血管系の老化におけるマクロファージの分子細胞生物学と新規治療法

文献情報

文献番号
199800192A
報告書区分
総括
研究課題名
血管系の老化におけるマクロファージの分子細胞生物学と新規治療法
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 龍彦(東大先端研分子生物医学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 間藤方雄(国際医療福祉大保健学部)
  • 二木鋭雄(東大先端研生命反応化学分野)
  • 高橋 潔(熊本大学医学部第2病理学講座)
  • 土井健史(大阪大学薬学部)
  • 内藤 眞(新潟大学医学部教授)
  • 田中良哉(産業医科大学講師)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血管壁にあって変性脂質を取り込む受容体の研究は近年急速に進展し,現在までにスカベンジャー受容体(Scavenger Receptor:SR)ファミリーがクローニングされ,動脈硬化の進展において,それぞれの役割を明らかにする必要がある.そこで,本研究では,マクロファージ(Mφ)のアセチル化LDL受容体として最初に発見されたグループAのI型とII型受容体(SR-AI/II)を起点として,血管の老化においてMφが果たしている役割を解明し,それが取り込む変性LDLが血管壁で作られる過程を実証することにより,治療薬開発のターゲットを明確にすることを目的として研究班を組織した.
研究方法
研究方法と結果=1.高脂血症,高血圧下での脳細血管の変化は他の血管と異なる.
脳細動脈の硬化は一般血管例えば大動脈、腎動脈、冠状動脈のそれと異なり、古くより血管壊死、フィブリノイド変性を伴う血管壁肥厚として定義されている。間藤は従来より脳細血管は高脂血・高血圧に際しても、血管壁細胞の反応が異なること、つまり上記の条件に於いても、血管壁内へのマクロファージ(単球)の侵入が少なく、また血管平滑筋の反応性は著しく低く、いわゆる血管壁肥厚は平滑筋細胞の変形・壊死及びFGP細胞の幼弱化及び増殖によることを示している.また,脳グリア細胞の血管反応への関与、即ちミクログリアの活性化・星状膠細胞のアストロファイバーの出現及び増加も同時に認められので,脳細血管の硬化(病変)を研究する際には脳細血管自身の病変とそれに付随する脳グリア細胞の変化を併せ検討する必要がある。1) 脳細血管に伴うMATO細胞のエンドトキシンに対する反応性を検討したところ,エンドトキシンによるFGP細胞の活性化はミクログリア及び星状膠細胞の活性化をもたらすこと、血管内皮細胞の細胞質突起が出現することが示された.また、幼弱FGP細胞の出現と共にFGP細胞にはIL-1β及びiNOSの上昇が認められた。2) 脳虚血時に於ける脳血管壁細胞並びにFGP細胞の反応を検討したところ,脳細血管の透過性の上昇に伴い、内皮細胞の細胞突起の出現、細胞間隙の増加、FGP細胞の浮腫性変化が観察されると共に,脳皮質ではミクログリアの突起が伸長し、海馬に於いてはアストロファイバーが出現,増加することがが認められた。3) 高脂血時に於ける脳血管壁細胞の反応性とマクロファージ、FGP細胞の関与については,海馬采及び視床の血管の一部に多量のマクロファージが侵入しており、同時にFGP細胞の退行及びミクログリアの退行が認められると共に,血管壁平滑筋細胞の退行変化が認められた。この際、見かけ上は血管壁の肥厚を呈するが、その超微像は泡沫細胞の出現と退行性細胞の出現に過ぎなかった。4) 高血圧・脳卒中易発性ラット(SHRSP)に於けるFGP細胞の挙動については,興味ある所見としてFGP細胞の摂取能・エピトープの低下が血管病変に先立ち出現した.次いで平滑筋細胞の著しい変性・壊死,さらに,幼弱FGP細胞ないしは軟膜細胞の増殖が認められ,同時に膠原線維の出現が顕著であった。この様ないわゆる血管壊死・血管浮腫を呈した血管壁になって初めて単球・マクロファージの侵入が認められた。この様な変化は脳血管壁の脆弱化を招き、血管破綻の原因となりうるものと推察された.
