文献情報
文献番号
201309009A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋梗塞患者に対するエポエチンベータ投与による心機能改善効果に関する研究-II
課題番号
H23-臨研推-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成 (国立大学法人 東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 澤 芳樹(国立大学法人 大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科)
- 南野 哲男(国立大学法人 大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性心筋梗塞患者に対してエリスロポエチン(EPO)投与による慢性期心機能改善効果をエポエチンベータ6000単位、12000単位およびプラセボを試験治療とし、中間解析をともなう多施設共同二重盲検無作為化並行群試験にて、急性心筋梗塞に対するEPO投与による慢性心機能改善効果を検討する。
研究方法
本研究では、先行する探索的臨床研究の結果を踏まえ統計学的に必要症例数を算出し、初発の低心機能(左室駆出率50%未満)急性心筋梗塞で600名を対象とする。倫理性、科学的妥当性を担保するため、198例・396例登録を完了した時点で中間解析を行い、解析結果により、試験中止(有効中止、無効中止)もありうる。 主要評価項目は、慢性期左室機能改善度とし、副次評価項目は、生存率、心血管系イベント発症率とする。本研究では、適応外医薬品を使用することから保険診療と併用可能にする先進医療B(旧高度医療評価制度)を活用することとした。その薬剤の提供については、企業から実薬(EPO)とプラセボの提供を受けた。研究組織には、医学統計専門家を含み、独立効果安全性評価委員会、RI中央評価委員会を適切に設置した。さらに、健康被害に対する措置として保険加入を行い、被験者保護の徹底を行いつつ、臨床データの信頼性確保、中央モニタリング体制の確立をめざすこととした。
結果と考察
(1)各施設での倫理委員会・先進医療B申請通過状況(平成26年6月27日現在) 参加27施設中、25施設で倫理委員会/先進医療B申請を通過した。 (2)症例登録 平成26年6月27日現在、151症例登録されている。 (3)UMIN登録 本研究は臨床研究に関する倫理指針に従い研究を行っている(UMIN試験ID:UMIN000005721)。症例登録についても、UMINにて構築した症例登録システムを使用している。 (4) 症例登録代行入力サポート トラブル等のために施設内で症例登録がスムーズにできない場合に遅延なく症例登録を行えるよう、24時間365日対応可能なコールセンターにて症例登録を代行入力する体制を構築し、運用を開始した。 (5) 登録症例進捗管理サポート 症例が登録される毎に、フォローアップ検査の日付をメールで案内するシステムを構築した。また、各参加施設で登録されている症例リストも併せて案内することにより、その施設でフォローアップすべき症例の検査予定を案内している。 (6)ホームページ開設 国民の皆様への本事業の周知ならびに参加施設への情報発信の手段としてホームページを開設した(http://www.epoami2.com/)。 (7)EPO-AMI-IIニュース 臨床試験進行状況、症例登録状況、その他事務局からの情報発信を行うため、参加施設に対し、原則毎月レターの配布をしている。 (8)全体ミーティング 研究進捗報告のため、事務局ならびに参加施設が参加する全体ミーティングを平成24年9月、平成25年3月に開催した。 (9)運営委員会 事務局ならびに運営委員が参加して、本試験の進行状況確認や各施設での問題・課題に関して討議する。平成24年9月に第1回運営委員会を開催した。 (10)症例ファイル・ポケットプロトコル 参加各施設における臨床試験の円滑な進行のため、症例ファイルを作成した。症例ファイル内には、時間経過ごとの臨床試験記録事項、症例報告書、有害事象対応マニュアル等をファイルした。また、症例ファイル記載内容を簡略化したポケットサイズのプロトコルを作成し、試験に携わる医師やスタッフが携行できるよう配布した。 (11) デザイン論文の発表 本研究のデザイン論文を投稿し、アクセプトされた(Cardiovasc Drugs Ther. 26(5):409-16. 2012)。 (12) 重篤な有害事象の報告 2件の重篤な有害事象が発生したが、独立効果安全性評価委員会による審議の結果、いずれの事象も本研究との因果関係は否定できると判断され、研究代表者へ試験継続が勧告され、研究代表者が試験継続を決定した。本有害事象については、適切に、大阪大学医学部附属病院倫理委員会への詰問、先進医療制度および高度医療評価制度(先進医療B)への報告を行っている。また、試験終了時には薬剤提供を受けている企業への報告を行う予定である。
結論
本研究の成果は、梗塞後心不全の発症・重症度の軽減につながり、患者QOLの改善や心不全治療に関する医療費軽減が期待でき、社会への貢献が大きい。また、急性心筋梗塞患者を対象とする日本初の多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験であり、今後、国際的な臨床試験に参加するための基盤システムになる。
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
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