対する放射線治療後3ヵ月以上経過した後に脳放射線壊死を生じた症候性脳放射線壊死であり壊死巣除去術が困難な症例とする。アミノ酸PET(F-BPAもしくはC-Met)にて進行する脳浮腫の原因が放射線壊死と診断され、症候の原因として活動性の原因疾患(腫瘍再発)が否定されていることが条件である。
治療は、ベバシズマブとして1回5mg/kgを2週ごとに6回投与し、主要評価項目として画像上の浮腫の改善(奏効)、副次評価項目として、安全性、ステロイドの減量、臨床症状の改善、放射線壊死の再発、画像上の造影域の縮小を検討する。
症例数は40症例の登録を目標としていたが、最終症例がほぼ同時期に2例の登録があり、41例が登録された。各症例は1年間の経過観察を行う。
症例の登録等のデータマネージメントや臨床試験の進捗案内、統計解析等は臨床研究情報センター(TRI)に業務委託している。
本臨床試験に係る費用は、患者に使用するベバシズマブ原末購入費用の半分を当研究代表者を中心とした研究会組織が本科学研究費を持って負担している。
以上の施設拡大に伴い、症例登録は順調に進行し、平成25年2月を持って目標症例数を越える41例が登録を終え、今後経過観察を行い、平成26年度に成果を公表し、論文化の予定である。
結果と考察
平成25年2月には予定症例が登録を完了している。臨床試験の性格上、いまだ各登録症例の経過は公表することはできない
ここでは独立モニタリング委員会に諮問した以下の4項目を挙げ、その結果を公表するにとどめる。
A)試験治療終了後3ヶ月経過後深部静脈血栓症からの肺塞栓による死亡例の発生
B)プロトコル治療中に全身状態が悪化し、プロトコル治療を中止、その後安定していたが、治療中断7ヵ月後に脳造影病変の増悪により死亡。
C)神経膠芽腫を原因疾患とする脳放射線治療例に対して、本試験治療を行い、画像上の改善を認めた。その4ヵ月後に病変の増大により死亡。
D)プロトコル治療終了1月半経過後脳梗塞を発症し、片麻痺を後遺している。
独立モニタリング委員会から
いずれも臨床試験の継続を勧告され、試験を継続している。
結論
本臨床試験は3年計画であり、その2年が経過した段階であるので、その臨床成績に関してコメントできる段階ではない。しかしながら、当初の予測を凌駕する速度で症例登録が終了し、本治療のニーズの高さを物語るものと思われた。
現在までの登録症例においては前述の様な副作用を経験しているのみであり、独立モニタリング委員会からは臨床試験の中止を勧告されるような事象は生じていない。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201309014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,468,000円
(2)補助金確定額
12,079,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,389,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 284,970円
人件費・謝金 0円
旅費 967,620円
その他 7,718,410円
間接経費 3,108,000円
合計 12,079,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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