2.マクロファージの泡沫化にはスカベンジャー受容体以外の受容体が重要である.
高橋は、粥状硬化病巣形成におけるマクロファージスカベンジャー受容体(SR-A type I/II)の役割を検討するために、LDL受容体欠損マウスとSR-A type I/II欠損マウスとの二重欠損マウスを作成し、4ヶ月間の高脂肪食飼育の後に大動脈弁周囲の粥状硬化病巣サイズを比較した。その結果、LDL受容体/SR-A type I/II二重欠損マウスの病巣サイズはLDL受容体単独欠損マウスに比べて有意に低値を示し、SR-A type I/IIが粥状硬化病巣形成に重要な役割を果たすことが実証された。しかし、病巣サイズの減少率は約20%で、昨年度に検討した普通食飼育下でのアポE/SR-A type I/II二重欠損マウスの病巣サイズの減少率約60%に比べ、軽度の抑制に留まった。そこで、LDL受容体/SR-A type I/II二重欠損マウスにおける残存病巣について、CD36、CD68/Macrosialin,MARCO(macrophage receptor with collagenous structure) などのSR-A type I/II以外のスカベンジャー受容体の発現を検討すると、いずれもLDL受容体単独欠損マウスと同様の発現が観察された。普通食飼育のアポE/SR-A type I/II二重欠損マウスと高脂肪食飼育LDL受容体/SR-A type I/II二重欠損マウスの血中コレステロール値を比較すると、前者で400~500mg/dl であったのに対し、後者では2000~3000mg/dlに達し、著明な高コレステロール血症状態では、SR-A type I/II欠損のみでは病巣形成の抑制には不十分だった.
3.SR-AI/II作用の分子機構の解明.
土井は,動脈硬化発症に大きく関与するマクロファージスカベンジャー受容体に着目し、その細胞質領域内の機能配列を分子生物学的手法を用い解析した結果、この領域内のN末端より21番目から28番目のアミノ酸配列が、効率の良いレセプターメディエーティッドエンドサイトーシスに、またその内21番目から24番目の配列については、受容体の細胞表面への発現にも関与することを明らかにした。そこで、この受容体の細胞質領域と相互作用する因子を検索するため,次の手法を用いた.1)Yeast の Two hybrid systemを用いた単離法、2)細胞質領域の合成ペプチド分子を用いた単離法.その結果,1)では、CDC10、CIG49、RIG-G、Ferritin などが相互作用できることが示唆された.2)では、1本鎖の分子、及びこれらをリンカーを介して結合させた3本鎖分子の合成を行った。これら分子の構造を分光学的に調べたが、いづれもこれら単独では明確な3次構造を形成しないことが判明した.
二木は,LDLへの理想的な分布と抗酸化作用を示す薬剤として,α-トコフェロール(Toc)の化学構造を基に2,3-dihydro-5-hydroxy-2,2-dipentyl-4,6-di-tert-butylbenzofuran(BO653)を設計,合成し現在臨床治験段階に入っているが,血管壁におけるLDLの酸化の進行をリアルタイムで追跡することを目的とし、新しい蛍光プローブの細胞培養系への導入を行っている。既に, Diphenyl pyrenyl phosphine (DPPP)が脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)と当モルで反応し、強い蛍光を発する酸化物DPPP oxide (DPPP=O)に変わることを利用し、このDPPP=Oをphosphatidyl serine (PS)で構成されたリポソームに組み込み、これをマクロファージに取り込ませ、蛍光顕微鏡で細胞に一致してDPPP=O由来の蛍光が観察されることを確認した。さらに,このDPPP=Oの細胞内における局在を共焦点顕微鏡を用いて検討し,DPPP=Oは核の内部以外の膜および細胞質内に存在することを確認した。ついで,生体内でのLDL酸化をモニターするため,LDL粒子内への導入方法を検討した.種々の方法にてDPPPのLDL粒子内への導入を試みたが,有効ではなかった.さらに,DPPPのLDL脂質二重膜との親和性を高めるためにDPPPに化学修飾することによってLDL粒子への移行促進を試みたが、いずれも満足する結果は得られず、構造上これが困難であると判断した。そこでDPPPのLDL脂質二重膜との親和性を高めるためにDPPPに化学修飾する方法を検討し,現在検討を進めている.
