難治性腸疾患等に対する安全かつ有効な非侵襲性経口ナノDDSの開発

文献情報

文献番号
201308007A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性腸疾患等に対する安全かつ有効な非侵襲性経口ナノDDSの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(大阪大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学 薬学研究科 )
  • 藤尾 慈(大阪大学 薬学研究科 )
  • 小久保 研(大阪大学 工学研究科 )
  • 大江 知之(慶應義塾大学 薬学部)
  • 青島 央江(ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超微細加工技術を活用した疾患の予防・治療戦略/技術の確立は、知財技術立国・健康立国を目指す我が国の最重要課題であり、特に原因不明で、根本的な治療法が確立されていない難治性疾患への応用はライフ/医療イノベーション5ヶ年戦略の観点からも期待されている。炭素原子60個が切頂二十面体構造に結合したC60フラーレン(直径1 nm)は、従来薬とは全く異なった作用点での抗ウイルス活性や抗菌活性、さらには圧倒的な抗炎症活性(抗酸化活性;活性酸素・ラジカル消去活性)を有するなど、エイズや肝炎、がん、炎症性疾患に対する画期的ナノ医薬として期待されている。しかし、主薬としてのC60フラーレンを実用化するには、分散性・吸収性の改善や標的指向性の付与、さらには薬効メカニズムの解明といった多くの克服課題が残されている。そこで本研究では、医用工学的にC60フラーレンの腸内放出型プロドラック化や糖・アミノ酸修飾など、腸管デリバリーの最適化に叶う「ナノ薬物送達システム(ナノDDS)」を新規開発し、これを炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を標的とした、非侵襲的(経口投与)で、しかも安全かつ有効な予防・治療戦略/技術の確立へと展開する。
研究方法
当初計画通り、平成24年度の成果を基盤としつつ、1)抗酸化・抗炎症活性を向上可能な官能基修飾誘導体やDDS化C60フラーレン誘導体を新規合成したうえで、2)それらC60フラーレン誘導体の物性・品質を含めた、抗酸化・抗炎症活性の評価、3)C60フラーレン誘導体の体内動態を定量的に解析し得る評価法の確立、4)炎症性腸疾患モデルマウスを用いた、C60フラーレン誘導体の経口投与型ナノDDSとしての有効性評価、5)C60フラーレン誘導体の作用メカニズムの解明を目指した。
結果と考察
平成24年度に見出した、強い抗炎症活性を有するプロリン型C60フラーレンを鋳型として、1)異性体の存在しない4種類の官能基修飾誘導体と共に、腸管吸収性を改善可能なグルコース修飾C60フラーレンとプロドラッグ化に資するエチルエステル化C60フラーレンの2種類のDDS化C60フラーレンを新規合成した。2)これらC60フラーレンの抗炎症活性をin vitroで評価した結果、新規合成した官能基修飾誘導体の中には、プロリン型C60フラーレンと同等の抗炎症活性を有する誘導体が存在することが明らかとなった。さらに、3)グルコース修飾C60フラーレンは、プロリン型C60フラーレンに匹敵する抗炎症活性を有していたことから、グルコース修飾の有効性を明らかとした。現在、プロリン型C60フラーレンのグルコース修飾体の合成を前倒しで進めている。以上の結果から、プロリン型C60フラーレンの有用性が実証されたことから、将来的な医薬品化を念頭においた検討も開始しており、4)プロリン型C60フラーレンの大量合成に向けて、物性・品質を保持しつつ、合成系のスケールアップに成功すると共に、5)GMP設備を有し、かつC60フラーレン誘導体の製造技術を有する委託先を選定した。また、平成24年度に構築したLC-MSによるプロリン型C60フラーレンの定量解析系を用い、6)生体内のプロリン型C60フラーレンを定量的に解析し得る方法の構築に成功した。さらに、7)2種類の炎症性腸疾患モデルマウスを用いた検討などにおいて、プロリン型C60フラーレンの経口投与により、Th2型の免疫応答が抑制されることで、炎症性腸疾患の病態が改善することを見出し、潰瘍性大腸炎(Th2型の病態)に対する治療薬になり得る可能性を明らかとした。また、8)プロリン型C60フラーレンは、T細胞やB細胞といった獲得免疫を担う細胞の活性化をも抑制することを見出すと共に、その抗炎症活性は、MAPキナーゼやNFkappaBの活性化抑制ではないことなど、プロリン型C60フラーレンの免疫抑制作用・抗炎症活性メカニズムの一端を明らかとした。
結論
以上、平成25年度には、当初予定していた誘導体よりも多くの誘導体を新規合成・特性評価すると共に、重点課題として挙げた項目についても有益な結果を得るなど、当初の予定以上に進捗した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201308007Z