骨髄単核球を用いた細胞治療の一般普及を目指した簡便且つ細胞調製施設が不要な幹細胞分離デバイスの開発

文献情報

文献番号
201308013A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄単核球を用いた細胞治療の一般普及を目指した簡便且つ細胞調製施設が不要な幹細胞分離デバイスの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山原 研一 (独立行政法人 国立循環器病研究センター 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 明彦(財団法人先端医療振興財団先端医療センター再生医療研究部)
  • 妙中 義之(国立循環器病研究センター研究所(研究開発基盤センター))
  • 山本 晴子(国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部・研究開発推進)
  • 長束 一行(国立循環器病研究センター脳神経内科)
  • 赤川 英毅(国立循環器病研究センター知的資産部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、厚生労働省ヒト幹細胞指針に基づく承認を経て、脳梗塞患者に対する自己骨髄単核球移植による臨床試験を実施した。しかし、セルプロセシングセンター(CPC)構築や煩雑手技の問題により、骨髄単核球移植による細胞治療は一般的な医療としては普及していないのが現状である。
 そこで本研究では、このような問題点を解消するため、安全かつ確実な、特殊な手技や知識を必要としない完全閉鎖系の単核球分離デバイスを開発し、普及させることをその目的とする。医療機器に関する早期・探索的臨床試験拠点である国立循環器病研究センターにおける成果とするべく、可及的速やかな本デバイスの製品化を目指した活動を展開していく。
研究方法
今年度は、脳梗塞患者を対象とした自己骨髄単核球の第I/IIa相臨床試験の安全性・有効性検証、共同研究企業とのデバイス開発、およびデバイスの早期医療機器承認を目指した体制整備・情報収集として下記のことを行った。
①脳梗塞患者を対象にした自己骨髄単核球移植の第1/2a相臨床試験(田口、長束ら)。
②単核球分離デバイス本体の開発(山原、田口ら)。
③医薬品ベースの単核球分離液の検討(山原ら)。
④単核球分離デバイスの医療機器としての早期承認促進を目指した研究(妙中、山本、山原ら)。
⑤単核球分離デバイスの事業化に向けた研究(妙中、赤川ら)。
結果と考察
①脳梗塞患者を対象にした自己骨髄単核球移植の第1/2a相臨床試験
 予定していた12症例全てのエントリーが終了した。細胞治療症例における有害事象に関しては、1症例で脳梗塞再発が観察された。独立症例検討委員会の判断では、細胞治療との因果関係は不明で、倫理委員会および厚労省に報告を行った。安全性に関し、脳梗塞7日後と比し投与1ヵ月後におけるNIHSS悪化症例は、脳梗塞再発を発症した症例のみであり、ヒストリカルコントロール群との比較では非劣性であった。有効性に関しては、脳梗塞7日後と細胞投与1ヵ月後におけるNIHSSの改善度は、ヒストリカルコントロール群との比較で有意に良好であった。
②単核球分離デバイス本体の開発
 単核球分離デバイス本体の周辺特許出願及び試作品作成を共同研究企業と共に行った。具体的には、周辺特許に基づいた試作品を作成し、単核球採取に関し基本的な構造に問題がないことを確認した。また、新たな特許技術を元に、より低コストを目指したバック形状のデバイス開発を開始し、単核球採取に関し基本的な構造に問題がないことを確認した。
③医薬品ベースの単核球分離液の作成
 医薬品のみからなる比重遠心分離液の作成を行った。作成した比重遠心分離液と臨床試験で汎用されているFicoll-Paqueの両者を用い、市販ヒト骨髄から単核球を分離したところ、構成される血球成分組成に差が見られたことから、細胞治療の際、異なる臨床試験結果が得られる可能性が示唆された。更に、マウス脳梗塞モデルにおいて、医薬品ベース比重遠心分離液を用いた骨髄単核球を移植したところ、治療効果が得られなかったことから、同分離液開発は中止となった。
④単核球分離デバイスの医療機器としての早期承認促進を目指した研究
昨年度はPMDA薬事戦略相談を行い、当該医療機器がクラスⅡに該当するということで意見の合致をみた。一方、当該医療機器を用いて分離された幹細胞を用いた脳梗塞の治療が有用な治療として確立しているとまでは言いがたいとの判断が示され、分離された幹細胞の臨床的有用性を何らかの形で検証する必要があるという見解がPMDAより示された。また、現在CPCで分離している骨髄単核球と、当該医療機器を用いて分離された骨髄単核球との性質の類似性も示される必要があるとのことであった。また、当該医療機器に用いられる材質の生物学的安全性の説明が必要であることと、分離液の扱いの検討が必要であることも明らかとなった。
⑤単核球分離デバイスの事業化に向けた研究
 遠心分離など密度差を利用して単核白血球を分離・収集する特許や活栓で成分の混合・分離を図る海外の特許について検索した結果,既に企業から出願されているものが複数認められた。また,遠心分離器を使用して骨髄単核細胞を分離する装置が確認できた.しかし、分離に伴う作業時間は15分程度であって,開発を進めている幹細胞分離デバイスとほぼ同等とみなせるものであるが、主に研究用として使用されていると想定された。
結論
本研究の目的である、簡便且つ細胞調製施設が不要な単核球分離デバイスの開発を進めた。本研究にて開発された単核球分離デバイスを用いることで、①全国の全ての地域で、②全ての心筋梗塞患者および脳梗塞患者を対象に、③安全な最先端医療を、④低コストで、提供することが可能になると考えており、今後、分担研究者と共に精力的にデバイス開発を行っていきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201308013Z