5.スカベンジャー受容体による細菌性抗原処理機構
スカベンジャー受容体class A には1型、2型とそれにきわめて近似した構造を有する受容体 macrophage receptor with collagenous structure(MARCO)がある。MARCOは脾の濾胞辺縁帯に局在する特異なマクロファージ亜群にのみ発現し、ある種の細菌性多糖類を認識する。スカベンジャー受容体class A I型もグラム陽性および陰性細菌の抗原を認識する。しかし、これら受容体が生体防御においてどの様な役割を果たしているかはほとんど解明されていない。内藤は,種々細菌性抗原の投与によってスカベンジャー受容体ファミリーの発現機構をBALB/cマウス、スカベンジャー受容体Class Aノックアウトマウスと野生型マウスを用いて検討し、細菌性抗原処理機構における本受容体ファミリーの役割の解明を行った。BALB/c マウスにLPS、zymosan, BCG, listeriaを投与して種々の臓器を採取し、抗マクロファージ抗体(BM8/F4/80)、抗辺縁帯マクロファージ抗体(ER-TR9)、抗marginal metallophilic macrophage抗体(MOMA-1)、抗MSR-A抗体(2F8)、抗MARCO抗体を用いた免疫染色を行った。またRT-PCR により肝における各種サイトカイン、レセプターの発現を検討した。op/opマウス及びその正常同腹マウス に対してもLPSとBCGを経静脈投与し、同様に検討した。また、脾組織について免疫染色と結核菌染色の二重染色を行った。スカベンジャー受容体class A ( I 型およびII 型 (MSR-A)とMARCO) については,MSR-Aは種々の組織マクロファージに常に発現し、MARCOは無刺激状態では脾臓の辺縁帯マクロファージとリンパ節の辺縁洞構成細胞にのみ発現した。LPS、zymosan、BCG、L. monocytogenesの投与後、肝脾のマクロファージのMSR-A発現は増加した。一方、MARCOは一過性に発現し、BCG、listeria投与マウスでは肉芽腫構成細胞にも発現していた。マクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) 産生を欠損するop/opマウスではLPS投与後のMSR-AとMARCOの発現は同腹マウスに比較して弱く、MSR-AとMARCOの発現にM-CSFが関与する可能性が示唆された。免疫電顕ではMSR-AとMARCOはマクロファージの細胞膜と取込み空泡の膜に局在していた。op/opマウスの脾臓においてはER-TR9陽性の辺縁帯マクロファージとMOMA-1陽性のmarginal metallophilic macrophage は存在しない。しかし、op/opマウスでもMARCO陽性の辺縁帯マクロファージは存在し、ER-TR9と抗MARCO抗体を用いた二重染色で同腹正常マウスにはER-TR9陽性、ER-TR9およびMARCO陽性、MARCO陽性の3つの脾辺縁帯マクロファージ群が認められた。BCG投与後,同腹マウスではER-TR9およびMARCOを発現している辺縁帯マクロファージとmarginal metallophilic macrophage にBCG菌の著しい集積がみられ、op/opマウスではMARCOを発現している辺縁帯マクロファージに一致してBCGが取り込まれていたことから,MARCOは細菌性抗原の認識と取込みに関与すると考えられた。
