文献情報
文献番号
201307041A
報告書区分
総括
研究課題名
ドラッグ・リポジショニングによる視神経脊髄炎(NMO)の治療薬開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-創薬-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆 (独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
- 三宅 幸子(順天堂大学医学部免疫学講座)
- 楠 進(近畿大学医学部・神経内科)
- 佐藤 準一(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
三宅幸子は、 平成25年6月1日付けで、(独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部より順天堂大学医学部免疫学講座に異動となり、分担研究を継続した。
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、抗 IL-6受容体抗体 (Tocilizumab; TCZ) のリポジショニングによって、視神経脊髄炎(NMO)およびNMO関連病態(インターフェロン抵抗性MS)の新たな治療法を確立することにある。NCNP倫理委員会の承認を経て、同意を得たNMOおよびNMO関連疾患に苦しむ患者の方々にNCNP病院においてTCZを投与し、臨床評価に加えてフローサイトメーター、DNAマイクロアレイ等による詳細な解析を加え、多くの科学的エビデンスを獲得する臨床研究である。
研究方法
対象:NCNP病院で治療を受けている治療抵抗性NMO患者およびインターフェロン抵抗性でNMOに類似したプラズマブラストの増加傾向を示す患者。
材料:定期的に採取した血液・髄液サンプル。
免疫学的解析:フローサイトメーター解析(プラズマブラスト, B細胞、T細胞、NK細胞、foxp3+制御性T細胞の測定;細胞内サイトカイン染色によるTh1/Th2/Th17細胞定量)、血清・髄液サイトカイン・ケモカイン定量、DNAマイクロアレイ解析・RT-PCR、pathway解析、抗アクアポリン4抗体価測定。
臨床解析:臨床神経学的評価、副作用評価(血液生化学検査)、MRI画像評価、QOL評価。
プラズマブラスト(PB)解析:NMOおよびMS患者の急性再発時および寛解期の末梢血より分離し、IL-6刺激による自己抗体産生能の評価、IL-6受容体阻害抗体の生存抑制効果を評価した。またDNAマイクロアレイおよびnCounterにより、それぞれの分子発現プロフィルを比較。
材料:定期的に採取した血液・髄液サンプル。
免疫学的解析:フローサイトメーター解析(プラズマブラスト, B細胞、T細胞、NK細胞、foxp3+制御性T細胞の測定;細胞内サイトカイン染色によるTh1/Th2/Th17細胞定量)、血清・髄液サイトカイン・ケモカイン定量、DNAマイクロアレイ解析・RT-PCR、pathway解析、抗アクアポリン4抗体価測定。
臨床解析:臨床神経学的評価、副作用評価(血液生化学検査)、MRI画像評価、QOL評価。
プラズマブラスト(PB)解析:NMOおよびMS患者の急性再発時および寛解期の末梢血より分離し、IL-6刺激による自己抗体産生能の評価、IL-6受容体阻害抗体の生存抑制効果を評価した。またDNAマイクロアレイおよびnCounterにより、それぞれの分子発現プロフィルを比較。
結果と考察
1) NMO7例に対する TCZ 治療1年間の治療成績がまとまった(米国神経学会誌掲載)。ステロイド、免疫抑制剤、血漿交換療法などに反応しない難治例7例中5例で再発が完全に抑制され、平均年間再発率の著明な減少が認められた。またさまざまな疼痛治療に抵抗性の神経原性疼痛および疲労感の有意な軽減も確認できたが、重篤な有害事象は認めなかった。バイオマーカーの検討では、プラズマブラスト高値例において、TCZ治療によるプラズマブラスト数の正常化が認められた他、抗アクアポリン4抗体の減少も確認した。さらに、免疫制御性細胞(活性化foxp3陽性制御性T細胞、CD56 high NK細胞)のTCZ 治療による有意な増加が確認された。
2) 我々はMS患者の中にもPB上昇例(PB high MS)が存在することを重視してきたが、PB high MSの多くはインターフェロンβの有効性が得られないインターフェロン・ノンレスポンダーに相当すること、PB high MSに由来するプラズマブラストではIL-6シグナルに関連した遺伝子およびタンパク発現が亢進していることを確認した。以上の結果は、PB high MSの病態がNMOのそれに類似し、TCZ治療の対象になり得る可能性を示唆した。そこで治療抵抗性PB high MSに対するTCZの臨床研究を企画し、倫理委員会の承認を受け、適格と判定された症例に対するTCZの投与を開始した。
3) 末梢血プラズマブラストが中枢神経系に浸潤する能力を有することを、同一患者の末梢血および髄液からセルソーターで分離したプラズマブラスト・クローンの免疫グロブリン遺伝子CDR3領域の塩基配列を決定することによって証明した。
2) 我々はMS患者の中にもPB上昇例(PB high MS)が存在することを重視してきたが、PB high MSの多くはインターフェロンβの有効性が得られないインターフェロン・ノンレスポンダーに相当すること、PB high MSに由来するプラズマブラストではIL-6シグナルに関連した遺伝子およびタンパク発現が亢進していることを確認した。以上の結果は、PB high MSの病態がNMOのそれに類似し、TCZ治療の対象になり得る可能性を示唆した。そこで治療抵抗性PB high MSに対するTCZの臨床研究を企画し、倫理委員会の承認を受け、適格と判定された症例に対するTCZの投与を開始した。
3) 末梢血プラズマブラストが中枢神経系に浸潤する能力を有することを、同一患者の末梢血および髄液からセルソーターで分離したプラズマブラスト・クローンの免疫グロブリン遺伝子CDR3領域の塩基配列を決定することによって証明した。
結論
NMOでは、IL-6シグナルの一次的な関与が推測され、TCZを含むIL-6シグナル阻害療法が有効であることが示唆された。またインターフェロンに抵抗性のMS症例においても、TCZが有用である可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
-