文献情報
文献番号
201308015A
報告書区分
総括
研究課題名
フィブロインのcell delivery機能を利用した若年者重度関節症に対する新しい治療法の開発
課題番号
H24-被災地域-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中川 晃一(東邦大学 医学部医学科整形外科学講座 (佐倉))
研究分担者(所属機関)
- 齋藤 知行(横浜市立大学医学部整形外科)
- 富田 直秀(京都大学大学院工学研究科)
- 玉田 靖(信州大学繊維学部)
- 中島 新(東邦大学 医学部医学科整形外科学講座 (佐倉) )
- 鈴木 昌彦(千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター)
- 和田 佑一(帝京大学ちば総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フィブロインスポンジは分担研究者の玉田らによって、絹糸からさらに精製されたフィブロインタンパク質を原料とし、多孔質構造の片側表面に強靱な膜を付加することで開発された。このフィブロインスポンジを用いて分担研究者の富田らはフィブロインスポンジ内に軟骨細胞を播種し移植すると、その近傍に良好な軟骨再生がおこることを見出し軟骨再生医療への応用研究を進めてきた。
本研究の目的は、培養過程を経ない自家骨髄細胞を移植細胞とし、フィブロインスポンジに播種させて軟骨欠損部に直接移植することによって関節軟骨修復を促進する軟骨再生技術の確立である。昨年度は主に、(1)企業製造によるフィブロインスポンジの最適化設計と軟骨再生能、(2)フィブロインスポンジ内での軟骨細胞動態、(3)ビーグル犬を用いた膝関節軟骨欠損モデルにおけるフィブロインの軟骨修復効果、に関する検討を行い、それぞれ(1)フィブロインスポンジの強度、(2)フィブロインスポンジ表層部分の細胞動態・分布、(3)修復軟骨の組織学的評価・自家骨髄細胞移植を併用した場合の軟骨修復効果、に関して課題が残ったため本年度はこれらに関する研究を中心に行った。さらに、本治療システムは変形性膝関節症(Osteoarthritis, OA)に対して本邦で最も多く施行されている関節温存手術である高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy, HTO)に併用して施行することを検討しているため、HTOの最近主流の術式であるopening wedge(内側楔状開大)法後の軟骨修復に関して臨床症例をもとに評価を行った。
本研究の目的は、培養過程を経ない自家骨髄細胞を移植細胞とし、フィブロインスポンジに播種させて軟骨欠損部に直接移植することによって関節軟骨修復を促進する軟骨再生技術の確立である。昨年度は主に、(1)企業製造によるフィブロインスポンジの最適化設計と軟骨再生能、(2)フィブロインスポンジ内での軟骨細胞動態、(3)ビーグル犬を用いた膝関節軟骨欠損モデルにおけるフィブロインの軟骨修復効果、に関する検討を行い、それぞれ(1)フィブロインスポンジの強度、(2)フィブロインスポンジ表層部分の細胞動態・分布、(3)修復軟骨の組織学的評価・自家骨髄細胞移植を併用した場合の軟骨修復効果、に関して課題が残ったため本年度はこれらに関する研究を中心に行った。さらに、本治療システムは変形性膝関節症(Osteoarthritis, OA)に対して本邦で最も多く施行されている関節温存手術である高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy, HTO)に併用して施行することを検討しているため、HTOの最近主流の術式であるopening wedge(内側楔状開大)法後の軟骨修復に関して臨床症例をもとに評価を行った。
研究方法
本年度は以下の4課題に対して研究を行った。1)フィブロイン微細ファイバーとフィブロインスポンジの複合化の検討、2)フィブロインスポンジ表面近傍における細胞動態とその分布の定量評価、
3)ビーグル犬膝関節軟骨欠損部へのフィブロインスポンジ移植による軟骨再生とフィブロイン内への骨髄由来細胞播種の効果、4)内側楔状開大式高位脛骨骨切り術後の軟骨修復と修復に関連する因子の検討、である。
3)ビーグル犬膝関節軟骨欠損部へのフィブロインスポンジ移植による軟骨再生とフィブロイン内への骨髄由来細胞播種の効果、4)内側楔状開大式高位脛骨骨切り術後の軟骨修復と修復に関連する因子の検討、である。
結果と考察
本事業で用いられるフィブロインスポンジは昨年度、強度、特に薄膜部の強化が課題であることが判明し、今年度はエレクトロスピニングによる微細ファイバーマットとの複合化を試み、その強度面の評価を行った。引き抜き試験では強度の改善が確認できたが、複合化による弾性率や伸度の変化も観察されており、実際の手術時に十分な強度を有しているかどうかは未だ検証できていない。今後強度面に関して改良の検討を継続するとともに、軟骨欠損部へのフィブロインスポンジの固定材料、方法に関しても検討が必要である。フィブロインスポンジ表層部での細胞動態に関する研究では、スポンジ設計の最適化の観点からフィブロイン水溶液濃度及び冷却速度を変えて作成したフィブロインスポンジを幾種か用意して、骨髄由来間葉系幹細胞のスポンジ表層に存在する細胞の動態挙動を検討した。その結果、スポンジの種類によらず凝集体が形成されていることが定量的に確認された。今後はこの手法を用いたフィブロインスポンジ製造条件の最適化を検討する予定である。イヌの膝関節軟骨欠損モデルにおいて、骨髄刺激とフィブロイン被覆を組み合わせた方法では、骨髄刺激によって流出した骨髄細胞がフィブロインスポンジ上で細胞凝集体を形成し、それが軟骨欠損部に白色の修復組織形成を促したと考えられる。より高い軟骨再生効果を期待して骨髄由来間葉系幹細胞をフィブロインスポンジに播種したが、12週の時点では明らかな修復促進効果は見られなかった。この理由として骨髄間葉系細胞の播種だけでは細胞数が十分でなかったことが考えられる。また、関節面の肉眼所見からフィブロインの関節面への長期固定が軟骨下骨の破壊や変形性関節症の進行を招いている可能性が考えられた。今後は骨髄刺激法と併用することで細胞ソースを増やし、移植後早期にフィブロインを抜去して軟骨再生評価を行う必要があると考えている。
結論
臨床応用に向けてフィブロインの強度面での改善に進歩はみられているが、手術操作に耐えうるものかどうか更なる検証が必要である。また、現在のフィブロインで軟骨再生を期待はできるが、フィブロインの固定方法・期間、自家骨髄由来細胞移植の併用など軟骨再生を促進する手法の確立など今後の課題点は残されている。近い将来の臨床試験を見据え、最終年度の次年度は臨床治験体制、本治療システムのガイドライン作成などの整備も進めながら着実に課題を解決していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
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