次に、7~12週令の雄のスカベンジャー受容体ノックアウトマウスと対照マウス に200μgの LPSを腹腔投与し、経時的に肝組織を採取、抗マクロファージ抗体 (F4/80)、抗CD14抗体、抗マクロファージコロニー刺激因子受容体 (c-fms)抗体、抗リンパ球抗体などを用いて免疫染色を行った。エステラーゼ染色による好中球の同定も行った。また、RNAを抽出し、RT-PCRで各種サイトカインの発現を観察した。一部マウスには200μgの大量投与を行った。 さらに腹腔マクロファージへのFITC 標識LPSの取り込みをFACSを用いin vitroで検討した。その結果LPS投与後肝の好中球浸潤は野生型マウスに比較してノックアウトマウスに多かった。F4/80陽性マクロファージは両群とも一過性に増加していた。CD14、c-fmsの陽性細胞とmRNAの発現は 野生型の方が多かった。T,Bリンパ球の浸潤は両群に有意差はなかった.M-CSF、TNF-α,MIP-1αの mRNAの発現も野生型の方が多かったが,MIP-2mRNAの発現はノックアウトマウスが多かった.MARCO,iNOSの発現は大差がなかったが、血清中のIL-1濃度はノックアウトマウスが有意に高かった。また、200μgのLPS投与により、LD50はノックアウトマウスが高く、IL-1 receptor antagonistの投与により死亡率は低下した。腹腔マクロファージを用いた実験ではノックアウトマウスマクロファージのFITC 標識LPSの取り込みは野生型マウスマクロファージに比較して少なかった。
6.酸化LDLは単球のインテグリンを活性化して内皮細胞への接着を促進する.
田中は,ケモカインMCP-1や酸化LDLは、単球のインテグリンを活性化し、インテグリン依存性の微小血管由来の内皮細胞との単球の接着を誘導することを認めたので,酸化LDLによる単球のインテグリン活性化の機構を検討した。その結果,動脈硬化の病態形成に重要なリポ蛋白である酸化LDL (0.1 mg/ml) は、単球のインテグリン依存性の微小血管由来内皮細胞、ICAM-1発現COS細胞やVCAM-1発現COS細胞との接着を誘導したが、アセチル化LDLやnative LDLは殆ど接着を誘導しなかった。また、酸化LDLによって誘導された単球の接着は、MCP-1 (10ng/ml) を添加することによって更に増強した。さらに、酸化LDL刺激によって1分以内に単球細胞内骨格線維F-actinの著明な重合化を認めたこと、酸化LDL刺激によりインテグリンLFA-1α鎖のCa依存性活性化エピトープを認識するNKI-L16抗体との結合が著明に増強した.
7.血管壁への単球動員とMφへの分化,泡沫細胞形成の体外モデルを作成した.
単球はさらに内皮細胞下に動員されて残留しMφに分化する.児玉は,この現象を経時的に体外で観察する為,ウサギ大動脈の初代培養平滑筋細胞と内皮細胞を重層し,ヒト末梢血由来単球を添加して混合培養するシステムを作製した.蛍光標識細胞をレーザー共焦点顕微鏡で追跡し,時系列で固定した培養系を免疫染色,電子顕微鏡で観察したところ,単球は数時間で内皮下へ潜り込むこと,マトリクス内にて三日でマクロファージに分化すること,最終的に酸化LDLの存在下で混合培養を行うことによって一週間で泡沫細胞を形成することが確認され,in vitroでの泡沫細胞形成系を昨出することができた.
結果と考察
考察,間藤は脳細血管の破綻を含む病変にはFGP細胞が深く関与していることを示唆する結果を得た.
