文献情報
文献番号
201309006A
報告書区分
総括
研究課題名
早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の標準化に係る多施設共同臨床研究
課題番号
H23-臨研推-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木下 貴之 (独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 乳腺外科)
研究分担者(所属機関)
- 山本 尚人(千葉県がんセンター 乳腺外科)
- 藤澤 知巳(群馬県立がんセンター 乳腺科)
- 増田 慎三(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 外科・乳腺外科)
- 津田 均(防衛医科大学校 病態病理学講座)
- 和田 徳昭(独立行政法人国立がん研究センター東病院 乳腺外科)
- 土井原 博義(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
- 高橋 將人(独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター 乳腺外科)
- 大谷 彰一郎(広島市立広島市民病院 乳腺外科)
- 高橋 三奈(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 乳腺外科)
- 吉田 正行(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成19年度~21年度 厚生労働科学研究費補助金 医療技術実用化総合研究事業「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の安全性および有効性の評価」に関する多施設共同研究では、ラジオ波熱焼灼療法(以下RFA)の標準的手技および病理判定法の確立とともに、早期乳癌局所治療におけるその安全性と有効性および適応症例の確立という成果を得た。このPhaseⅠ試験研究の結果をもとに引き続き高度医療として、早期乳癌に対してイメージガイド下RFA(非切除)にて、有効性と安全性を評価するPhaseⅡ試験を多施設共同研究として開始している。乳癌低侵襲局所療法としてのRFAの有効性と安全性および本治療の特徴である整容性評価を実施することを目的としている。
研究方法
本研究は、初年次にRFA手技の安全性および有効性を確認したPhaseⅠ試験の結果をもとに、「非切除術」としてのRFAの安全性および有効性を検証するための、PhaseⅡを行うこととする。また、PhaseⅡでは、RFAが現行の外科的切除法と比べて最も優位とされる「整容性」についても検証を行う。方法は、PhaseⅠの結果に基づき、術前針生検にて確定診断がなされた早期乳癌(TMN分類上のT1)患者に対して、説明同意文書にて同意を取得後、全身麻酔下に手術室でRFAを行う。イメージ(US)ガイド下に体表面から乳房内病変に対してラジオ波電極針を穿刺し、病変にラジオ波による焼灼を行う。腫瘍縁から1cmマージンを目標として、ニードルポジションを設定する。この際、手技中の合併症に有無を記録する。完全な焼灼確認後、乳房温存療法と同様に術後乳房照射(50 /60Gy)を実施し術後補助内分泌療法を開始する。RFA後、3ヶ月、6ヶ月および12ヶ月後に、超音波検査(US)やCT、MRIによる画像診断評価、およびマンモト―ム生検、または針生検を実施し、病理診断評価を行い、RFAの安全性および有効性を検証する。なお、採取された検体は、H&E染色と特殊染色法(NADH染色)を用いた病理診断によるRFA効果判定にて、腫瘍のviabilityを判定することとする。
結果と考察
2013年4月30日までに58症例の登録があった。患者の平均年齢は58.4歳で、治療前の画像診断別で平均腫瘍径は、MMG; 4.2mm、 US; 8.1mm, MRI; 9.1mm であった。RFAは全例で全身麻酔下に実施され、平均RFA施行時間は、7.1分(3-14分)であった。術中合併症として皮膚熱傷が2例(3.5 %)に報告されたが、CTCAE v4 grade1でいずれも保存的に軽快している。平均観察期間は21.3ヶ月(3-40.8ヶ月)で、局所再発や遠隔再発は認めていない。3ヶ月目の画像診断にて、がんの遺残が疑われた症例が3例、12ヶ月目では1例であった。3ヶ月目の針生検は、55例に施行され7例(13%)にがんの遺残が疑われ、プロトコールに従って切除が行われ、5例(9.1%)にがんの遺残が確認された(浸潤癌2例、非浸潤癌3例)。12ヶ月目の針生検が行われた40例では、1例もがんの遺残や再発は確認されていない。最終整容性評価は、経過観察を拒否した1例を除く57例中、excellentが47例、goodが8例、fairが2例であった。 術後の断端評価と、不完全焼灼の検出を目的とした経過観察の画像診断および針生検の意義に関して検討した。症例数を積んでも、少なくとも1年目までは、画像診断にて明らかに遺残あるいは再発を疑わせる症例は認めなかった。3ヶ月目の針生検では、55例中5例(9.1%)にがんの遺残が確認された。1例は、広範囲のEIC(乳管内病変)が確認され、4例は、腫瘍の一部に不完全焼灼が確認された。全施設でNADH染色が実施されておらず、中央病理判定のよる再評価が必要であると考える。RFA後1年を経過した症例では、高い整容性が確認され、乳房温存手術と比較して患者のより高い満足度を寄与することが期待される。RFAに針生検を加え、治療の不完全性を補足することで、より安全性、整容性の高い治療法が確立されるものと考える。
今後は、登録症例の経過観察やQOLデータを蓄積し、乳がんRFA療法の中期の問題点を明らかにし、次期臨床試験のために役立てたい。
今後は、登録症例の経過観察やQOLデータを蓄積し、乳がんRFA療法の中期の問題点を明らかにし、次期臨床試験のために役立てたい。
結論
早期乳がん(T≦1cm)に対するRFA単独療法は、PhaseⅠ試験の結果と同様に10%程度の不完全焼灼症例の可能性がある。施術後の針生検や画像診断を実施することで、不完全焼灼例を標準治療に切り替えることにより、患者の不利益は回避することが可能である。
結果として、RFAが、乳房温存療法と比較して同等の局所制御とより整容性の高い治療法となる可能性が示唆された。
結果として、RFAが、乳房温存療法と比較して同等の局所制御とより整容性の高い治療法となる可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
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