文献情報
文献番号
201308020A
報告書区分
総括
研究課題名
脳内留置型微細内視鏡の開発と前臨床試験研究
課題番号
H23-医療機器-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 憲治(岩手医科大学 医歯薬総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医歯薬総合研究所 )
- 佐藤 洋一(岩手医科大学 医歯薬総合研究所 )
- 平 英一(岩手医科大学 医歯薬総合研究所 )
- 弘瀬 雅教(岩手医科大学 医歯薬総合研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は岩手医科大学とリコー光学株式会社による脳内留置型微細内視鏡の共同開発と前臨床試験研究であり、臨床応用へ橋渡しをすることを目的とする。重症頭部外傷やくも膜下出血重症例に対しての脳外科手術時に脳内に留置し、術後の血流管理や血管動態のモニターを可能とする医療用機器としての脳内留置型微細内視鏡の開発を目指す。日本国内において、脳外科領域で対象となる脳血管動態の観察を必要とする症例は年間20,000例にも及び、脳血管攣縮の検出や脳血流状態の管理が可能となれば適切で速やかな処置が可能となるが、これまでに類似の機器の報告はない。安全性について十分に検証しながら革新的な医療機器としての確立を目指して開発を進めた。
研究方法
平成24年度に作成した微細内視鏡試作機を基に、狭小な脳槽内への留置試験のために内視鏡先端部の細径化を進めながら、解像度および取得画像の明るさなど撮像性能を向上させた。先端部の改良に伴い、照明ファイバーも従来の1本の光学ファイバーから細い2本のファイバーへと改良し、より視野に均一な照明強度を追求した。照明ファイバーの改良によってインドシアニングリーン(ICG)蛍光観察のための励起光量の増強が必要であったため、高出力近赤外光レーザーダイオード光源へと変更した。改良を加えた微細内視鏡によってICG検出感度試験および励起光による被写体温度変化、細胞障害性に関する試験を実施した。
内視鏡の留置に関わる部分はディスポーザブルとして衛生面を考慮しながら、術後の脳槽内で良好な視界を維持する注水機能、留置した先端角度を維持しながら抜去時には柔軟になる機能を持たせるなど高い観察性能を持たせた。またファイバーに突発的な外力が加わっても安全性を確保できる仕様について検討・開発した。
微細内視鏡の光学性能および医療機器としての安全性に関しては、生体内を想定した模擬実験系を始め、細胞・組織レベルの安全性試験から大型実験動物であるミニブタを用いた血流動態観察試験に至るまで多角的に検証を行った。
内視鏡の留置に関わる部分はディスポーザブルとして衛生面を考慮しながら、術後の脳槽内で良好な視界を維持する注水機能、留置した先端角度を維持しながら抜去時には柔軟になる機能を持たせるなど高い観察性能を持たせた。またファイバーに突発的な外力が加わっても安全性を確保できる仕様について検討・開発した。
微細内視鏡の光学性能および医療機器としての安全性に関しては、生体内を想定した模擬実験系を始め、細胞・組織レベルの安全性試験から大型実験動物であるミニブタを用いた血流動態観察試験に至るまで多角的に検証を行った。
結果と考察
性能を向上させながら更なる細径化を実現するために、微細内視鏡のイメージファイバーは前年度採用した柔軟性、光収量に優れた10 μm径のプラスチック製の微細光学ファイバーを7,500本束ねた外径1 mmのものを用いて、照明ファイバーを従来の半分の細さとなる0.5 mm径のファイバーを2本、イメージファイバーを中心として対格に位置する形で配置した。視野に均一な照明をするために照明ファイバーの先端部には微小なボールレンズを入れて照明光を分散させた。イメージファイバーの先端には偏光フィルターを備えることで、強い反射によって被写体の観察が困難になるのを回避した。さらに被写視野を維持するための先端形状保持部材や内視鏡先端からの注水機能などの留置観察に必要となる機能を付加した。これらの改良によって従来の撮像性能を向上させながら外径3 mmを下回る微細な先端部を実現した。
微細内視鏡の改良と光源の高出力化を経て、ICGを用いた本微細内視鏡のICG検出感度は高く、微細管内の低濃度ICGでも検出できる光学性を持つことが確認できた。画像はインターバル撮影および連続撮影が可能であり、微小血管の血流動態も観察可能な光学性能を装備した。
ウサギおよび脳のサイズ・構造がよりヒトに近いミニブタを用いた動物実験を実施し、可視光条件において太い脳血管はもとより直径100μm前後の微小脳血管の鮮明な連続観察が可能であり、ICG蛍光を用いることで血管および血流状態を選択的かつ高感度に観察ができることが確認された。
微細内視鏡の改良と光源の高出力化を経て、ICGを用いた本微細内視鏡のICG検出感度は高く、微細管内の低濃度ICGでも検出できる光学性を持つことが確認できた。画像はインターバル撮影および連続撮影が可能であり、微小血管の血流動態も観察可能な光学性能を装備した。
ウサギおよび脳のサイズ・構造がよりヒトに近いミニブタを用いた動物実験を実施し、可視光条件において太い脳血管はもとより直径100μm前後の微小脳血管の鮮明な連続観察が可能であり、ICG蛍光を用いることで血管および血流状態を選択的かつ高感度に観察ができることが確認された。
結論
脳内留置型微細内視鏡はこれまで困難であった脳外科手術閉頭後の頭蓋内環境を正確にモニターし、より迅速かつ的確な処置を可能とする画期的なアプローチとなり得る。本研究では可視光およびICG蛍光撮像に関する優れた光学性能を持つ外径3 mm以下の微細なファイバー型内視鏡を開発した。脳内留置に必要な撮像性能維持および安全性を高める新たな機能を備え、動物モデルおよび組織・細胞レベルで障害性試験によって性能と安全性についての確認を進めた。今後、前臨床試験としてミニブタ等の大型動物を用いた留置試験による多面的な安全性確認を行い、臨床試験に臨む予定である。安全で優れた医療機器としての完成を目指し、安全性の確認と機能の洗練を更に進めていく。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
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