高橋は,SR-A type I/II以外のスカベンジャー受容体がマクロファージの泡沫細胞化に関与することを示唆する所見を得た.また,SR-A type I/II欠損マウスでは、SR-A type I/IIを介するシグナル伝達の欠如により、TNF-α、IFN-γ、MCP-1などのサイトカインの発現が遅延し、これに続く単球の動員ならびに単球のマクロファージへの分化や活性化が遅れることにより肉芽腫形成が遅延したものと考えられた.土井は、スカベンジャー受容体の細胞質内領域にCDC10、CIG49、RIG-G、Ferritin などが相互作用し得ることが示したが、さらにこれらの受容体を発現した細胞を用いて免疫沈降を行う方法で、天然型の受容体の場合のみ共沈してくる因子を単離して、機能配列と相互作用する分子を検出しようと試みている.細胞質領域の合成ペプチド分子を用いた単離法については、これら合成したペプチド分子を用いてアフィニティカラムを作成し、相互作用する分子の単離を試みている。二木は酸化マーカーであるDPPPをLDL粒子内に導入するために,引き続きブロモ化した後マグネシウムを添加してGrinard試薬とし、ドデカン二酸と反応させるという経路で合成を行っており,引き続き種々の方法によってLDL内へのDPPPの導入方法を検討する.内藤は,種々の細菌性抗原によってMSR-AとMARCOの発現が増強する事、MARCOは特異なマクロファージ群に発現するのみでなく、種々の細菌性抗原によって発現誘導されることを明らかにした.機能的にはMARCOは細菌性抗原に対する生体防御においてに重要な役割を果たしていることが推測された。さらに脾の辺縁帯マクロファージにはphenotypeの上で多様性があることが示された.スカベンジャー受容体欠損マウスではLPS刺激によるCD14,c-fmsなどの受容体,および種々のサイトカインの発現が減弱したが,好中球の反応は亢進しており,MIP-2の発現増強との関連が示唆された.ノックアウトマウスは高い感受性を示し、IL-1血中濃度の上昇、IL-1 receptor antagonistの投与による死亡率の低下からスカベンジャー受容体を介する細胞内シグナル伝達はIL-1産生系と関与するものと思われた。さらに、ノックアウトマウスマクロファージのLPS結合能の低下がin vitroの実験から証明され、スカベンジャー受容体はLPS受容体の一つとして機能していると考えられた.田中は,酸化LDLは単球表面に発現するインテグリンの立体構造の変化や多量体化を引き起こして、接着性を誘導することを示した.また,酸化LDLやMCP-1は、単球の経内皮細胞間の潜り込みをも誘導することが認められ、動脈硬化部への単球の集積に重要な役割を担うことが示唆された。一方、動脈硬化病変においては様々な増殖因子が産生され、血管内皮細胞や平滑筋細胞の増殖、及び病態の進展をもたらすとされる。今回興味深いことに、動脈硬化部で産生されるとされるHGFやVEGF等の増殖因子も、単球に直接作用してインテグリン依存性の内皮細胞との接着と経内皮細胞間の潜り込みを誘導することが明らかとなった。児玉は酸化LDLを用いて体外での泡沫細胞形成系を樹立したが,今後より生理的な泡沫細胞形成を再現するため,native LDLによる泡沫細胞形成系を構築する.このとき,平滑筋が産生するマトリックスの中にはSyncecanというproteoglycanの一種が生成されているが,これはLDLとの結合能を有しており,血管平滑筋の存在が有用であることが示唆された.
脳血管老化を理解するためには,MATO細胞の挙動が今後も重要である.また理想的な抗酸化剤の開発に加え,生体内で動脈硬化に促進的なSR-AI/II作用の分子機構を明らかして阻害剤を設計することは,種々の血管病変におけるスカベンジャー受容体を標的とした治療薬を開発するうえでの主要なターゲットとなる可能性がある。さらに,Mφ自体をターゲットとする治療薬の開発の為には,単球の血管壁での動員を再現する共存培養系をスクリーニング系として使用する必要がある.SR-Aは多様なリガンド結合性のため,変性脂質を結合して動脈硬化を促進するばかりか,凝集したβ-amyloidの結合を介してAlzheimer病と,AGEの結合を介して糖尿病関連疾患に関与しており,当研究が高齢化社会に暮らす人々の生活の質を改善するものと考える.
結論

公開日・更新日

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