気管・喉頭再生治療法の実用化推進研究

文献情報

文献番号
201308014A
報告書区分
総括
研究課題名
気管・喉頭再生治療法の実用化推進研究
課題番号
H24-被災地域-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大森 孝一(福島県立医科大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 達雄(京都大学 再生医科学研究所)
  • 川上 浩司(京都大学 大学院医学研究科薬剤疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気管や喉頭は呼吸、発声、嚥下という生命維持機能を担っている。甲状腺癌進行例などの悪性腫瘍や狭窄症などの炎症性疾患で気管や喉頭が切除されると重大な機能障害をきたし生活の質(Quality of life: QOL)が低下する。チェルノブイリ原発事故後、その周辺では稀な小児甲状腺癌が激増した。福島県では原子力発電所事故により放射線ヨウ素などが飛散し、今後甲状腺癌の増加が懸念され、進行例の治療法を準備しておく必要がある。本研究は、気管喉頭病変に対してQOLの低下を来さない質の高い治療法を確立し実用化につなげることにあり、日本発の医療を世界に提供することが可能である。われわれはポリプロピレンメッシュとブタコラーゲンスポンジを用いた気管喉頭の再生治療法を開発した(Nakamura 2000,Omori 2004)。動物実験で最長5年間の観察で安全性、有効性を検証し、施設内倫理委員会の承認のもと成人10例の気管喉頭再建に使用した。最長6年の経過観察で再狭窄を認めず良好な結果を得ている。これをもとにして、課題を解決し臨床研究や治験に橋渡しし実用化まで進める。
研究方法
平成24年度に京都大学施設内に医療機器クリーンルームを設計・設置を行ったが、平成25年度はクリーンルームのサニテーション、バリデーションを行い、清浄度を担保する。また生産ラインを構築し、GMP/QMS準拠にて製造するために組織体制の構築及び施設運営における文書化を行う。生物学的安全性試験は医療機器ガイドラインに準じて必要な試験が選択される。平成25年度はPMDA との事前面談を実施し試験の進め方について検討し、生物学的安全性試験のロードマップを作成し開始する。医療機器の開発についての薬事制度の調査、国内の臨床研究の実施環境も調査検討する。非臨床試験の後には臨床試験が想定され、治験計画の確定に向けてPMDAでの対面助言(治験相談)を受けることとなるため、その対応を視野に入れ臨床試験の計画骨子案を作成する。
結果と考察
クリーンルームのサニテーション、バリデーションを施行し合格基準に達した。同室で人工気管作製に用いる種々の装置を設置し生産ラインを構築した。組織体制の構築及び施設運営(QMS)における文書化を開始した。クリーンルームで生物学的安全性試験を行う上で必要な検体の作製が可能となった。前年度の研究結果から、生物学的安全性試験に必要な人工気管の量が算出され、およそ110本必要と試算された。1本作製に数週間ほど要し、研究期間内に安全性試験に必要な数を準備することは困難であることが予想された。問題への対応はPMDA事前面談で確認を行った。各原材料の比率が同じであれば最終製品と異なる形状でも試験を行うことが可能であり、最終製品と同じ清浄度で、同じ製造方法を模倣することが必要であることを確認した。上記事項を確認後、検体の形態や作製方法を協議し、クリーンルームで作製を行い、生物学的安全性試験のロードマップを作成し、順次試験を開始した。医療機器の開発にかかる臨床研究の環境について治験中核病院・拠点医療機関を対象に調査を行い、臨床研究を実施する際の手順書、規定等の文書化に関連して、2つの課題が見出された。①臨床研究の実施に際しては、GCPに準拠する必要はないが、準拠して行う施設が認められた。②医療機器と医薬品とで同一の手順書等を用いている医療機関がほとんどであった。そのほか、医療機器を用いた臨床研究における専門家の不足も重要な課題であった。医療機器の開発においては、広範な領域横断的な知識が求められ、医療機器開発を担う人材を養成することも急務である。さらに、治験計画を作成するにあたってPMDAの対面助言を受けることとなり、その対応を視野に入れた準備を進めていくことが必要である。まず臨床試験計画の骨子案を作成した。
結論
設置した医療機器クリーンルームのサニテーション、バリデーションを行い、清浄度を担保し、生産ラインを構築した。GMP/QMS準拠で製造するために文書化を開始した。生物学的安全性試験に使用する検体の作製が可能となった。PMDA事前面談にて試験内容、方法について確認を行い、人工気管の性質から必要な試験が選択され、生物学的安全性試験のロードマップを作成の上、試験を順次開始した。人工気管の医用材料の医療機器開発を念頭に、医療機器開発についての薬事制度の調査に引き続き、国内の臨床研究の実施環境について調査検討した。全体の進行状況を改めて把握し、薬事承認や申請までのロードマップを作成し、人工気管の実用化を実現するために必要な研究事業を推進していく。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201308014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,225,000円
(2)補助金確定額
43,225,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,707,834円
人件費・謝金 3,534,948円
旅費 863,790円
その他 10,143,428円
間接経費 9,975,000円
合計 43,225,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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