文献情報
文献番号
201307038A
報告書区分
総括
研究課題名
新規コンセプトによる炎症を誘導しないワクチン用免疫増強剤の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-創薬-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
鍔田 武志(東京医科歯科大学 難治疾患研究所免疫疾患分野)
研究分担者(所属機関)
- 山口芳樹(理化学研究所糖鎖構造生物学研究チーム)
- 石田秀治(岐阜大学応用生物科学部)
- 伊藤暢聡(東京医科歯科大学 難治疾患研究所構造情報分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
スプリットワクチンなど安全なワクチン開発には免疫原性を増強する免疫増強剤(アジュバント)が必要であるが、既存のアジュバントはいずれも自然免疫系を標的とするために、マクロファージなど自然免疫細胞の活性化により炎症を惹起する。このため、ヒト用ワクチンでは安全性の確認された限られたアジュバントを少量使用できるのみである。そこで本研究ではBリンパ球分子CD22を標的とする新規コンセプトにより炎症をおこさない画期的な免疫増強剤の開発を行なう。平成25年度は、B細胞活性化増強活性の優れたCD22阻害剤開発のための合成展開と分子構造解明のための組み換えCD22タンパク大量産生系の確立をおこなう。
研究方法
大腸菌やヒト培養細胞を用いて、発現させるCD22の細胞外部分の7つのドメインの選択、融合させる蛋白質の種類、ジスルフィド結合をつくるシステイン残基への変異の導入などを様々に組み合わせて、発現条件を探索した。発現させたタンパク質は各種クロマトグラフィーで精製し、ゲル電気泳動等でその性質を評価した。また、シアル酸誘導体に由来するNMRシグナルの帰属を2次元NOESYスペクトルの解析により行った。CD22とシアル酸誘導体の混合水溶液を対象として飽和移動差NMRスペクトルを解析することにより、CD22から飽和移動を顕著に受けるシアル酸誘導体の水素原子の同定を行った。また、転移NOEスペクトルの解析により、CD22に結合している状態のシアル酸誘導体の水素結合間の距離情報を得た。
シアル酸のグリコシド化で生じる両アノマーのうち、目的とするα体のみが誘導体化(ラクタム化)出来る性質に着目し、シアロシドの効率的合成の妨げとなっていた異性体の分離に成功した。本法の利用により、GSC-718 をグラムスケールで合成する事が出来、動物実験に必要な量を供給できた。また、類縁体の効率的合成も可能になり、C-2位への多様なアグリコンの導入などにより合成展開を行なった。合成展開により得られた誘導体は、競合ELISA法によりCD22への親和性を測定するとともに、in vitroで正常マウスB細胞の刺激活性を測定した。さらに、抗原とともにマウスに投与し、特異抗体産生をELISA法により測定した。これらの解析により、合成展開した誘導体の中にCD22により高親和性に結合する化合物やB細胞活性化能の高い高活性化合物を同定した。
シアル酸のグリコシド化で生じる両アノマーのうち、目的とするα体のみが誘導体化(ラクタム化)出来る性質に着目し、シアロシドの効率的合成の妨げとなっていた異性体の分離に成功した。本法の利用により、GSC-718 をグラムスケールで合成する事が出来、動物実験に必要な量を供給できた。また、類縁体の効率的合成も可能になり、C-2位への多様なアグリコンの導入などにより合成展開を行なった。合成展開により得られた誘導体は、競合ELISA法によりCD22への親和性を測定するとともに、in vitroで正常マウスB細胞の刺激活性を測定した。さらに、抗原とともにマウスに投与し、特異抗体産生をELISA法により測定した。これらの解析により、合成展開した誘導体の中にCD22により高親和性に結合する化合物やB細胞活性化能の高い高活性化合物を同定した。
結果と考察
CD22の分子構造をもとにした阻害剤の合理的デザインを行うために、ヒトおよびマウスCD22のシアル酸結合ドメインの組み換えタンパク質の大量発現系構築等を行なった。大腸菌とおよびヒト培養細胞を用いた大量発現系構築と精製条件の検討を行い、CD22の細胞外領域のうち糖鎖結合ドメインを高可溶性のタグ蛋白質との融合蛋白質として、大腸菌で可溶に発現することに成功した。また、ヒトおよびマウス由来のCD22を対象として核磁気共鳴(NMR)法により阻害剤との相互作用解析を行った。飽和移動差NMRスペクトルおよび転移NOEスペクトルの詳細な解析により、阻害剤上の結合エピトープおよびCD22に結合した状態のコンフォメーションを明らかにした。
高活性のCD22阻害剤を開発するため、まず、これまでの研究で見出されてきたリード化合物(GSC-718)の効率的合成法を検討した。これまでの問題点であった、グリコシル化反応で生じるアノマー異性体の分離を、化学選択性の差で達成することに成功した。この方法によりGSC-718 の大量合成を行うとともに、GSC-718 をモチーフとする合成展開を系統的に行い、約20の誘導体を得、この中から、リード化合物よりも高親和性にCD22に結合する化合物やより抗体産生誘導活性の高い化合物を同定した。
高活性のCD22阻害剤を開発するため、まず、これまでの研究で見出されてきたリード化合物(GSC-718)の効率的合成法を検討した。これまでの問題点であった、グリコシル化反応で生じるアノマー異性体の分離を、化学選択性の差で達成することに成功した。この方法によりGSC-718 の大量合成を行うとともに、GSC-718 をモチーフとする合成展開を系統的に行い、約20の誘導体を得、この中から、リード化合物よりも高親和性にCD22に結合する化合物やより抗体産生誘導活性の高い化合物を同定した。
結論
抗体産生増強活性の高いCD22結合シアル酸誘導体を開発するために、すでに抗体産生増強活性が明らかになっているシアル酸誘導体GSC-718を合成展開して得られた約20の化合物から、より抗体産生増強活性の高い化合物を同定した。また、より優れたシアル酸誘導体の合理的設計を行なうために、組み換えCD22タンパク質の大量発現系を改善し、シアル酸誘導体のCD22結合部位の同定とコンフォメーションを明らかにした。これらの知見は、優れたCD22阻害剤開発に重要である。
公開日・更新日
公開日
2015-04-15
更新日
-