文献情報
文献番号
201308001A
報告書区分
総括
研究課題名
循環腫瘍細胞観察可能なナノ粒子質量顕微鏡開発に関する研究
課題番号
H23-医療機器-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
瀬藤 光利 (浜松医科大学 医学部 解剖学講座 細胞生物学分野)
研究分担者(所属機関)
- 池上 浩司(浜松医科大学 医学部 解剖学講座 細胞生物学分野 )
- 早坂 孝宏(浜松医科大学 医学部 解剖学講座 細胞生物学分野 )
- 木村 芳滋(浜松医科大学 医学部 解剖学講座 細胞生物学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がんの早期診断、予後判定、治療効果判定はいずれも重要な課題である。転移に関する分子メカニズムの解明は、これらいずれの課題にも重要な解決の糸口となりうるテーマである。転移に関しては、ごく早い病期のうちから、がん細胞が血液中に流れ出し、やがて多臓器に生着し転移巣を形成するというモデルが新規に提唱され注目を集めている。この血液中に存在する細胞は循環腫瘍細胞と呼ばれ、検出個数と予後の悪さには正の相関関係があることが報告されている。一方で循環腫瘍細胞の質的な評価に関しては細胞表面マーカーや遺伝子発現に着目した報告が行われているのみであり、評価方法は未だ十分に確立されていない。本研究はこの評価方法を確立し病理診断に応用するために、ナノ粒子等を補助剤として活用した一細胞レベルの超高解像度解析能を備えた循環腫瘍細胞観察可能な質量顕微鏡の開発を目的とする。質量顕微鏡は研究代表者らが開発してきた質量分析手法であり、生体試料を直接的に二次元質量分析することにより、試料組織上生体物質の種類、位置、相対量を解析する手法である。
研究方法
1) 担がん患者検体の収集
臨床検体の取得にあたっては、診断もしくは治療を目的として組織採取を行う乳がん患者を対象とした。脂質解析に関する結果の比較対象として、骨髄腫検体測定による得られるデータも活用した。収集検体の背景情報は、研究協力者の所属施設において連結可能匿名化の上管理した。
2) 臨床検体の質量顕微鏡解析
試料の回収と解析にあたっては、本課題において昨年度までに新規に創出されたインジウム酸化スズ―MASコーティングスライドグラス(ITO-MASコートスライドグラス)を用いた。循環腫瘍細胞の選択の基本手法としては、磁気細胞分離法とフローサイトメトリー法を利用した。細胞を単離および回収した後、一細胞質量顕微鏡解析した。
3) 病態評価因子と質量顕微鏡解析データ間での関連性の分析
データ解析には専用ソフトウェアであるMS Imaging Solution解析を用いた。各測定領域のデータセットを陰性対照領域のデータセットと統合し、リン脂質のシグナル強度に関して統計有意差を示す測定領域を抽出し、一細胞由来のシグナルを検出した測定領域であると定義した。抽出された測定領域を統合して検定を行なった。
臨床検体の取得にあたっては、診断もしくは治療を目的として組織採取を行う乳がん患者を対象とした。脂質解析に関する結果の比較対象として、骨髄腫検体測定による得られるデータも活用した。収集検体の背景情報は、研究協力者の所属施設において連結可能匿名化の上管理した。
2) 臨床検体の質量顕微鏡解析
試料の回収と解析にあたっては、本課題において昨年度までに新規に創出されたインジウム酸化スズ―MASコーティングスライドグラス(ITO-MASコートスライドグラス)を用いた。循環腫瘍細胞の選択の基本手法としては、磁気細胞分離法とフローサイトメトリー法を利用した。細胞を単離および回収した後、一細胞質量顕微鏡解析した。
3) 病態評価因子と質量顕微鏡解析データ間での関連性の分析
データ解析には専用ソフトウェアであるMS Imaging Solution解析を用いた。各測定領域のデータセットを陰性対照領域のデータセットと統合し、リン脂質のシグナル強度に関して統計有意差を示す測定領域を抽出し、一細胞由来のシグナルを検出した測定領域であると定義した。抽出された測定領域を統合して検定を行なった。
結果と考察
1) 担がん患者検体の収集
本事業年度は、対象疾患として乳がんを優先するとともに、ヒト末梢血及び原発巣検体収集も行なった。また、脂質解析に関する結果の比較対象として、骨髄腫患者から末梢血及び骨髄検体を採取し、同様の解析を行なった。収集された検体から循環腫瘍細胞及び原発巣の分子プロファイルを取得し、臨床情報と質量顕微鏡解析結果の統合的解析に結びつけることができた。
2) 臨床検体の質量顕微鏡解析
循環腫瘍細胞の定義領域のバックグラウンドノイズのより少ないものへと変更させ、安定的な解析手法として固定した。本研究課題において循環腫瘍細胞の高効率での回収と高感度測定を行なうための素材として創出されたITO-MASコートスライドグラスは、循環腫瘍細胞の高効率での回収と高感度測定に有用に機能した。
3) 病態評価因子と質量顕微鏡解析データ間での関連性の分析
循環腫瘍細胞の質量顕微鏡解析を行い、原発巣検体試料に由来する細胞の質量顕微鏡法解析結果との比較を行なった。循環腫瘍細胞において原発巣の2.0倍の平均シグナル強度を示す脂質、予後良好群の循環腫瘍細胞において予後不良群の循環腫瘍細胞の1.7倍の平均シグナル強度を示す脂質が存在することを明らかにした。これらのことから、病態や患者予後と関連する循環腫瘍細胞の新たな質的評価軸を質量顕微鏡によって示すことが可能となり、臨床的有用性が示された。また、比較対象として実施した骨髄腫患者検体を用いた一細胞解析においても、骨髄腫細胞の由来の違いを質量顕微鏡によって示すことができたことから、質量顕微鏡が種類の異なる複数のがんの観察が可能であることが示された。
本事業年度は、対象疾患として乳がんを優先するとともに、ヒト末梢血及び原発巣検体収集も行なった。また、脂質解析に関する結果の比較対象として、骨髄腫患者から末梢血及び骨髄検体を採取し、同様の解析を行なった。収集された検体から循環腫瘍細胞及び原発巣の分子プロファイルを取得し、臨床情報と質量顕微鏡解析結果の統合的解析に結びつけることができた。
2) 臨床検体の質量顕微鏡解析
循環腫瘍細胞の定義領域のバックグラウンドノイズのより少ないものへと変更させ、安定的な解析手法として固定した。本研究課題において循環腫瘍細胞の高効率での回収と高感度測定を行なうための素材として創出されたITO-MASコートスライドグラスは、循環腫瘍細胞の高効率での回収と高感度測定に有用に機能した。
3) 病態評価因子と質量顕微鏡解析データ間での関連性の分析
循環腫瘍細胞の質量顕微鏡解析を行い、原発巣検体試料に由来する細胞の質量顕微鏡法解析結果との比較を行なった。循環腫瘍細胞において原発巣の2.0倍の平均シグナル強度を示す脂質、予後良好群の循環腫瘍細胞において予後不良群の循環腫瘍細胞の1.7倍の平均シグナル強度を示す脂質が存在することを明らかにした。これらのことから、病態や患者予後と関連する循環腫瘍細胞の新たな質的評価軸を質量顕微鏡によって示すことが可能となり、臨床的有用性が示された。また、比較対象として実施した骨髄腫患者検体を用いた一細胞解析においても、骨髄腫細胞の由来の違いを質量顕微鏡によって示すことができたことから、質量顕微鏡が種類の異なる複数のがんの観察が可能であることが示された。
結論
乳がん患者の原発巣と末梢血から採取された細胞を材料として質量顕微鏡解析を行い、原発巣と循環腫瘍細胞において異なるシグナル強度を示す代謝物を明らかにすることができた。この結果、これまで個数のみで評価されていた循環腫瘍細胞を質的に評価することが質量顕微鏡によって可能となった。この結果、ナノ粒子等を補助剤として活用した循環腫瘍細胞観察可能な質量顕微鏡が開発された。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
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